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幕間④
聖女が導くべき路②
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■ソフィア=アルベルティーニ視点
ジャックさんからもたらされた情報は、カートレット伯爵一家を襲った百名近い実行犯達が、突如行方不明になったというものだった。
しかも、両腕と両脚をもがれ、左眼を失い、壊れてしまった少女が五体満足で公式の場に現れ、正式にカートレット伯爵家を継承する旨の申請が王国にあったとも。
そして、王国としてもこれを認めない訳にはいかず、正式に継承を承認したとのことだ。
だけど……私にはそれが到底信じられなかった。
私の【神の癒し】でさえ、失った体の一部を元通りにすることは不可能なのに、その少女……ライラ=カートレットは両腕と両脚を取り戻した。
そんなことができるのは、言ってしまえば神のみ……。
私はジャックさんに引き続きライラ=カートレットの情報を探らせると共に、国王にも彼女についての情報を提供するよう求めたが、王国は全く情報をつかんでいない状況だった。
まあ、楽観視していた宰相と大臣が、情報収集を怠っていたことが原因ではあるが。
王国の宰相と大臣の無能ぶりに思わず溜息を吐く私だったが、その一か月後、また新たな動きがあった。
今度はその大臣の軍勢五千が、なんとライラ=カートレットとその一味によって壊滅したというのだ。
もちろん、大臣も一緒に。
ジャックに詳しく尋ねると、何でもライラ=カートレット側は軍勢を持ち合わせていないとのこと。
つまり彼女を含め、たった数人で五千もの軍勢を死に追いやったということだ。
到底信じられない私は、その真偽を確かめる上でも王宮に赴いた。
ちょうどそのことについて国王と数名が謁見の間で議論をしていたので聞き耳を立てていると、やはりジャックの情報は真実だったようだ。
そんな私の様子を見ていたジャックは、『な? だから言っただろ?』とニヤニヤしながらそう言った。
私はタイミングを見計らって謁見の間に入ると、国王と一緒にいた貴族達は[聖女]である私がここにいることに驚きを隠せない様子でいたが、そんなことはどうでもいい。
私にとって重要なのは『天国への階段』を無事入手し、そして、世界中の人々を神の下平等へと導くこと。
……ライラ=カートレットのことが気にならないと言えば嘘になるが、それでも、やはり最優先は『天国への階段』。
ただ、それだけだ。
◇
「はあ……私の望みは、それだけだったのですが……」
王都にあるファルマ聖教会の一室で、私は思わず溜息を吐く。
「クハ! なんだい聖女様、そんなにあの男が気になるのかい?」
いつの間にか私の部屋に入って来ていたジャックさんが、揶揄うようにそんなことを言った。
「……ジャックさん、許可もなく勝手に女性の部屋に入っては意中の人にも嫌われてしまいますよ?」
「クハハ、手厳しいねえ……」
私がジト目でそう指摘すると、ジャックさんは苦笑しながら頭を掻いた。
普段の彼らしからぬ反応に思わず面喰ってしまうが、それを面に出す程、私も馬鹿じゃない。
それに、彼の指摘も的を射ているから、何も言い返せないのも事実なのだから。
大臣とその軍勢がライラ=カートレットに壊滅させられた後、私はジャックさんを使ってあらゆる情報を仕入れた。
ライラ=カートレットのこと。
侍女であるハンナという女性のこと。
そして……アデルという元冒険者のこと。
彼は、アイザックの街では“役立たず”とパーティーの仲間達から罵られ、三か月前に追放されていた。
その後、カートレット伯爵家が冒険者ギルドに出した依頼を受け、そこで初めてライラ=カートレットとの接点が生まれたようだ。
それからは侍女と一緒に常にライラ=カートレットに付き従い、大臣の軍勢が壊滅した時も彼はその場にいたことは確認している。
