8 / 45
7
しおりを挟む
アリーシャが出席するパーティーの為に、リュダールが迎えに来たと知らせを受けた。
私には関係のない事だけど、妹がお世話になるのだからお礼は言っておきたい。
「アリーシャ、よく似合ってる」
「ありがとう、お義兄様!!」
ニコニコと笑い合う二人をずっと見続けて来た。同じ空間に私がいる事を彼らは知らずに、楽しげに会話をし、笑い合う。遠目から見た彼らは、美男美女でお似合いで。私が入る隙間はない、まるで最初からいなかったみたいに。
「私が消えれば満足するのかしら」
蓄積された不満がじわじわと煮えていくように、存在を主張する。信じたい気持ちと、疑う気持ちの一騎打ちはもうずっと終戦しないまま。
「アリーシャは美人だから、男が群がりそうで怖いな」
「やだ!お義兄様ったら!」
「俺は役得だな。同僚に見せびらかしてやろう」
「もう!恥ずかしいわ!」
アリーシャは美人だから…か。悪かったわね、美人じゃなくて。同僚に見せびらかされるどころか、あまり会わせても貰ってないわ、私。彼の同僚、友人もほとんど知らない。いつも上手く誘導されて、話せないまま終わるのよ。でも、納得したわ、私だと自慢は出来ないものね。
「お嬢様…私、そこの銅像で殴りたいのですが」
「ぷっ…モニカったら…!死んじゃうわ」
「ギリギリを見極めます」
「どことの境界線なのよ?」
廊下を歩きながらクスクスと笑ってしまう。すると声に気付いたのか、浮ついた会話は止まりリュダールが私の所に走って来た。
「ティアラ!!会いたかった!!」
「リュダール、ご機嫌よう」
ぎゅう、と抱擁をされてもさっきの今じゃなんら嬉しくない。見事に私の自尊心を粉々にしてくれてありがとう。
「ティアラとパーティー行きたい」
「まぁ、私は参加の予定はないわ」
「ダンスしたい」
「また今度ね」
甘えたように言うリュダールのどちら側が本心なのか。私は乾いた笑いしか出てこなかった。
「リュダール、アリーシャをお願いね」
「うん、任せとけよ。変な虫は寄せ付けない」
「ふふ…なら安心ね」
「その代わり、ティアラからご褒美が欲しい」
「そうね…考えておくわね」
ぱっと明るくなる表情は、子供の頃から変わらない。素直で正直、それが彼だった。それがいつから崩れていたのか、私にはわからない。
「もう時間でしょ、気を付けて」
「ティアラともっと一緒にいたい」
「だめよ、ほら…アリーシャが拗ねるわよ」
「あぁ、それは面倒だな。じゃあ、行って来るよ」
「行ってらっしゃい」
階下へ降りると案の定アリーシャがむくれていて、「遅れちゃうでしょ!」とリュダールに文句を言っていた。
「アリーシャ、行ってらっしゃい」
「お姉様、行って来ます!」
手を振りリュダールの腕に手を添えるアリーシャを、見送る。リュダールも、振り返って手を振っている。
見目麗しい銀髪のリュダール、美しい金髪の美少女なアリーシャ、寄り添う二人が唯一無二の対に見えて。
あぁ、私は今…ちゃんと笑えているだろうか。
「…ほんと、お似合いね」
ギリギリと締め付けられる胸の痛みにはまだ慣れない。
でも、この痛みは私が彼をまだ想っているのだと教えてくれる。
これが無くなったら。
無くなってしまったなら。
私は心から笑えるのだろうか。
「お嬢様、お手紙が来ております」
「ありがとう」
手渡された手紙の封蝋を見て、思わず頬が緩んだ。
待ち焦がれていた手紙だったから。
新たな一歩を踏み出すための、招待状。
「お父様達にお話しなくては」
私は、卒業資格を手に入れた。
私には関係のない事だけど、妹がお世話になるのだからお礼は言っておきたい。
「アリーシャ、よく似合ってる」
「ありがとう、お義兄様!!」
ニコニコと笑い合う二人をずっと見続けて来た。同じ空間に私がいる事を彼らは知らずに、楽しげに会話をし、笑い合う。遠目から見た彼らは、美男美女でお似合いで。私が入る隙間はない、まるで最初からいなかったみたいに。
「私が消えれば満足するのかしら」
蓄積された不満がじわじわと煮えていくように、存在を主張する。信じたい気持ちと、疑う気持ちの一騎打ちはもうずっと終戦しないまま。
「アリーシャは美人だから、男が群がりそうで怖いな」
「やだ!お義兄様ったら!」
「俺は役得だな。同僚に見せびらかしてやろう」
「もう!恥ずかしいわ!」
アリーシャは美人だから…か。悪かったわね、美人じゃなくて。同僚に見せびらかされるどころか、あまり会わせても貰ってないわ、私。彼の同僚、友人もほとんど知らない。いつも上手く誘導されて、話せないまま終わるのよ。でも、納得したわ、私だと自慢は出来ないものね。
「お嬢様…私、そこの銅像で殴りたいのですが」
「ぷっ…モニカったら…!死んじゃうわ」
「ギリギリを見極めます」
「どことの境界線なのよ?」
廊下を歩きながらクスクスと笑ってしまう。すると声に気付いたのか、浮ついた会話は止まりリュダールが私の所に走って来た。
「ティアラ!!会いたかった!!」
「リュダール、ご機嫌よう」
ぎゅう、と抱擁をされてもさっきの今じゃなんら嬉しくない。見事に私の自尊心を粉々にしてくれてありがとう。
「ティアラとパーティー行きたい」
「まぁ、私は参加の予定はないわ」
「ダンスしたい」
「また今度ね」
甘えたように言うリュダールのどちら側が本心なのか。私は乾いた笑いしか出てこなかった。
「リュダール、アリーシャをお願いね」
「うん、任せとけよ。変な虫は寄せ付けない」
「ふふ…なら安心ね」
「その代わり、ティアラからご褒美が欲しい」
「そうね…考えておくわね」
ぱっと明るくなる表情は、子供の頃から変わらない。素直で正直、それが彼だった。それがいつから崩れていたのか、私にはわからない。
「もう時間でしょ、気を付けて」
「ティアラともっと一緒にいたい」
「だめよ、ほら…アリーシャが拗ねるわよ」
「あぁ、それは面倒だな。じゃあ、行って来るよ」
「行ってらっしゃい」
階下へ降りると案の定アリーシャがむくれていて、「遅れちゃうでしょ!」とリュダールに文句を言っていた。
「アリーシャ、行ってらっしゃい」
「お姉様、行って来ます!」
手を振りリュダールの腕に手を添えるアリーシャを、見送る。リュダールも、振り返って手を振っている。
見目麗しい銀髪のリュダール、美しい金髪の美少女なアリーシャ、寄り添う二人が唯一無二の対に見えて。
あぁ、私は今…ちゃんと笑えているだろうか。
「…ほんと、お似合いね」
ギリギリと締め付けられる胸の痛みにはまだ慣れない。
でも、この痛みは私が彼をまだ想っているのだと教えてくれる。
これが無くなったら。
無くなってしまったなら。
私は心から笑えるのだろうか。
「お嬢様、お手紙が来ております」
「ありがとう」
手渡された手紙の封蝋を見て、思わず頬が緩んだ。
待ち焦がれていた手紙だったから。
新たな一歩を踏み出すための、招待状。
「お父様達にお話しなくては」
私は、卒業資格を手に入れた。
2,049
あなたにおすすめの小説
初夜に暴言を吐いた夫は後悔し続ける──10年後の償い【完結保証】
星森 永羽
恋愛
王命により、辺境伯ロキアのもとへ嫁いだのは、金髪翠眼の美しき公爵令嬢スフィア。
だが、初夜に彼が告げたのは、愛も権限も与えないという冷酷な宣言だった。噂に踊らされ、彼女を「穢れた花嫁」と罵ったロキア。
しかし、わずか一日でスフィアは姿を消し、教会から届いたのは婚姻無効と慰謝料請求の書状──。
王と公爵の怒りを買ったロキアは、爵位も領地も名誉も奪われ、ただの補佐官として生きることに。
そして十年後、運命のいたずらか、彼は被災地で再びスフィアと出会う。
地位も捨て、娘を抱えて生きる彼女の姿に、ロキアの胸に去来するのは、悔恨と赦しを乞う想い──。
⚠️本作はAIの生成した文章を一部に使用しています。
幼馴染の王女様の方が大切な婚約者は要らない。愛してる? もう興味ありません。
藍川みいな
恋愛
婚約者のカイン様は、婚約者の私よりも幼馴染みのクリスティ王女殿下ばかりを優先する。
何度も約束を破られ、彼と過ごせる時間は全くなかった。約束を破る理由はいつだって、「クリスティが……」だ。
同じ学園に通っているのに、私はまるで他人のよう。毎日毎日、二人の仲のいい姿を見せられ、苦しんでいることさえ彼は気付かない。
もうやめる。
カイン様との婚約は解消する。
でもなぜか、別れを告げたのに彼が付きまとってくる。
愛してる? 私はもう、あなたに興味はありません!
