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「どうしたんだ?ティアラ。改まって話があるなんて」
あの二人がパーティーでいない間に、私はお父様とお母様に話があると伝えた。二人とも不思議そうな顔をしたが、リラックスして話せた方がいいだろうといつもみんなで寛いでいるサロンで話をしようと言ってくれた。
「実は、リュダールとの婚約を白紙に戻したいのです」
開口一番、私の言葉を聞いた二人は声も出せずに口をはくはくと動かした。予想していたよりも驚いた二人を安心させるように、にこりと微笑む。
「私、半年前からリュダールとアリーシャの密会を度々目撃しておりましたの」
穏やかな口調でゆっくりと告げた私にお父様の表情が瞬時に変わる。お母様も気分を落ち着かせる為か、そっとカップを手に取り一口お茶を飲んだ。
「…どう言う事か、聞かせてくれるか?」
お父様の優しい問いかけに、今まで我慢し続けていたものが込み上げる。
「ティアラ、ゆっくりでいいのよ?大丈夫、全て話してしまいなさい」
お母様が隣に来てそっと手を取ってくれた。その温もりを感じると、もう我慢が出来なかった。
「リュダールとアリーシャは私に隠れ、至る所で密会をし、何かを渡し合っているのです。ただ…一般的な不貞ではなく、触れ合う事はありませんでした」
時折り涙が流れ、中断しつつも全てを話し終えるとお父様とお母様の顔から表情が無くなっていた。
「ティアラ、今まで良く耐えたね。辛かっただろう」
「もっと早くにお母様達に相談して欲しかったわ…。気付いてあげられなくてごめんね…」
ぎゅっとお母様が抱きしめて来る。お母様の匂いがして、一瞬子供に戻ったような錯覚に陥った。
「ごめんなさい…きっと何かの間違いだと思って、様子を見ているうちに…」
「ふむ…しかし何を渡し合っているのか気になるね」
「はい、リュダールはいつも何かの箱や手紙などをお渡ししています」
「箱…ねぇ…。あぁ、そうだわ!ハンナ!」
お母様が自分の侍女を呼ぶとさっとハンナが現れた。早っ!!どこにいたの!?
「奥様、ハンナはここに」
「アリーシャの部屋を探って来てちょうだい。アクセサリーとか特に」
「畏まりました」
ふっと姿を消したハンナは何者だろうか。侍女よね?侍女なのよね?
「すぐわかるから、待っててね?でも、アリーシャは何がしたかったのかしら?リュダールがティアラにベタ惚れなのは知ってるでしょうに」
「リュダールも満更ではないのでは?」
「違うと思うけれど…ねぇ、あなた?……あぁ、お怒りね」
ふぅ、と溜息を吐いたお母様がお茶を一口飲む。私は前に座るお父様を見て思わず「ひゅっ!」と喉が鳴った。お父様が笑いながら怒っていたのだ。
「ティアラは、リュダールが好きかい?」
「…そりゃ…ずっと好きでしたから…」
「そうか。この問題が明らかになって、全てを知った後もそれは変わらない?」
「…し、知り得た事実によりますわ…。二人が想い合っているのなら…私は……」
身を、引きます。
そう言いたいのに、口から言葉が出てこない。言いたくないと私が拒否している。
もごもごと口を開閉していると、「ティアラの気持ちはわかったよ」と笑われた。
「でも…私…このまま無かった事にはしたくないんです」
「…というと?」
「二人共…私を馬鹿にしすぎではないかと」
「ふっ…はは…!」
「お父様?」
突然笑い出したお父様にこちらがびっくりしてしまう。笑う所はなかったはずだ、多分、いや絶対!
「いや…ティアラが怒っているのを十三年振りくらいに見たなと思って」
くつくつと肩を揺らしながら笑っているお父様は、何かを思い出したように話し出した。
「前にも一度、あの二人がティアラに嘘をついた事があったんだ」
「え…覚えてませんわ…」
「そりゃティアラが四歳で、リュダールは六歳、アリーシャは二歳だったから」
「何の嘘ですか?」
「それはね…」
お父様曰く、リュダールとアリーシャは蛙が見たいと池に行こうとしたが、私が池は危ないからダメだと許さなかった。それでも蛙が見たかった二人は私に嘘をついて二人だけで見に行った。その結果、アリーシャは池に落ち、リュダールはアリーシャを助ける時に怪我をした。それを知った私は怒り狂い、約一ヶ月の間二人の前から姿を消したのだそう。
「いやー、あの二人の絶望的な顔を思い出したら笑いが…ふ、ふふ…っ…でも、ちょっと二人とも痛い目に合わないといけないね?こちらでも考えておこう」
お父様はまだ笑いながら、その後がどうだったかを教えてくれた。二人は号泣しながら私に懺悔をしたそうだ。それを聞いた私は、仕返しの内容にそれを加える事に決めた。
私にした事を思い返し、悔い改めればいいと思った。
あの二人がパーティーでいない間に、私はお父様とお母様に話があると伝えた。二人とも不思議そうな顔をしたが、リラックスして話せた方がいいだろうといつもみんなで寛いでいるサロンで話をしようと言ってくれた。
「実は、リュダールとの婚約を白紙に戻したいのです」
開口一番、私の言葉を聞いた二人は声も出せずに口をはくはくと動かした。予想していたよりも驚いた二人を安心させるように、にこりと微笑む。
「私、半年前からリュダールとアリーシャの密会を度々目撃しておりましたの」
穏やかな口調でゆっくりと告げた私にお父様の表情が瞬時に変わる。お母様も気分を落ち着かせる為か、そっとカップを手に取り一口お茶を飲んだ。
「…どう言う事か、聞かせてくれるか?」
お父様の優しい問いかけに、今まで我慢し続けていたものが込み上げる。
「ティアラ、ゆっくりでいいのよ?大丈夫、全て話してしまいなさい」
お母様が隣に来てそっと手を取ってくれた。その温もりを感じると、もう我慢が出来なかった。
「リュダールとアリーシャは私に隠れ、至る所で密会をし、何かを渡し合っているのです。ただ…一般的な不貞ではなく、触れ合う事はありませんでした」
時折り涙が流れ、中断しつつも全てを話し終えるとお父様とお母様の顔から表情が無くなっていた。
「ティアラ、今まで良く耐えたね。辛かっただろう」
「もっと早くにお母様達に相談して欲しかったわ…。気付いてあげられなくてごめんね…」
ぎゅっとお母様が抱きしめて来る。お母様の匂いがして、一瞬子供に戻ったような錯覚に陥った。
「ごめんなさい…きっと何かの間違いだと思って、様子を見ているうちに…」
「ふむ…しかし何を渡し合っているのか気になるね」
「はい、リュダールはいつも何かの箱や手紙などをお渡ししています」
「箱…ねぇ…。あぁ、そうだわ!ハンナ!」
お母様が自分の侍女を呼ぶとさっとハンナが現れた。早っ!!どこにいたの!?
「奥様、ハンナはここに」
「アリーシャの部屋を探って来てちょうだい。アクセサリーとか特に」
「畏まりました」
ふっと姿を消したハンナは何者だろうか。侍女よね?侍女なのよね?
「すぐわかるから、待っててね?でも、アリーシャは何がしたかったのかしら?リュダールがティアラにベタ惚れなのは知ってるでしょうに」
「リュダールも満更ではないのでは?」
「違うと思うけれど…ねぇ、あなた?……あぁ、お怒りね」
ふぅ、と溜息を吐いたお母様がお茶を一口飲む。私は前に座るお父様を見て思わず「ひゅっ!」と喉が鳴った。お父様が笑いながら怒っていたのだ。
「ティアラは、リュダールが好きかい?」
「…そりゃ…ずっと好きでしたから…」
「そうか。この問題が明らかになって、全てを知った後もそれは変わらない?」
「…し、知り得た事実によりますわ…。二人が想い合っているのなら…私は……」
身を、引きます。
そう言いたいのに、口から言葉が出てこない。言いたくないと私が拒否している。
もごもごと口を開閉していると、「ティアラの気持ちはわかったよ」と笑われた。
「でも…私…このまま無かった事にはしたくないんです」
「…というと?」
「二人共…私を馬鹿にしすぎではないかと」
「ふっ…はは…!」
「お父様?」
突然笑い出したお父様にこちらがびっくりしてしまう。笑う所はなかったはずだ、多分、いや絶対!
「いや…ティアラが怒っているのを十三年振りくらいに見たなと思って」
くつくつと肩を揺らしながら笑っているお父様は、何かを思い出したように話し出した。
「前にも一度、あの二人がティアラに嘘をついた事があったんだ」
「え…覚えてませんわ…」
「そりゃティアラが四歳で、リュダールは六歳、アリーシャは二歳だったから」
「何の嘘ですか?」
「それはね…」
お父様曰く、リュダールとアリーシャは蛙が見たいと池に行こうとしたが、私が池は危ないからダメだと許さなかった。それでも蛙が見たかった二人は私に嘘をついて二人だけで見に行った。その結果、アリーシャは池に落ち、リュダールはアリーシャを助ける時に怪我をした。それを知った私は怒り狂い、約一ヶ月の間二人の前から姿を消したのだそう。
「いやー、あの二人の絶望的な顔を思い出したら笑いが…ふ、ふふ…っ…でも、ちょっと二人とも痛い目に合わないといけないね?こちらでも考えておこう」
お父様はまだ笑いながら、その後がどうだったかを教えてくれた。二人は号泣しながら私に懺悔をしたそうだ。それを聞いた私は、仕返しの内容にそれを加える事に決めた。
私にした事を思い返し、悔い改めればいいと思った。
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