その後、彼女達の監視をしていたジャックさんとひょんなことから遭遇したらしい。
その時のことをジャックさんから伺った時は、思わず耳を疑った。
だって……その彼が、床からいくつもの壁を創り出したというのだから。
そして、ジャックさんから告げられた言葉。
ライラ=カートレットの手脚は、その彼が創り出したかのではないか、ということ。
胸が躍った。心が震えた。
彼は、まさに[聖女]である私と同格……いや、それ以上の存在だったのだから。
その後、無能な宰相がなす術もなくライラ=カートレット達に王宮で壊滅させられたのがつい数日前。
その際も、彼は王宮の敷地内に要塞を建造し、そして無に帰した。
もはや彼の能力に疑いの余地はない。
今回は私も、王宮内でその様子を目の当たりにしたのだから。
「ああ……アデル様……」
私はあの時の彼……アデル様の御業を思い出し、つい恍惚の表情を浮かべてしまう。
だけど、これは仕方ない。
何故なら……創造主たるアデル様こそ、[聖女]であるこの私がまさにその生涯を捧げるべき御方なのだから……。
「クハハ! 完全に恋する女の顔してるぜ?」
「……うるさいですね。あなたこそ、そのほうが都合が良いでしょうに……」
「ク、クハ……ま、まあ違えねえ……」
全く……結局は自分に返って来るのだから、余計なことは言わなければよいのに。
まあいい。とにかく私は、アデル様に近づくために色々と手を打った。
アデル様が以前いたパーティーである“黄金の旋風”と元彼女の所在を突き止め、私の護衛として雇い入れて傍に置いた。
アルグレア国王にも、私が単独でアイザックの街に向かうことについても了解を取りつけた。
そして……アデル様が王都を発つ前に、私という女の存在を印象付けた。
隣にいたライラ=カートレットと侍女は邪魔で仕方なかったが、それは私がアイザックの街に着いてから排除するとしよう。
そのために、元彼女やパーティーを雇い入れたのだから。
「ふふ……アデル様……アデル様あ……!」
アデル様……現世に舞い降りた私の主。
——このソフィアめが、あなたのお傍に参ります。
ジャックさんからもたらされた情報は、カートレット伯爵一家を襲った百名近い実行犯達が、突如行方不明になったというものだった。
しかも、両腕と両脚をもがれ、左眼を失い、壊れてしまった少女が五体満足で公式の場に現れ、正式にカートレット伯爵家を継承する旨の申請が王国にあったとも。
そして、王国としてもこれを認めない訳にはいかず、正式に継承を承認したとのことだ。
だけど……私にはそれが到底信じられなかった。
私の【神の癒し】でさえ、失った体の一部を元通りにすることは不可能なのに、その少女……ライラ=カートレットは両腕と両脚を取り戻した。
そんなことができるのは、言ってしまえば神のみ……。
私はジャックさんに引き続きライラ=カートレットの情報を探らせると共に、国王にも彼女についての情報を提供するよう求めたが、王国は全く情報をつかんでいない状況だった。
まあ、楽観視していた宰相と大臣が、情報収集を怠っていたことが原因ではあるが。
王国の宰相と大臣の無能ぶりに思わず溜息を吐く私だったが、その一か月後、また新たな動きがあった。
今度はその大臣の軍勢五千が、なんとライラ=カートレットとその一味によって壊滅したというのだ。
もちろん、大臣も一緒に。
ジャックに詳しく尋ねると、何でもライラ=カートレット側は軍勢を持ち合わせていないとのこと。
つまり彼女を含め、たった数人で五千もの軍勢を死に追いやったということだ。
到底信じられない私は、その真偽を確かめる上でも王宮に赴いた。
ちょうどそのことについて国王と数名が謁見の間で議論をしていたので聞き耳を立てていると、やはりジャックの情報は真実だったようだ。
そんな私の様子を見ていたジャックは、『な? だから言っただろ?』とニヤニヤしながらそう言った。
私はタイミングを見計らって謁見の間に入ると、国王と一緒にいた貴族達は[聖女]である私がここにいることに驚きを隠せない様子でいたが、そんなことはどうでもいい。
私にとって重要なのは『天国への階段』を無事入手し、そして、世界中の人々を神の下平等へと導くこと。
……ライラ=カートレットのことが気にならないと言えば嘘になるが、それでも、やはり最優先は『天国への階段』。
ただ、それだけだ。
◇
「はあ……私の望みは、それだけだったのですが……」
王都にあるファルマ聖教会の一室で、私は思わず溜息を吐く。
「クハ! なんだい聖女様、そんなにあの男が気になるのかい?」
いつの間にか私の部屋に入って来ていたジャックさんが、揶揄うようにそんなことを言った。
「……ジャックさん、許可もなく勝手に女性の部屋に入っては意中の人にも嫌われてしまいますよ?」
「クハハ、手厳しいねえ……」
私がジト目でそう指摘すると、ジャックさんは苦笑しながら頭を掻いた。
普段の彼らしからぬ反応に思わず面喰ってしまうが、それを面に出す程、私も馬鹿じゃない。
それに、彼の指摘も的を射ているから、何も言い返せないのも事実なのだから。
大臣とその軍勢がライラ=カートレットに壊滅させられた後、私はジャックさんを使ってあらゆる情報を仕入れた。
ライラ=カートレットのこと。
侍女であるハンナという女性のこと。
そして……アデルという元冒険者のこと。
彼は、アイザックの街では“役立たず”とパーティーの仲間達から罵られ、三か月前に追放されていた。
その後、カートレット伯爵家が冒険者ギルドに出した依頼を受け、そこで初めてライラ=カートレットとの接点が生まれたようだ。
それからは侍女と一緒に常にライラ=カートレットに付き従い、大臣の軍勢が壊滅した時も彼はその場にいたことは確認している。
その後、彼女達の監視をしていたジャックさんとひょんなことから遭遇したらしい。
その時のことをジャックさんから伺った時は、思わず耳を疑った。
だって……その彼が、床からいくつもの壁を創り出したというのだから。
そして、ジャックさんから告げられた言葉。
ライラ=カートレットの手脚は、その彼が創り出したかのではないか、ということ。
胸が躍った。心が震えた。
彼は、まさに[聖女]である私と同格……いや、それ以上の存在だったのだから。
その後、無能な宰相がなす術もなくライラ=カートレット達に王宮で壊滅させられたのがつい数日前。
その際も、彼は王宮の敷地内に要塞を建造し、そして無に帰した。
もはや彼の能力に疑いの余地はない。
今回は私も、王宮内でその様子を目の当たりにしたのだから。
「ああ……アデル様……」
私はあの時の彼……アデル様の御業を思い出し、つい恍惚の表情を浮かべてしまう。
だけど、これは仕方ない。
何故なら……創造主たるアデル様こそ、[聖女]であるこの私がまさにその生涯を捧げるべき御方なのだから……。
「クハハ! 完全に恋する女の顔してるぜ?」
「……うるさいですね。あなたこそ、そのほうが都合が良いでしょうに……」
「ク、クハ……ま、まあ違えねえ……」
全く……結局は自分に返って来るのだから、余計なことは言わなければよいのに。
まあいい。とにかく私は、アデル様に近づくために色々と手を打った。
アデル様が以前いたパーティーである“黄金の旋風”と元彼女の所在を突き止め、私の護衛として雇い入れて傍に置いた。
アルグレア国王にも、私が単独でアイザックの街に向かうことについても了解を取りつけた。
そして……アデル様が王都を発つ前に、私という女の存在を印象付けた。
隣にいたライラ=カートレットと侍女は邪魔で仕方なかったが、それは私がアイザックの街に着いてから排除するとしよう。
そのために、元彼女やパーティーを雇い入れたのだから。
「ふふ……アデル様……アデル様あ……!」
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