最強の職業は付与魔術師かもしれない

カタナヅキ

文字の大きさ
24 / 207
スラム編

聖属性の効果

しおりを挟む
『本当に大丈夫かな……』
『多分……恐らく、きっと……だといいな』
『本当に大丈夫なのかなっ!?』


多少の不安を抱いたがレナはコトミンの言葉を信じて自分の肉体に聖属性を発動する。外見は特に変化はないが、心なしか肉体が熱くなる感覚が広がり、試しに彼はその場で跳躍する。


『せぇのっ……うわぁっ!?』
『……おおっ』


レナが勢いよく足を踏み出した瞬間、一気に5~6メートル程の高度にまで飛び上がり、空中で体勢を崩したレナは地面に落下してしまい、着地を失敗して背中から地面に衝突してしまう。


『うあっ……あれ?』
『大丈夫。私が張り付いている限りは怪我はしない』
『そ、そうなんだ……ありがとう』


レナの身体の表面に張り付いているスライムのコトミンが落下の衝撃を和らげたらしく、彼の身体の表面に張り付いている彼女がクッションの代わりに着地の衝撃を外部に移動させる。彼女に感謝しながらレナはもう一度身体を起き上げ、魔法の効果が切れる前に今度は覚悟を決めて勢いよく跳躍する。


『せぇのっ!!』


先ほどより飛距離を付けて跳躍を行った瞬間、レナの肉体が7~8メートルにまで浮き上がり、傍に存在した建物の屋上に着地する。落下の衝撃はコトミンのお蔭で和らげられており、レナは自分の力だけで屋上まで移動出来た事に感動する。


『やった……もう一度!!』
『あっ』


今度は建物の屋上から別の建物の屋上に向けて跳躍を開始するために走り出し、勢いを付けて再度跳躍する。聖属性の付与魔法で強化されたレナの身体能力は無事に隣の建物の屋上に移動を行い、更に調子に乗ったレナはもう一度駈け出して跳躍を試みた。


『もう一回!!』
『レノ……』


今度は更に高い建物の屋上に向けて跳躍し、移動に成功する。レナは自分の身体能力の向上に感動を覚える一方、コトミンが心配気な声を上げる。


『凄いよコトミン!!まるで空を飛べるよになった気分だっ!!』
『うん……凄いと思うけど大丈夫?』
『えっ……何が?』
『そんなに激しく動くと……後で大変な事になるよ?』
『大変な事って――!?』


レナはコトミンの言葉を問い返す前に唐突に身体に異様な疲労感が襲い掛かり、その場で膝を崩してしまう。何が起きたのかと理解出来ずに彼は混乱したが、自分の肉体の聖属性の付与魔法の効果が切れた事に気付き、すぐに今までの無茶な行動の肉体の疲労が襲い掛かってきた事に気付く。

聖属性の付与魔法によって肉体を強化して身体能力を上昇させたとしても、レナ自身の「体力」まで向上出来るわけではない。肉体の強化に掛かる肉体の負荷は聖属性の回復効果で無効化することは可能だが、運動した時に蓄積される疲労までは魔法では無効化する事は出来ない(回復魔法では怪我の類は治療出来ても体力までは回復出来ない)。


『やばい……こんな場所に移動するんじゃなかった。どうやって帰ればいいんだろ……』
『少し休んでから降りるしかない……知らない人の家の建物の屋上だから見られないように気を付けないと』
『ううっ……調子に乗り過ぎた』


冷静に考えれば街中で建物の屋上を跳躍する行為自体が目立ちすぎる為、もしもこのような光景を警備兵に見つかった場合は確実に問題になる。レナは誰にも見つからい内に大人しく屋上の隅に移動しようとすると、街の光景を見渡して自分が見覚えのある場所に辿り着いていた事を知る。


『あれ?ここって……』
『……私達が出会った場所』


一週間ほど前に木箱に収納されていたコトミンと遭遇した「スラム街」であり、2人は気付かない間にこの場所まで移動を行っていた。レナとしてはコトミンと出会ったこと以外はいい思い出が存在しない場所のため、彼女を捕まえた盗賊がまだ残っている可能性もあり、早々に立ち去ろうとした時、彼の視界に奇妙な人物が映し出される。


『あれ……あの人って……』
『知り合い?』
『いや……知り合いというか、さっき見かけた人だ』


裏路地の方に一人の男性が歩いており、先ほど街道で騒ぎを起こして警備兵に連行されたはずの男性であり、どうやら兵士から解放されたのか、あるいは逃げ延びたのかは分からないが妙に周囲を警戒しながら歩いていた。こんな場所で何をしているのか疑問に思い、レナは視線を追うと彼はすぐ傍の建物の中に入り込む。


