隊長さんとボク

ばたかっぷ

文字の大きさ
11 / 16

十一話

しおりを挟む
隊長さんの声だっ!どうして隊長さんがこんな所に!?でもボクが隊長さんの声を聞き間違えるはずがない。

「きゅきゅきゅーっ!(隊長さーんっ!ボクはここだようっ!)」

滝の水音に負けないように精一杯叫ぶ!

「エナっ!滝の向こうかっ?」

ボクの声が届いたのか、直ぐに隊長さんが水飛沫を上げて飛びこんで来てくれた。

「エナっ!無事かっ?怪我はないか!?」

「きゅうーっ!(隊長さん隊長さあーん!)」

「無事で良かった。どうしてこんな所に来たんだい?さあ帰ろう、ここは長くいてはいけない所だ」

やっぱりここは良くない場所だったんだ…。
はっ!そうだっ!ハイカは!?

「きゅっ!きゅーっ!(隊長さんハイカがハイカがっ!)」

ハイカの傍に近付いて叫ぶと、隊長さんが膝を折りハイカの様子を診てくれた。

「…これは不味いな…、早く医者に診せないと…。行くぞエナっ!」

「きゅっ!(うんっ!)」

『待ちや…、誰の許しを得てそやつらを連れて行くつもりじゃ』

ハイカを抱き上げた隊長さんとボクに向けて、怒りを滲ませた精霊の声が木霊する。

「…何の声だ?」

『その童子と我は契約を結んだ。人の子風情が勝手な真似をするでないっ!』

声と共に洞窟の中にいかづちが飛び散り、ボク達は岩肌に叩きつけられた。

「きゅう~っ」

「…くっ、大丈夫かエナ」

『邪魔をするなと言っておるであろ?まったくこれだから人間は…幼子よ。早く我を解放せよ、さもなくばその童子と同じようにその人の子の命も頂くぞ?』

精霊がそう言った途端、隊長さんが喉を押さえて苦しみ始めた。

「…くっ、か…っは…」

「きゅーっ!(隊長さんっ!やめてやめてよっ!どうしてこんなことするのっ!)」

『我を解放しさえすれば、直ぐに止めてやるよ?幼子次第じゃさあ早ようせい!』

「きゅっきゅきゅー!(解放ってボクにはそんなのどうしたらいいのかなんて分からないよっ!)」

『なにそなたならば容易い事じゃ、心から願うだけで良い』

「きゅ…(願う…?)」

『そうじゃ、この石に手をついて心から願えば叶う』


心から願う…?


「きゅう…(ひとつだけ教えて…貴方は解放されたらどうしたいの)」

『むろん我は我の好きなようにするさ』

「きゅう…?(例えばいまみたいなこと?)」

『我を閉じ込めた人間共への礼は欠かさぬよ、手始めにここいら一帯を闇で焼き尽くしてやろうかの』

洞窟に精霊の甲高い笑い声が木霊する。

「きゅう…(それは何のためにするの?)」

『勿論我が楽しむために決まっておろ?この世界は我が楽しむ為にこそ存在する』

「きゅう…っ(自分の為だけに、今みたいに人を苦しめるんだ…)」

『だから何じゃ、そんな事より早くせねば童子もその人の子も死ぬぞえ』

ハイカも隊長さんも顔色が土気色になって来ている…。もう迷っている時間はない。


「きゅっ…(分かった…)」


一歩、秘石の前に踏みだす。
一歩、また一歩…


そうして秘石を見上げて、精霊が言ったように願いを心に思い浮かべた。


しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

炎の精霊王の愛に満ちて

陽花紫
BL
異世界転移してしまったミヤは、森の中で寒さに震えていた。暖をとるために焚火をすれば、そこから精霊王フレアが姿を現す。 悪しき魔術師によって封印されていたフレアはその礼として「願いをひとつ叶えてやろう」とミヤ告げる。しかし無欲なミヤには、願いなど浮かばなかった。フレアはミヤに欲望を与え、いまいちど願いを尋ねる。 ミヤは答えた。「俺を、愛して」 小説家になろうにも掲載中です。

王弟の恋

結衣可
BL
「狼の護衛騎士は、今日も心配が尽きない」のスピンオフ・ストーリー。 戦時中、アルデンティア王国の王弟レイヴィスは、王直属の黒衣の騎士リアンと共にただ戦の夜に寄り添うことで孤独を癒やしていたが、一度だけ一線を越えてしまう。 しかし、戦が終わり、レイヴィスは国境の共生都市ルーヴェンの領主に任じられる。リアンとはそれきり疎遠になり、外交と再建に明け暮れる日々の中で、彼を思い出すことも減っていった。 そして、3年後――王の密命を帯びて、リアンがルーヴェンを訪れる。 再会の夜、レイヴィスは封じていた想いを揺さぶられ、リアンもまた「任務と心」の狭間で揺れていた。 ――立場に縛られた二人の恋の行方は・・・

末っ子王子は婚約者の愛を信じられない。

めちゅう
BL
 末っ子王子のフランは兄であるカイゼンとその伴侶であるトーマの結婚式で涙を流すトーマ付きの騎士アズランを目にする。密かに慕っていたアズランがトーマに失恋したと思いー。 お読みくださりありがとうございます。

神獣様の森にて。

しゅ
BL
どこ、ここ.......? 俺は橋本 俊。 残業終わり、会社のエレベーターに乗ったはずだった。 そう。そのはずである。 いつもの日常から、急に非日常になり、日常に変わる、そんなお話。 7話完結。完結後、別のペアの話を更新致します。

手切れ金

のらねことすていぬ
BL
貧乏貴族の息子、ジゼルはある日恋人であるアルバートに振られてしまう。手切れ金を渡されて完全に捨てられたと思っていたが、なぜかアルバートは彼のもとを再び訪れてきて……。 貴族×貧乏貴族

聖女召喚の巻き添えで喚ばれた「オマケ」の男子高校生ですが、魔王様の「抱き枕」として重宝されています

八百屋 成美
BL
聖女召喚に巻き込まれて異世界に来た主人公。聖女は優遇されるが、魔力のない主人公は城から追い出され、魔の森へ捨てられる。 そこで出会ったのは、強大な魔力ゆえに不眠症に悩む魔王。なぜか主人公の「匂い」や「体温」だけが魔王を安眠させることができると判明し、魔王城で「生きた抱き枕」として飼われることになる。

もう一度、その腕に

結衣可
BL
もう一度、その腕に

貴族軍人と聖夜の再会~ただ君の幸せだけを~

倉くらの
BL
「こんな姿であの人に会えるわけがない…」 大陸を2つに分けた戦争は終結した。 終戦間際に重症を負った軍人のルーカスは心から慕う上官のスノービル少佐と離れ離れになり、帝都の片隅で路上生活を送ることになる。 一方、少佐は屋敷の者の策略によってルーカスが死んだと知らされて…。 互いを思う2人が戦勝パレードが開催された聖夜祭の日に再会を果たす。 純愛のお話です。 主人公は顔の右半分に火傷を負っていて、右手が無いという状態です。 全3話完結。

処理中です...