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「泣いたって、あなたが私よりゴミを優先した事も、アリーシャの肩を抱いた事も、嘘を吐いた事も変わらない事実なのよ」
「ごめ…っ…でも…っ…止まらなっ…」
「大体自分が悪いくせに泣かないでちょうだい。私が…どれだけ泣いたかも知らないくせに…」
ひゅっ…とリュダールの喉が鳴った。青灰色の目からはぽろぽろと雫が溢れている。
「ほんと…ごめっ…俺…っ!!馬鹿で…最低だ…」
「あなたは謝れば気分が軽くなっていいでしょうけど、私の気分は晴れないのよ。ふとした瞬間に思い出すの、もう二度とあなたを信じることは出来ないかも知れないわ」
「そ…でも、いいっ…」
「どこまでも勝手ね?あなたも、アリーシャも、自分の事や殿下の事は考えるくせに…私の事は何も思わないのね?いつまでも同じ所に気持ちがあると思わないで」
「…っ!!」
リュダールの瞳に悲しみと絶望が生まれた。でも、だからって何?私だっていっぱい泣いたし、絶望したわよ!!何をそんな被害者ぶってんの!?
「違う…いや…違わない…。俺は…ティアラを蔑ろにしたんだ…」
「そうよ、好きだとか愛してると言いながら騙して、隠れて私以外の女性と逢引きしてたの!もうこれは不貞よね?」
「……俺が愛してるのはティアラだけだ…」
「だから何だって話なのよ。言ってる事とやってる事にどれだけの差があるか…わかって言ってるの?」
私はじろりとリュダールを睨む。腹立たしい事にこの男は睨まれていると言うのに、目が合うとトロリとした惚けた瞳になる。ふざけているわけでも馬鹿にしているわけでもないから、余計にタチが悪い。
いつもはここで絆されるけど、今の私は違うのよ!!我儘になるって決めてるんだから!!
「ねぇ?あなたはまだ私が好きで結婚したいの?」
「し、したい!!」
「どうしても?」
「どうしても!!」
「じゃあ、私のお願いを聞いてくれるかしら?」
「何でも聞く。全裸で街一周でも構わない」
「そんな迷惑な事、やめてちょうだい。需要ないわよ」
「ごめん…」
馬鹿なんじゃないの!?あ、馬鹿だったわ。
私はにこりと微笑み、リュダールを見る。するとリュダールもつられて微笑んだ。
「私、リュダールのコレクションが見てみたいわ。編み物で何を作ろうとしたか、私本人から聞きたいでしょう?」
「…聞きたい」
「だから、持ってきて?今」
「今?」
「そう、馬は貸してあげる。明日の夕方までには帰って来て。明日は外でお肉を焼いて食べましょう?」
にーっこり。そんな効果音が聞こえそうなほどの笑顔を作り、リュダールにお願いをする。
「わかった。行ってくる」
「全部持って来てね!一つ残らず全部よ?どれにも思い出があるから…」
「わかった。全部持ってくるよ」
「じゃあ、気を付けて行って来て」
「うん」
私はモニカに目配せをして、馬を貸すように指示を出す。モニカはこくりと頷き、さっと部屋から出ていった。
「シャリエ様、お義母さん、失礼致します」
「気を付けて」
「気を付けてね」
リュダールは足早に部屋から姿を消した。きっと帰って来たらまた元通りになると思っているのだろう。私の顔からはすっと笑みが消え、リュダールの出て行った扉をじっと見ていた。
「お母様、私、決めたわ」
「なぁに?ティアラ」
「私、この休みが終わった後もここに残るわ」
「え!?」
お母様は驚いたみたいに口をぽかんと開けた。
きっと、今までの流れですぐに私がリュダールを許すと思っていたのだろう。いつもならそう、私はリュダールが幸せであればいいと思っていたから。
でも、今の私は自分を一番に考えたい。
「リュダールが嫌いになったわけじゃなくて、ただ一旦距離を置こうかと」
「そう、わかったわ。じゃあ、そうしましょ」
「ティアラ、どれくらいいるんだい?楽しくなって来たじゃないか!」
「私が辛かった半年間、私はここに残り好きに生きる。リュダールは王都に戻り、殿下に尽くすのも良し、他に婚約者を探すも良し…好きにすれば良い。そして半年後、お互いに気持ちが残っていれば結婚でもいいんじゃない?」
お母様は顎に手を当てて考えるような仕草をしている。お祖母様は楽しげに今年は楽しい事がいっぱいだと喜んでいる。私はリュダールにも同じ期間、同じ思いをして欲しかった。じゃないと、多分わからないと思うの。私は今もリュダールが好きだ。さっきの泣いた顔も、惚けた目も馬鹿わいいと思えるくらいだから。でも、それで許しちゃったらまた忘れて同じ事をするのよ。
「自分が何気なしにした事が、どれだけ人を傷付けたか、どれだけ不安に思ったか…理解できるまで許してやらないわ」
私はこの半年間の燻った思いを消化したいと、握る拳に力を込めた。
「ごめ…っ…でも…っ…止まらなっ…」
「大体自分が悪いくせに泣かないでちょうだい。私が…どれだけ泣いたかも知らないくせに…」
ひゅっ…とリュダールの喉が鳴った。青灰色の目からはぽろぽろと雫が溢れている。
「ほんと…ごめっ…俺…っ!!馬鹿で…最低だ…」
「あなたは謝れば気分が軽くなっていいでしょうけど、私の気分は晴れないのよ。ふとした瞬間に思い出すの、もう二度とあなたを信じることは出来ないかも知れないわ」
「そ…でも、いいっ…」
「どこまでも勝手ね?あなたも、アリーシャも、自分の事や殿下の事は考えるくせに…私の事は何も思わないのね?いつまでも同じ所に気持ちがあると思わないで」
「…っ!!」
リュダールの瞳に悲しみと絶望が生まれた。でも、だからって何?私だっていっぱい泣いたし、絶望したわよ!!何をそんな被害者ぶってんの!?
「違う…いや…違わない…。俺は…ティアラを蔑ろにしたんだ…」
「そうよ、好きだとか愛してると言いながら騙して、隠れて私以外の女性と逢引きしてたの!もうこれは不貞よね?」
「……俺が愛してるのはティアラだけだ…」
「だから何だって話なのよ。言ってる事とやってる事にどれだけの差があるか…わかって言ってるの?」
私はじろりとリュダールを睨む。腹立たしい事にこの男は睨まれていると言うのに、目が合うとトロリとした惚けた瞳になる。ふざけているわけでも馬鹿にしているわけでもないから、余計にタチが悪い。
いつもはここで絆されるけど、今の私は違うのよ!!我儘になるって決めてるんだから!!
「ねぇ?あなたはまだ私が好きで結婚したいの?」
「し、したい!!」
「どうしても?」
「どうしても!!」
「じゃあ、私のお願いを聞いてくれるかしら?」
「何でも聞く。全裸で街一周でも構わない」
「そんな迷惑な事、やめてちょうだい。需要ないわよ」
「ごめん…」
馬鹿なんじゃないの!?あ、馬鹿だったわ。
私はにこりと微笑み、リュダールを見る。するとリュダールもつられて微笑んだ。
「私、リュダールのコレクションが見てみたいわ。編み物で何を作ろうとしたか、私本人から聞きたいでしょう?」
「…聞きたい」
「だから、持ってきて?今」
「今?」
「そう、馬は貸してあげる。明日の夕方までには帰って来て。明日は外でお肉を焼いて食べましょう?」
にーっこり。そんな効果音が聞こえそうなほどの笑顔を作り、リュダールにお願いをする。
「わかった。行ってくる」
「全部持って来てね!一つ残らず全部よ?どれにも思い出があるから…」
「わかった。全部持ってくるよ」
「じゃあ、気を付けて行って来て」
「うん」
私はモニカに目配せをして、馬を貸すように指示を出す。モニカはこくりと頷き、さっと部屋から出ていった。
「シャリエ様、お義母さん、失礼致します」
「気を付けて」
「気を付けてね」
リュダールは足早に部屋から姿を消した。きっと帰って来たらまた元通りになると思っているのだろう。私の顔からはすっと笑みが消え、リュダールの出て行った扉をじっと見ていた。
「お母様、私、決めたわ」
「なぁに?ティアラ」
「私、この休みが終わった後もここに残るわ」
「え!?」
お母様は驚いたみたいに口をぽかんと開けた。
きっと、今までの流れですぐに私がリュダールを許すと思っていたのだろう。いつもならそう、私はリュダールが幸せであればいいと思っていたから。
でも、今の私は自分を一番に考えたい。
「リュダールが嫌いになったわけじゃなくて、ただ一旦距離を置こうかと」
「そう、わかったわ。じゃあ、そうしましょ」
「ティアラ、どれくらいいるんだい?楽しくなって来たじゃないか!」
「私が辛かった半年間、私はここに残り好きに生きる。リュダールは王都に戻り、殿下に尽くすのも良し、他に婚約者を探すも良し…好きにすれば良い。そして半年後、お互いに気持ちが残っていれば結婚でもいいんじゃない?」
お母様は顎に手を当てて考えるような仕草をしている。お祖母様は楽しげに今年は楽しい事がいっぱいだと喜んでいる。私はリュダールにも同じ期間、同じ思いをして欲しかった。じゃないと、多分わからないと思うの。私は今もリュダールが好きだ。さっきの泣いた顔も、惚けた目も馬鹿わいいと思えるくらいだから。でも、それで許しちゃったらまた忘れて同じ事をするのよ。
「自分が何気なしにした事が、どれだけ人を傷付けたか、どれだけ不安に思ったか…理解できるまで許してやらないわ」
私はこの半年間の燻った思いを消化したいと、握る拳に力を込めた。
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