一度完結したのですが、続編を書くことにしました。読んでいただけると嬉しいです。
いつもありがとうございます。
設定ゆるゆるの、架空の世界のお話です。
沢山の感想ありがとうございます。返信出来ず、申し訳ありません。
〖完結〗旦那様は私よりも愛人を選ぶそうです。
藍川みいな
恋愛
愛していると言った旦那様は、結婚して3年が経ったある日、愛人を連れて来ました。
旦那様が愛していたのは、私ではなく、聖女の力だったようです。3年間平和だった事から、私の力など必要ないと勘違いされたようで…
「もうお前は必要ない。出て行け。」と、言われたので出ていきます。
私がいなくなったら結界は消滅してしまいますけど、大丈夫なのですよね? それならば、二度と私を頼らないでください!
シャーロットの力のおかげで、子爵から伯爵になれたのに、あっけなく捨てるルーク。
結界が消滅しそうになり、街が魔物に囲まれた事でルークはシャーロットを連れ戻そうとするが…
設定ゆるゆるの、架空の世界のお話です。
全15話で完結になります。
〖完結〗では、婚約解消いたしましょう。
藍川みいな
恋愛
三年婚約しているオリバー殿下は、最近別の女性とばかり一緒にいる。
学園で行われる年に一度のダンスパーティーにも、私ではなくセシリー様を誘っていた。まるで二人が婚約者同士のように思える。
そのダンスパーティーで、オリバー殿下は私を責め、婚約を考え直すと言い出した。
それなら、婚約を解消いたしましょう。
そしてすぐに、婚約者に立候補したいという人が現れて……!?
設定ゆるゆるの、架空の世界のお話しです。
彼を追いかける事に疲れたので、諦める事にしました
Karamimi
恋愛
貴族学院2年、伯爵令嬢のアンリには、大好きな人がいる。それは1学年上の侯爵令息、エディソン様だ。そんな彼に振り向いて欲しくて、必死に努力してきたけれど、一向に振り向いてくれない。
どれどころか、最近では迷惑そうにあしらわれる始末。さらに同じ侯爵令嬢、ネリア様との婚約も、近々結ぶとの噂も…
これはもうダメね、ここらが潮時なのかもしれない…
そんな思いから彼を諦める事を決意したのだが…
5万文字ちょっとの短めのお話で、テンポも早めです。
よろしくお願いしますm(__)m
婚約破棄されたので、もう誰の役にも立たないことにしました 〜静かな公爵家で、何もしない私の本当の人生が始まります〜
ふわふわ
恋愛
王太子の婚約者として、
完璧であることを求められ続けてきた令嬢エリシア。
だがある日、彼女は一方的に婚約を破棄される。
理由は簡単だった。
「君は役に立ちすぎた」から。
すべてを失ったはずの彼女が身を寄せたのは、
“静かな公爵”と呼ばれるアルトゥール・クロイツの屋敷。
そこで待っていたのは――
期待も、役割も、努力の強要もない日々だった。
前に出なくていい。
誰かのために壊れなくていい。
何もしなくても、ここにいていい。
「第二の人生……いえ、これからが本当の人生です」
婚約破棄ざまぁのその先で描かれる、
何者にもならなくていいヒロインの再生と、
放っておく優しさに満ちた静かな溺愛。
これは、
“役に立たなくなった”令嬢が、
ようやく自分として生き始める物語。
〖完結〗その愛、お断りします。
藍川みいな
恋愛
愛する人と結婚して一年、幸せな毎日を送っていた。それが、一瞬で消え去った……
彼は突然愛人と子供を連れて来て、離れに住まわせると言った。愛する人に裏切られていたことを知り、胸が苦しくなる。
邪魔なのは、私だ。
そう思った私は離婚を決意し、邸を出て行こうとしたところを彼に見つかり部屋に閉じ込められてしまう。
「君を愛してる」と、何度も口にする彼。愛していれば、何をしても許されると思っているのだろうか。
冗談じゃない。私は、彼の思い通りになどならない!
*設定ゆるゆるの、架空の世界のお話です。
〖完結〗愛しているから、あなたを愛していないフリをします。
藍川みいな
恋愛
ずっと大好きだった幼なじみの侯爵令息、ウォルシュ様。そんなウォルシュ様から、結婚をして欲しいと言われました。
但し、条件付きで。
「子を産めれば誰でもよかったのだが、やっぱり俺の事を分かってくれている君に頼みたい。愛のない結婚をしてくれ。」
彼は、私の気持ちを知りません。もしも、私が彼を愛している事を知られてしまったら捨てられてしまう。
だから、私は全力であなたを愛していないフリをします。
設定ゆるゆるの、架空の世界のお話です。
全7話で完結になります。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる