隊長さんとボク

ばたかっぷ

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十話

『やれ嬉しや、忌々しい呪法がやっと解けたわ』

声は洞窟の中に木霊するけれど、姿はどこにもない。

『我の戒めを解いたのはそなたか?神獣の幼子よ」

「きゅ…(う、うん…)」

『ほう…、そなたのその毛並み…。なるほど、そなたの力であれば呪符など容易い事よの』

なにを言われているのか分からないけど、なんだか嫌な感じがする。

これはもしかしたら秘石の精霊の声?

『我を解放しに来てくれたのであろ?呪符を剥がしてくれたおかげで話しが出来る。さあこの忌々しい石を壊しておくれ』

「きゅ…(壊したらどうなるの?)」

『我はここから解放されて自由になれるのじゃ、もう三百年もの長き時をここで過ごした。幼子よどうか我を解き放っておくれ』

「きゅう…(でも…)」

本当にこの精霊さんは解放していい人なんだろうか?さっきからする嫌な感じが、どうしてもボクに頷くことを拒ませる。

「石を壊して解放したら、オレ達に力を分けてくれるか!?」

いままで黙っていたハイカが突然、秘石の精霊に向かって叫んだ。

『力が欲しいのかえ?』

「そうだ!オレに炎の加護の力を与えてくれっ!オレは強い神獣になりたいんだっ」

『ふふっ良かろうよ、約束しよう。ただし代償は頂くよ?』

…代償…?

「エナ!早く秘石を壊して精霊を出して力を分けて貰おうぜっ。そろそろ帰らないとセレンやチビ達に心配かけちまう」

そうだボクも夕方までには帰らないとシーグさんが心配しちゃう。それでなくても最近ずっと心配かけちゃってるのに、これ以上心配させたくないよ。

『さあ幼子よ、早くやっておくれ』

精霊がボクに囁くハイカも早く早くと急かすけど、どうしてもこの精霊を外に出すのは躊躇われた。

「…きゅうっ!(ハイカ!やっぱりよそう?他の方法を探そうよ)」

「はあっ?なに言ってるんだよ!解放させれば加護の力を与えてくれるって約束してくれたんだぞっ」

「きゅきゅっ!(でも駄目だっ!この精霊には頼っちゃいけない気がするんだ)」

「なに訳わかんない事を言ってるんだよ!」

ハイカと言い争いになる。だけどどうしても駄目だって、ボクの中のなにかが叫ぶんだ。

『…幼子よ。我を解き放ってくれぬのなら、今ここで代償を頂くよ?』

暗く冷たい響きを帯びた精霊の声が木霊した次の瞬間、ボク達は岩肌に叩きつけられた。

「きゅうっ!(痛っ!)」

『さあ早く我を解放せぬかさもなくばもっと苦しむ事になるぞよ?』

「ぐ…っあああああ~っ!」

「きゅーっ!?(ハイカっ!?)」

精霊の冷たい声が木霊した途端、急にハイカが苦しみだした。

「きゅきゅ~っ!(ハイカ!ハイカしっかりしてっ!)」

「くあああ……っ!」

ハイカは体を丸めて苦しそうに震えている。吐く息が短い。

「きゅきゅーっ!(ハイカに一体なにをしたの!?)」

『そやつは先ほど我と約束を交わした。交わされた約束は契約と同じ意味を持つ。契約が果たされなんだら命を頂くそれが代償じゃ』

「きゅーっ!(ハイカは約束をしただけで貴方から何も受け取っていない!そんな契約は成立しないっ)」

『それはそちらの理屈、我には我の理屈がある。さあ幼子よ、早く我を解放せよ。さもなくばその童わらしは死ぬぞえ』

ハイカの息が段々短くなってきている。このままじゃ本当にハイカが死んじゃう…。

でもこの精霊は絶対に外に出しちゃいけない…。この谷が暗く薄暗いのは、きっとこの精霊の気が満ちているからだ。

封印されていて尚こんなに邪気を放つ精霊を解放してしまったら、どんな恐ろしい事になるかわからない。

『さあ…幼子よ早ようせい』

ああ…ハイカ…どうしようこんなことになるなんて。

「きゅう…(隊長さん…)」

ボクが思わず隊長さんの名前を呼んだ。そのとき――

「エナーっ!エナっ、ここにいるのか!?いるのなら返事をしてくれっ!!」


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