『あそこは……酒場?』


営業しているようには見えないが男性が入り込んだのは屋上が一部倒壊している酒場であり、先ほどの警備兵に話していた「スケルトン」の話が気にかかり、レナは様子を調べられないかと考えるが、迂闊に怪しそうな建物の中に入る事は出来ない。


『あっ……今なら問題ないか』
『……?』


だが、こちらには外見を自由に変化出来るスライムのコトミンが存在し、彼女のお蔭で自分の容姿が現在は全く違う状態に変化している事を思い出し、この姿なら正体を気付かれる事はない。レナはいざという時の為に懐に仕舞い込んだ銀貨を確認し、一か八か男性の後を追う事に決めた。


『コトミン。この状態で地面に降りても着地の衝撃は大丈夫かな?』
『これぐらいの高さなら大丈夫……と思う』
『ちょっと不安だけど……信じてるよ』


コトミンの言葉にレナは屋上から飛び降りると、身体に張り付いているコトミンが落下の衝撃を和らげ、無事に着地する。聖属性の付与魔法身体能力の強化がなくとも現在の状態ならばある程度の高さから落ちても問題はなく、レナは男性の様子を観察する。。
しおりを挟む
感想 263

あなたにおすすめの小説

バイトで冒険者始めたら最強だったっていう話

紅赤
ファンタジー
ここは、地球とはまた別の世界―― 田舎町の実家で働きもせずニートをしていたタロー。 暢気に暮らしていたタローであったが、ある日両親から家を追い出されてしまう。 仕方なく。本当に仕方なく、当てもなく歩を進めて辿り着いたのは冒険者の集う街<タイタン> 「冒険者って何の仕事だ?」とよくわからないまま、彼はバイトで冒険者を始めることに。 最初は田舎者だと他の冒険者にバカにされるが、気にせずテキトーに依頼を受けるタロー。 しかし、その依頼は難度Aの高ランククエストであることが判明。 ギルドマスターのドラムスは急いで救出チームを編成し、タローを助けに向かおうと―― ――する前に、タローは何事もなく帰ってくるのであった。 しかもその姿は、 血まみれ。 右手には討伐したモンスターの首。 左手にはモンスターのドロップアイテム。 そしてスルメをかじりながら、背中にお爺さんを担いでいた。 「いや、情報量多すぎだろぉがあ゛ぁ!!」 ドラムスの叫びが響く中で、タローの意外な才能が発揮された瞬間だった。 タローの冒険者としての摩訶不思議な人生はこうして幕を開けたのである。 ――これは、バイトで冒険者を始めたら最強だった。という話――

凡人がおまけ召喚されてしまった件

根鳥 泰造
ファンタジー
 勇者召喚に巻き込まれて、異世界にきてしまった祐介。最初は勇者の様に大切に扱われていたが、ごく普通の才能しかないので、冷遇されるようになり、ついには王宮から追い出される。  仕方なく冒険者登録することにしたが、この世界では希少なヒーラー適正を持っていた。一年掛けて治癒魔法を習得し、治癒剣士となると、引く手あまたに。しかも、彼は『強欲』という大罪スキルを持っていて、倒した敵のスキルを自分のものにできるのだ。  それらのお蔭で、才能は凡人でも、数多のスキルで能力を補い、熟練度は飛びぬけ、高難度クエストも熟せる有名冒険者となる。そして、裏では気配消去や不可視化スキルを活かして、暗殺という裏の仕事も始めた。  異世界に来て八年後、その暗殺依頼で、召喚勇者の暗殺を受けたのだが、それは祐介を捕まえるための罠だった。祐介が暗殺者になっていると知った勇者が、改心させよう企てたもので、その後は勇者一行に加わり、魔王討伐の旅に同行することに。  最初は脅され渋々同行していた祐介も、勇者や仲間の思いをしり、どんどん勇者が好きになり、勇者から告白までされる。  だが、魔王を討伐を成し遂げるも、魔王戦で勇者は祐介を庇い、障害者になる。  祐介は、勇者の嘘で、病院を作り、医師の道を歩みだすのだった。

収納魔法を極めた魔術師ですが、勇者パーティを追放されました。ところで俺の追放理由って “どれ” ですか?

木塚麻弥
ファンタジー
収納魔法を活かして勇者パーティーの荷物持ちをしていたケイトはある日、パーティーを追放されてしまった。 追放される理由はよく分からなかった。 彼はパーティーを追放されても文句の言えない理由を無数に抱えていたからだ。 結局どれが本当の追放理由なのかはよく分からなかったが、勇者から追放すると強く言われたのでケイトはそれに従う。 しかし彼は、追放されてもなお仲間たちのことが好きだった。 たった四人で強大な魔王軍に立ち向かおうとするかつての仲間たち。 ケイトは彼らを失いたくなかった。 勇者たちとまた一緒に食事がしたかった。 しばらくひとりで悩んでいたケイトは気づいてしまう。 「追放されたってことは、俺の行動を制限する奴もいないってことだよな?」 これは収納魔法しか使えない魔術師が、仲間のために陰で奮闘する物語。

俺が死んでから始まる物語

石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていたポーター(荷物運び)のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもないことは自分でも解っていた。 だが、それでもセレスはパーティに残りたかったので土下座までしてリヒトに情けなくもしがみついた。 余りにしつこいセレスに頭に来たリヒトはつい剣の柄でセレスを殴った…そして、セレスは亡くなった。 そこからこの話は始まる。 セレスには誰にも言った事が無い『秘密』があり、その秘密のせいで、死ぬことは怖く無かった…死から始まるファンタジー此処に開幕

異世界に召喚されたが勇者ではなかったために放り出された夫婦は拾った赤ちゃんを守り育てる。そして3人の孤児を弟子にする。

お小遣い月3万
ファンタジー
 異世界に召喚された夫婦。だけど2人は勇者の資質を持っていなかった。ステータス画面を出現させることはできなかったのだ。ステータス画面が出現できない2人はレベルが上がらなかった。  夫の淳は初級魔法は使えるけど、それ以上の魔法は使えなかった。  妻の美子は魔法すら使えなかった。だけど、のちにユニークスキルを持っていることがわかる。彼女が作った料理を食べるとHPが回復するというユニークスキルである。  勇者になれなかった夫婦は城から放り出され、見知らぬ土地である異世界で暮らし始めた。  ある日、妻は川に洗濯に、夫はゴブリンの討伐に森に出かけた。  夫は竹のような植物が光っているのを見つける。光の正体を確認するために植物を切ると、そこに現れたのは赤ちゃんだった。  夫婦は赤ちゃんを育てることになった。赤ちゃんは女の子だった。  その子を大切に育てる。  女の子が5歳の時に、彼女がステータス画面を発現させることができるのに気づいてしまう。  2人は王様に子どもが奪われないようにステータス画面が発現することを隠した。  だけど子どもはどんどんと強くなって行く。    大切な我が子が魔王討伐に向かうまでの物語。世界で一番大切なモノを守るために夫婦は奮闘する。世界で一番愛しているモノの幸せのために夫婦は奮闘する。

不遇な死を迎えた召喚勇者、二度目の人生では魔王退治をスルーして、元の世界で気ままに生きる

六志麻あさ
ファンタジー
異世界に召喚され、魔王を倒して世界を救った少年、夏瀬彼方(なつせ・かなた)。 強大な力を持つ彼方を恐れた異世界の人々は、彼を追い立てる。彼方は不遇のうちに数十年を過ごし、老人となって死のうとしていた。 死の直前、現れた女神によって、彼方は二度目の人生を与えられる。異世界で得たチートはそのままに、現実世界の高校生として人生をやり直す彼方。 再び魔王に襲われる異世界を見捨て、彼方は勇者としてのチート能力を存分に使い、快適な生活を始める──。 ※小説家になろうからの転載です。なろう版の方が先行しています。 ※HOTランキング最高4位まで上がりました。ありがとうございます!

【完】転職ばかりしていたらパーティーを追放された私〜実は88種の職業の全スキル極めて勇者以上にチートな存在になっていたけど、もうどうでもいい

冬月光輝
ファンタジー
【勇者】のパーティーの一員であったルシアは職業を極めては転職を繰り返していたが、ある日、勇者から追放(クビ)を宣告される。 何もかもに疲れたルシアは適当に隠居先でも見つけようと旅に出たが、【天界】から追放された元(もと)【守護天使】の【堕天使】ラミアを【悪魔】の手から救ったことで新たな物語が始まる。 「わたくし達、追放仲間ですね」、「一生お慕いします」とラミアからの熱烈なアプローチに折れて仕方なくルシアは共に旅をすることにした。 その後、隣国の王女エリスに力を認められ、仕えるようになり、2人は数奇な運命に巻き込まれることに……。 追放コンビは不運な運命を逆転できるのか? (完結記念に澄石アラン様からラミアのイラストを頂きましたので、表紙に使用させてもらいました)

弟に裏切られ、王女に婚約破棄され、父に追放され、親友に殺されかけたけど、大賢者スキルと幼馴染のお陰で幸せ。

克全
ファンタジー
「アルファポリス」「カクヨム」「ノベルバ」に同時投稿しています。

処理中です...