80 / 146
幕間④
聖女が導くべき路①
しおりを挟む
■ソフィア=アルベルティーニ視点
十年前、私は故郷の村の教会で、自分が[聖女]であると知った。
カロリング皇国の辺境にある村の貧しい家庭に育ち、一日たった一回だけの食事すらままならない生活を送っていた私だったが、八歳になった時に村の教会で行われる神託式の日、私の人生が一変した。
神父をはじめ、村中が[聖女]の出現に沸き、私は崇め讃えられた。
しばらくすると、ファルマ聖法国の神官とその一団が村にやって来て、私は村を出てファルマ聖法国へと連れて行かれることとなった。
その時は、八歳で両親やたった一人の姉と離ればなれになることをつらいと感じたが、神官から嬉しそうに袋を受け取った時の両親の顔を見てそんな気持ちも失せてしまったのを覚えている。
だって……私は売られたのだから。
それからの私は、ファルマ聖法国で[聖女]としての修行に明け暮れた。
ファルマ聖教の教義を学び、[聖女]が起こす“奇跡”という名の、職業としての能力の強化に勤しむ。
……いえ、[聖女]の能力を考えれば、それを“奇跡”と呼んでも間違いはないのかもしれない。
何故なら、たとえ瀕死の状態であったとしても生還せしめる【神の癒し】や様々な苦難から身を護る【加護】、全ての者を魅了し、導くことができる【先導】など、まさに[聖女]の“奇跡”としか思えないような破格な能力なのだから。
そして、そんな[聖女]としての情操教育を何年も続けてきた私は気づく。
人は、神の下に平等ではないのだと。
何故かって? 決まっている。
本当に平等であるというのなら、その職業は同程度の能力ではならない。にもかかわらず、職業には上位と下位があり、生まれながらにして差別化が図られているのだから。
貧富の差にしたってそうだ。
富める者は生まれながらにして永遠に裕福で、貧しい物は生まれながらにして永遠に貧しい。
唯一平等があるとするならば、それは人としての生を終える時のみ。
これだけは、どのような者であったとしても逃れることはできない。
ならば、[聖女]として生まれてきた私の使命は何なのだろうか?
【神の癒し】や【加護】を与え、全ての者をどこへ【先導】しろというのだろうか……。
分からない。
分からない、分からない、分からない。
そんな苦悩の日々を抱える中、十八歳を迎えた私は教皇より一つの真理を告げられた。
かの“アルグレア王国”には、『天国への階段』と呼ばれるものがある、と。
それは、人知を超えた、まさに神へと至るもの……人の身では決して触れることのできない、触れてはいけないものであると。
何故教皇が『天国への階段』を私に語ったのか、最初は理解できなかった。
だが、その後に教皇の真意を聞き、正しく理解した。
要は、この『天国への階段』によって人を等しく導き、救済したいのだと。
心が躍った。
こんなに興奮を覚えたのは、自分が[聖女]であると知ってから初めてだった。
「……『天使への階段』さえあれば、私は全ての人を神の下へと正しく導くことができる」
そう、私のこの[聖女]の力は、そのためにあったのだ。
そのために、私はこの世に生を受けたのだ。
それさえ分かれば、私のすべきことは簡単だ。
ただ、『天国への階段』を手に入れ、人々を導くだけ。
私は教皇と話し合った結果、『天国への階段』の存在を確認するため、アルグレア王国へと赴くこととなった。
アルグレア王国……特に国王は、私やファルマ聖法国が来たことに難色を示していたが、『天国への階段』のこと、私達の目的について丁寧に説明すると、しばらく考えた後、協力していただけることとなった。
それと同時に、この国について明るい現地の者を雇った。
それが、アルグレア王国の暗殺者ギルドの長である“ジャック”という男だった。
聞くところによると、この“ジャック”という男、教皇と既知の仲らしい。
なので、アルグレア王国に到着した際には協力を仰ぐようにと、教皇からは助言を受けていたのだ。
実際、このジャックさんは優秀な方で、王国に関するあらゆる情報や国王周辺の内情など、備に情報を伝えてくれた。
私達ファルマ聖法国としては、その分ジャックさんへの報酬も高額になるものと覚悟していたが、彼の要求は意外にも些細なものだった。
そんな中、国王の配下の者……この国の宰相と大臣が『天国への階段』を手に入れるための行動を起こした。
なんと、『天国への階段』を管理する貴族を賊の仕業と見せかけて襲ったのだ。
その話を聞きつけた私は、すぐさま国王に対し抗議した。
そんな短絡的な真似をして、『天国への階段』が入手できなくなってしまったらどうするのかと。
国王曰く対応に問題はないとは言うが、到底信用できない。
それから何の進展もなく、私は王都で悶々とした日々を過ごしていると、ある日突然、状況が動いた。
それが……壊れてしまった筈の、一人の少女の復活だった。
十年前、私は故郷の村の教会で、自分が[聖女]であると知った。
カロリング皇国の辺境にある村の貧しい家庭に育ち、一日たった一回だけの食事すらままならない生活を送っていた私だったが、八歳になった時に村の教会で行われる神託式の日、私の人生が一変した。
神父をはじめ、村中が[聖女]の出現に沸き、私は崇め讃えられた。
しばらくすると、ファルマ聖法国の神官とその一団が村にやって来て、私は村を出てファルマ聖法国へと連れて行かれることとなった。
その時は、八歳で両親やたった一人の姉と離ればなれになることをつらいと感じたが、神官から嬉しそうに袋を受け取った時の両親の顔を見てそんな気持ちも失せてしまったのを覚えている。
だって……私は売られたのだから。
それからの私は、ファルマ聖法国で[聖女]としての修行に明け暮れた。
ファルマ聖教の教義を学び、[聖女]が起こす“奇跡”という名の、職業としての能力の強化に勤しむ。
……いえ、[聖女]の能力を考えれば、それを“奇跡”と呼んでも間違いはないのかもしれない。
何故なら、たとえ瀕死の状態であったとしても生還せしめる【神の癒し】や様々な苦難から身を護る【加護】、全ての者を魅了し、導くことができる【先導】など、まさに[聖女]の“奇跡”としか思えないような破格な能力なのだから。
そして、そんな[聖女]としての情操教育を何年も続けてきた私は気づく。
人は、神の下に平等ではないのだと。
何故かって? 決まっている。
本当に平等であるというのなら、その職業は同程度の能力ではならない。にもかかわらず、職業には上位と下位があり、生まれながらにして差別化が図られているのだから。
貧富の差にしたってそうだ。
富める者は生まれながらにして永遠に裕福で、貧しい物は生まれながらにして永遠に貧しい。
唯一平等があるとするならば、それは人としての生を終える時のみ。
これだけは、どのような者であったとしても逃れることはできない。
ならば、[聖女]として生まれてきた私の使命は何なのだろうか?
