文字変換の勇者 ~ステータス改竄して生き残ります~

カタナヅキ

文字の大きさ
23 / 87
廃墟編

アイテムボックス

しおりを挟む
――死体を残すと魔物が群がるという理由があり、馬の火葬を行ったレアとイリスは残された馬車の中で夜が明けるまで過ごす。そして日が昇るとイリスに起こされ、朝食の準備を行う。


「朝は私が作りますよ。昨日はいい食材が手に入りましたからね」
「食材って……もしかしてコボルトの事?」
「文句を言っちゃ駄目ですよ。魔物の肉は普通の動物よりも栄養があるんですからね」
「いや、俺の力で普通に作れるけど……」


イリスは昨夜にレアが倒したコボルトの死骸を解体し、肉と野草を煮込んだ鍋料理を披露する。最初は食べる事を躊躇したレアだが、折角の好意を無下にする事は出来ず、食事を行う。幸いというべきかイリスの作り出した料理は美味しく、コボルトの肉は硬かったが中々美味しかった。


「へえ……外見は不気味だけど、肉は美味しいな」
「調理方法にちょっとした工夫を加えないと食べられませんけどね。大抵の魔物は煮込めばどうにか食べられます。中には食す事で特別な能力を授かる場合もありますから」
「そうなんだ」
「だけど野外で料理するときは気を付けてくださいよ。料理の匂いを他の魔物が嗅ぎ付けてくる可能性が高いですからね」
「なるほど……それなら早めに食わないとな」


食事を行いながらもレアは自分のステータス画面に視線を向け、追加されたアイテムボックスの「リスト」の画面を確認する。こちらの画面はステータス画面を開くと自動的に表示される仕組みらしい。



――リスト(制限重量:100kg)――

・狙撃銃     ×1
・散弾銃     ×1
・弾丸      ×30
・日本刀     ×1
・鍋       ×1
・電灯      ×1
・寝袋      ×1
・スマートフォン ×1
・毛布      ×2
・魔力回復薬   ×10

――――――――――――――――――



視界に表示されたリストには異空間に保管した物体の名前が表示されており、これまでに文字制作の能力で作り出した武器や道具を収納させている。但し、拳銃とホルスターに関しては常に身に着ける事に決め、余分な荷物だけを預けている。また、レアは画面に表示されている「文章」に視線を向け、この状態でも文字変換の能力を発動出来ないのかを試す。


「あ、やっぱり上手く行った」
「え?どうかしたんですか?」
「いや、何でもない……」


表示された「収納魔法アイテムボックス」の画面にも文字変換の能力が有効であると判明し、試しに彼は「制限重量」と収納した道具の横に表示されている「所持数」の数字を変更させる。



――リスト(制限重量:無限)――

・狙撃銃     ×1
・散弾銃     ×1
・弾丸      ×30
・日本刀     ×1
・鍋       ×1
・電灯      ×1
・寝袋      ×1
・スマートフォン ×2
・毛布      ×2
・魔力回復薬   ×10

―――――――――――――――

画面の制限重量の数値を「無限」に変換させ、更に収納している道具の所持数を変化させる。試しにレアは収納した物体の「所持数」を変更させると、実際には1つしか入れなかった道具が異空間内で増加し、幾らでも取り出す事が判明した。


「おおっ……これは凄いな。これでわざわざ作り出す必要がなくなったや」
「あれ?その道具って二つ持ってたんですか?」
「いや、そういう訳じゃないんだけどね……」


アイテムボックスからレアは自分の「スマートフォン」を取り出し、所持数を増やした事で彼の手元には本来ならば存在しないはずの2つ目のスマートフォンを手にしていた。試しに起動させて調べて見ると、中身のデータも全く同じ内容であり、オリジナルと全く同じ外見と性能だった。


「そういえば聞き忘れていましたけど、それはどういう道具なんですか?」
「これは……本当なら遠い所に存在する人間と連絡を行ったり、ネット……いや、どういえばいいかな。えっと、調べたい物を一瞬で調べられる道具……かな。あ、複雑な計算を一瞬で行える昨日もあるし、懐中電灯……いや、灯りの代わりにもなるよ」
「ほほうっ」


スマートフォンの機能を説明するとイリスは興味深そうに視線を向け、幾らでも作り出せる事が出来るのでレアは彼女に1台渡そうかと考えたが、迂闊にこの世界に存在しない道具を他人に手渡すのは危険ではないかと考え直す。

今まで彼は道具を作り出すときは文字変換の能力を使用して物体を別の物体に変換させる事でしか方法はなかったが、この「リスト」の画面を利用すれば「所持数」の数を増加させるだけでわざわざ弾丸を利用して文章を書き換えて作り出す必要はなくなる。


「でも困りましたね。馬がいない以上はここから徒歩で移動するしかないんですけど……あ、レアさんの能力でもう一度馬車を作り出せませんか?」
「それは出来ると思うけど……別の乗物を用意するよ」


文字変換の能力を使用すればもう一度馬車を作り出す事は簡単に出来るが、殺された馬達の事を考えると普通の馬車では魔物に襲われた場合、真っ先に被害に遭うのは馬である。また自分が作り出した生き物を失う事を恐れたレアは別の乗物を作り出すことを決め、夜間でも移動する事が可能であり、移動中でも身体を休ませるのには最適な乗物を作り出す事にした。


「これでいいか」


レアは拳銃から弾丸を1つ抜き取り、新しい物を作り出す時はアイテムボックスの画面を変更するよりもこちらの方が早く、弾丸の詳細画面の文章を記す


『弾丸――拳銃の弾丸 状態:使用可能』
「こんな感じか」
『キャンピングカー――異世界の技術で作り出された自動車 状態:燃料無限』


適当な文章に改竄したレアは弾丸を地面に放り投げると、二人の目の前で弾丸が光り輝き、やがて大型車両に変化を果たす。出現したのはレアの叔父が所有していた物と同じ型のキャンピングカーが出現し、文章が曖昧な場合は彼の記憶に存在する物体を参考にして作り出されるらしく、10人乗りの大型キャンピングカーが誕生した。


「うわ、何ですかこれはっ!?」
「自動車……と言っても分からないか」
「あ、その単語は効いた事がありますよ。確か、異世界から訪れた勇者が使う乗物の事ですよね?」
「え?知ってるの?」
「聞いた事だけはありますよ。伝説の勇者が使用していた乗物と聞いていましたが、見たのは初めてです」


イリスの発言によると過去に召喚された勇者の誰かが何らかの方法で地球の自動車も作り出したらしく、こちらの世界でも伝説の魔道具として伝わっているらしい。レアは自動車がこちらの世界にも存在した時期がある事に驚くが、もしかしたら自分のような特別な能力を持つ勇者が作り出したのではないかと考える。


「よし、じゃあ乗って」
「あ、じゃあ……お邪魔しま~す」


扉には鍵の類は掛けられておらず、イリスを中に入れるとレアは内部を観察して二人でも十分に過ごし易い環境である事を確認する。毛布付きの寝台も存在し、キッチンや冷蔵庫、果てにはトイレとシャワーまで完備されていた。馬車よりも快適に過ごせるのは間違いないが、肝心な運転の方法を調べなければならない。


「うわ、本棚に漫画やライトノベルまである。あ、これは従姉のレナ君がよく読んでた奴だな」
「うわ、凄いですねこの中……ちょっとした家じゃないですか」


イリスがキャンピングカーの設備に戸惑う間、レアは運転席に移動し、緊張しながらも座席に座ってシートベルトを装着する。ここからが重要であり、自分が本当に車を運転出来るのか不安を抱きながらも彼はハンドルを握りしめる。


「さてと……ここからどうやって動かすんだろう」
「え?ちょっと待ってください。レアさんは自動車が運転出来ないんですか?」
「イリスは出来るの?」
「いや、私は自動車に乗ること自体が初めですし……というか、運転できない物を作り出したんですか?」


運転席に乗り込んだレアはハンドルとブレーキ、更にアクセルやクラッチ、ハンドブレーキの類を確かめ、まずはエンジンを発動させる。既に鍵穴には車のキーが差し込まれており、一先ずはエンジンを掛ける事には成功した。


「よし……後はハンドブレーキを外して……うわっ!?」
「あ、動き出しましたね」


無事に自動車が動き出し、障害物が少ない草原で会った事が幸いした。まさか異世界で無免許運転を体験する日が訪れるとは思わなかったが、何とかレアは発進と停車の方法を把握する。


「ふうっ、何とか止まった。でも、ここが草原じゃなかったら絶対に事故になっていたな」
「良く分かりませんけど、何だか面白そうですね。私にも運転させてくれませんか?」
「え?いや、けど……」
「大丈夫ですよ。さっきのレアさんの手順は見ていましたから」
「……まあ、そこまで言うのなら」


イリスの提案にレアは半信半疑で彼女に運転席を譲り、一応は周囲には障害物になりそうな物はない事を確かめてから彼女を運転席に座らせる。宣言通りにレアの運転を観察して運転の手順は覚えたらしく、即座にエンジンをかけて車を動かす。


「おっ、おっ……これは面白いですね!!簡単に動きますよっ!!」
「えっ……」
「なるほど、こうやって速度を加速させたり、減速する事が出来るんですね。あ、こうすれば後ろにも移動出来ますよ!!」
「そ、そうだね」


あっさりとレアが手探りで発見した車の発進と停止の方法を実行し、更に彼がまだ試していないバック走行まで実行する。現実世界の人間のレアよりも簡単に車の操作方法を掴んだ彼女は嬉しそうに自動車を発進させる。


「あ、見てください!!なんか前の硝子に取り付けられている黒いのが動き出しましたよ!!あ、ここを押したら扉の鍵がかかったみたいです!!」
「へ、へえっ……そうなんだ」


次々と車の機能を操作するイリスにレアは引き攣った笑みを浮かべるしかなく、仕方ないので運転は彼女に任せて自分は大人しく寝台の方に移動して身体を休ませる事にした。
しおりを挟む
感想 81

あなたにおすすめの小説

おっさん武闘家、幼女の教え子達と十年後に再会、実はそれぞれ炎・氷・雷の精霊の王女だった彼女達に言い寄られつつ世界を救い英雄になってしまう

お餅ミトコンドリア
ファンタジー
 パーチ、三十五歳。五歳の時から三十年間修行してきた武闘家。  だが、全くの無名。  彼は、とある村で武闘家の道場を経営しており、〝拳を使った戦い方〟を弟子たちに教えている。  若い時には「冒険者になって、有名になるんだ!」などと大きな夢を持っていたものだが、自分の道場に来る若者たちが全員〝天才〟で、自分との才能の差を感じて、もう諦めてしまった。  弟子たちとの、のんびりとした穏やかな日々。  独身の彼は、そんな彼ら彼女らのことを〝家族〟のように感じており、「こんな毎日も悪くない」と思っていた。  が、ある日。 「お久しぶりです、師匠!」  絶世の美少女が家を訪れた。  彼女は、十年前に、他の二人の幼い少女と一緒に山の中で獣(とパーチは思い込んでいるが、実はモンスター)に襲われていたところをパーチが助けて、その場で数時間ほど稽古をつけて、自分たちだけで戦える力をつけさせた、という女の子だった。 「私は今、アイスブラット王国の〝守護精霊〟をやっていまして」  精霊を自称する彼女は、「ちょ、ちょっと待ってくれ」と混乱するパーチに構わず、ニッコリ笑いながら畳み掛ける。 「そこで師匠には、私たちと一緒に〝魔王〟を倒して欲しいんです!」  これは、〝弟子たちがあっと言う間に強くなるのは、師匠である自分の特殊な力ゆえ〟であることに気付かず、〝実は最強の実力を持っている〟ことにも全く気付いていない男が、〝実は精霊だった美少女たち〟と再会し、言い寄られ、弟子たちに愛され、弟子以外の者たちからも尊敬され、世界を救って英雄になってしまう物語。 (※第18回ファンタジー小説大賞に参加しています。 もし宜しければ【お気に入り登録】で応援して頂けましたら嬉しいです! 何卒宜しくお願いいたします!)

不遇な死を迎えた召喚勇者、二度目の人生では魔王退治をスルーして、元の世界で気ままに生きる

六志麻あさ
ファンタジー
異世界に召喚され、魔王を倒して世界を救った少年、夏瀬彼方(なつせ・かなた)。 強大な力を持つ彼方を恐れた異世界の人々は、彼を追い立てる。彼方は不遇のうちに数十年を過ごし、老人となって死のうとしていた。 死の直前、現れた女神によって、彼方は二度目の人生を与えられる。異世界で得たチートはそのままに、現実世界の高校生として人生をやり直す彼方。 再び魔王に襲われる異世界を見捨て、彼方は勇者としてのチート能力を存分に使い、快適な生活を始める──。 ※小説家になろうからの転載です。なろう版の方が先行しています。 ※HOTランキング最高4位まで上がりました。ありがとうございます!

3年F組クラス転移 帝国VS28人のユニークスキル~召喚された高校生は人類の危機に団結チートで国を相手に無双する~

代々木夜々一
ファンタジー
高校生3年F組28人が全員、召喚魔法に捕まった! 放り出されたのは闘技場。武器は一人に一つだけ与えられた特殊スキルがあるのみ!何万人もの観衆が見つめる中、召喚した魔法使いにざまぁし、王都から大脱出! 3年F組は一年から同じメンバーで結束力は固い。中心は陰で「キングとプリンス」と呼ばれる二人の男子と、家業のスーパーを経営する計算高きJK姫野美姫。 逃げた深い森の中で見つけたエルフの廃墟。そこには太古の樹「菩提樹の精霊」が今にも枯れ果てそうになっていた。追いかけてくる魔法使いを退け、のんびりスローライフをするつもりが古代ローマを滅ぼした疫病「天然痘」が異世界でも流行りだした! 原住民「森の民」とともに立ち上がる28人。圧政の帝国を打ち破ることができるのか? ちょっぴり淡い恋愛と友情で切り開く、異世界冒険サバイバル群像劇、ここに開幕! ※カクヨムにも掲載あり

劣悪だと言われたハズレ加護の『空間魔法』を、便利だと思っているのは僕だけなのだろうか?

はらくろ
ファンタジー
海と交易で栄えた国を支える貴族家のひとつに、 強くて聡明な父と、優しくて活動的な母の間に生まれ育った少年がいた。 母親似に育った賢く可愛らしい少年は優秀で、将来が楽しみだと言われていたが、 その少年に、突然の困難が立ちはだかる。 理由は、貴族の跡取りとしては公言できないほどの、劣悪な加護を洗礼で授かってしまったから。 一生外へ出られないかもしれない幽閉のような生活を続けるよりも、少年は屋敷を出て行く選択をする。 それでも持ち前の強く非常識なほどの魔力の多さと、負けず嫌いな性格でその困難を乗り越えていく。 そんな少年の物語。

【一時完結】スキル調味料は最強⁉︎ 外れスキルと笑われた少年は、スキル調味料で無双します‼︎

アノマロカリス
ファンタジー
調味料…それは、料理の味付けに使う為のスパイスである。 この世界では、10歳の子供達には神殿に行き…神託の儀を受ける義務がある。 ただし、特別な理由があれば、断る事も出来る。 少年テッドが神託の儀を受けると、神から与えられたスキルは【調味料】だった。 更にどんなに料理の練習をしても上達しないという追加の神託も授かったのだ。 そんな話を聞いた周りの子供達からは大爆笑され…一緒に付き添っていた大人達も一緒に笑っていた。 少年テッドには、両親を亡くしていて妹達の面倒を見なければならない。 どんな仕事に着きたくて、頭を下げて頼んでいるのに「調味料には必要ない!」と言って断られる始末。 少年テッドの最後に取った行動は、冒険者になる事だった。 冒険者になってから、薬草採取の仕事をこなしていってったある時、魔物に襲われて咄嗟に調味料を魔物に放った。 すると、意外な効果があり…その後テッドはスキル調味料の可能性に気付く… 果たして、その可能性とは⁉ HOTランキングは、最高は2位でした。 皆様、ありがとうございます.°(ಗдಗ。)°. でも、欲を言えば、1位になりたかった(⌒-⌒; )

異世界で快適な生活するのに自重なんかしてられないだろ?

お子様
ファンタジー
机の引き出しから過去未来ではなく異世界へ。 飛ばされた世界で日本のような快適な生活を過ごすにはどうしたらいい? 自重して目立たないようにする? 無理無理。快適な生活を送るにはお金が必要なんだよ! お金を稼ぎ目立っても、問題無く暮らす方法は? 主人公の考えた手段は、ドン引きされるような内容だった。 (実践出来るかどうかは別だけど)

平凡なサラリーマンが異世界に行ったら魔術師になりました~科学者に投資したら異世界への扉が開発されたので、スローライフを満喫しようと思います~

金色のクレヨン@釣りするWeb作家
ファンタジー
夏井カナタはどこにでもいるような平凡なサラリーマン。 そんな彼が資金援助した研究者が異世界に通じる装置=扉の開発に成功して、援助の見返りとして異世界に行けることになった。 カナタは準備のために会社を辞めて、異世界の言語を学んだりして準備を進める。 やがて、扉を通過して異世界に着いたカナタは魔術学校に興味をもって入学する。 魔術の適性があったカナタはエルフに弟子入りして、魔術師として成長を遂げる。 これは文化も風習も違う異世界で戦ったり、旅をしたりする男の物語。 エルフやドワーフが出てきたり、国同士の争いやモンスターとの戦いがあったりします。 第二章からシリアスな展開、やや残酷な描写が増えていきます。 旅と冒険、バトル、成長などの要素がメインです。 ノベルピア、カクヨム、小説家になろうにも掲載

40歳のおじさん 旅行に行ったら異世界でした どうやら私はスキル習得が早いようです

カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
部長に傷つけられ続けた私 とうとうキレてしまいました なんで旅行ということで大型連休を取ったのですが 飛行機に乗って寝て起きたら異世界でした…… スキルが簡単に得られるようなので頑張っていきます

処理中です...