【神の癒し】や【加護】を与え、全ての者をどこへ【先導】しろというのだろうか……。
分からない。
分からない、分からない、分からない。
そんな苦悩の日々を抱える中、十八歳を迎えた私は教皇より一つの真理を告げられた。
かの“アルグレア王国”には、『天国への階段』と呼ばれるものがある、と。
それは、人知を超えた、まさに神へと至るもの……人の身では決して触れることのできない、触れてはいけないものであると。
何故教皇が『天国への階段』を私に語ったのか、最初は理解できなかった。
だが、その後に教皇の真意を聞き、正しく理解した。
要は、この『天国への階段』によって人を等しく導き、救済したいのだと。
心が躍った。
こんなに興奮を覚えたのは、自分が[聖女]であると知ってから初めてだった。
「……『天使への階段』さえあれば、私は全ての人を神の下へと正しく導くことができる」
そう、私のこの[聖女]の力は、そのためにあったのだ。
そのために、私はこの世に生を受けたのだ。
それさえ分かれば、私のすべきことは簡単だ。
ただ、『天国への階段』を手に入れ、人々を導くだけ。
私は教皇と話し合った結果、『天国への階段』の存在を確認するため、アルグレア王国へと赴くこととなった。
アルグレア王国……特に国王は、私やファルマ聖法国が来たことに難色を示していたが、『天国への階段』のこと、私達の目的について丁寧に説明すると、しばらく考えた後、協力していただけることとなった。
それと同時に、この国について明るい現地の者を雇った。
それが、アルグレア王国の暗殺者ギルドの長である“ジャック”という男だった。
聞くところによると、この“ジャック”という男、教皇と既知の仲らしい。
なので、アルグレア王国に到着した際には協力を仰ぐようにと、教皇からは助言を受けていたのだ。
実際、このジャックさんは優秀な方で、王国に関するあらゆる情報や国王周辺の内情など、備に情報を伝えてくれた。
私達ファルマ聖法国としては、その分ジャックさんへの報酬も高額になるものと覚悟していたが、彼の要求は意外にも些細なものだった。
そんな中、国王の配下の者……この国の宰相と大臣が『天国への階段』を手に入れるための行動を起こした。
なんと、『天国への階段』を管理する貴族を賊の仕業と見せかけて襲ったのだ。
その話を聞きつけた私は、すぐさま国王に対し抗議した。
そんな短絡的な真似をして、『天国への階段』が入手できなくなってしまったらどうするのかと。
国王曰く対応に問題はないとは言うが、到底信用できない。
それから何の進展もなく、私は王都で悶々とした日々を過ごしていると、ある日突然、状況が動いた。
それが……壊れてしまった筈の、一人の少女の復活だった。
0
あなたにおすすめの小説
妻からの手紙~18年の後悔を添えて~
Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。
妻が死んで18年目の今日。
息子の誕生日。
「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」
息子は…17年前に死んだ。
手紙はもう一通あった。
俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。
------------------------------
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
友人(勇者)に恋人も幼馴染も取られたけど悔しくない。 だって俺は転生者だから。
石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていた魔法戦士のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもない状態だった。
だが、此の状態は彼にとっては『本当の幸せ』を掴む事に必要だった
何故なら、彼は『転生者』だから…
今度は違う切り口からのアプローチ。
追放の話しの一話は、前作とかなり似ていますが2話からは、かなり変わります。
こうご期待。
無能なので辞めさせていただきます!
サカキ カリイ
ファンタジー
ブラック商業ギルドにて、休みなく働き詰めだった自分。
マウントとる新人が入って来て、馬鹿にされだした。
えっ上司まで新人に同調してこちらに辞めろだって?
残業は無能の証拠、職務に時間が長くかかる分、
無駄に残業代払わせてるからお前を辞めさせたいって?
はいはいわかりました。
辞めますよ。
退職後、困ったんですかね?さあ、知りませんねえ。
自分無能なんで、なんにもわかりませんから。
カクヨム、なろうにも同内容のものを時差投稿しております。
バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します
namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。
マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。
その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。
「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。
しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。
「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」
公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。
前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。
これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。
お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます
菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。
嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。
「居なくていいなら、出ていこう」
この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし
三十年後に届いた白い手紙
RyuChoukan
ファンタジー
三十年前、帝国は一人の少年を裏切り者として処刑した。
彼は最後まで、何も語らなかった。
その罪の真相を知る者は、ただ一人の女性だけだった。
戴冠舞踏会の夜。
公爵令嬢は、一通の白い手紙を手に、皇帝の前に立つ。
それは復讐でも、告発でもない。
三十年間、辺境の郵便局で待ち続けられていた、
「渡されなかった約束」のための手紙だった。
沈黙のまま命を捨てた男と、
三十年、ただ待ち続けた女。
そして、すべてを知った上で扉を開く、次の世代。
これは、
遅れて届いた手紙が、
人生と運命を静かに書き換えていく物語。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる