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学園編 17歳
74 ピクニックへ行きましょう
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夏休みが始まって一週間が過ぎたころ、エリーナはバレンティア公爵家の馬車に揺られて王都の外れにある丘に向かっていた。手紙にはエリーナがメロメロの双子と一緒にピクニックへ行かないかというお誘いだったのだ。可愛い双子に会えるとあって、エリーナは迷うことなく返事を書いた。そして今、幸せの温かさに溺れている。
「お姉さま~。ローズ、今日のことずっと楽しみにしてたのよ」
ピンクのドレスを着たローズはエリーナの右側に抱き着き甘える。
「リリーも、ワクワクしてたの」
水色のドレスを着たリリーは左側で頬を摺り寄せていた。ここは天国だ。
「わたくしも、楽しみでしたわ」
頬が緩みまくり、顔がとろける。先ほどからずっとこの調子で、着くまでに可愛さのあまり死にそうだ。三人の向かいに座っているルドルフは目を細め、嬉しそうに笑った。
「楽しみにしてくれて嬉しいよ。今日は存分に楽しんでほしい」
ルドルフの笑みを見ていると、双子に釣られたのではと悔しく思うが、可愛い双子に罪は無い。利用する兄ルドルフが悪い。
「俺としては、二人で自然のきれいな場所にでも行こうかと思ったんだが、二人がうるさくてな」
呆れ顔のルドルフに対し、双子は一斉に顔を向けプクリと頬を膨らませて抗議する。
「お姉さまを独り占めなんて許さないから!」とローズ。
「そうよ。お兄さまには負けないんだから!」とリリー。
「何を言っている。俺の気持ちが一番強いに決まっているだろ」
そんなやりとりを微笑を浮かべて流していると、目的の丘に着いた。従者が馬車の扉を開き、双子が飛び出す。
「わ~! お花がいっぱ~い!」
「きれ~い!」
丘は一面に小さな花が咲いており、丘の頂上には大きな木が立っていた。心の落ち着く風景に、馬車から降りたエリーナも目を奪われる。双子は従者に見守られる中、走り回っていた。
「エリーナ、行こうか」
さりげなく手を取られ、エスコートをされる。その優美で自然なふるまいはさすがルドルフ。侍女たちは手早く木陰にシートを敷き、サイドテーブルを立てて茶器の準備をする。双子はなかなかお転婆であり、丘を転がって遊んでいた。
シートに座ったエリーナは、心地よい風を感じながら双子たちを目で追う。二人は時々こちらに手を振っては、花摘みに夢中になっていた。なんだかんだ言っても、まだ六歳の女の子だ。
「エリーナ嬢。こうやって一緒にいると、心が安らぐ……不思議なものだな。このまま連れ帰ってしまいたくなる」
隣に座るルドルフは耳をくすぐる美声でそう呟き、エリーナに微笑みかけた。その大人っぽい魅力に、恋愛レベルの低いエリーナも頬を染める。破壊力に心臓が負けそうだ。
「ルドルフ様……からかわないでください」
「からかってなどいない。エリーナ嬢が手に入るなら、魔王にだって魂を売るさ」
そういたずらっぽく笑うルドルフのほうが、腹黒い魔王に見える。いや、魔王の参謀か。
「魔王ってなんですか」
「流行りの小説によく出てくるだろう。ああいう騎士物語や勇者物語は子どものころよく読んでいたよ」
意外とルドルフは娯楽小説もよく読んでおり、いくつか挙げられた本の題名はエリーナも知っているものだった。
そしてお茶を飲みながら他愛のない話をしていると、ふとルドルフがエリーナを見つめて言葉を漏らす。
「もうすぐ卒業だと思うと、名残惜しいな」
三年生であるルドルフは今年で卒業だ。そして卒業式は冬であり、春までの期間は学術院試験への勉強や仕官、領地経営などの準備期間などに当てられる。
「あっと言う間でしたね。ルドルフ様は、卒業後は学術院に進まれるのですよね」
「あぁ。宰相を目指しているからな」
眼鏡を光らせて不敵に笑っており、余裕で宰相になれそうだ。ジークも心強いだろう。
「ルドルフ様ならなれますよ」
「あぁ。学術院に移っても、学園に顔を見に行く。どうせ、ジーク様の世話もあるからな」
学術院と学園は隣接しているため、行き来は自由だ。そしてこれから試験だというのに、合格することが前提となっている。
「あら、殿下は嫌がりそうですわ」
うっとうしがるジークを想い浮かべ、二人は顔を見合わせてクスクスと笑った。
そしてそこに、双子が突撃してくる。
「お姉さま~! ティアラ作ったの!」
「リリーも!」
二人は顔を輝かせて、その手にあるものをエリーナに見せる。ローズの手には黄色い花が集められた花輪が、リリーの手にはピンクの花が集められた花輪があった。器用に作られている。
「まぁ、とてもきれいね」
エリーナはパッと喜びに表情を明るくし、乗せたそうにしていたので頭を差し出した。二人がそっとエリーナの頭の上に花輪を置く。
「かわいい~」
「天使みたい」
二人は満足そうに笑い、シートの上に座った。侍女に果実水をもらって、休憩している。頭の上に二つの花輪を載せたエリーナを見て、ルドルフは表情を蕩けさせた。その甘い笑顔に、エリーナは気恥ずかしくなる。
「エリーナ。よく似合っているよ。このまま閉じ込めてしまいたくなる」
その言葉に双子が同時に顔を上げ、瞬いて兄を見つめている。引いたのかなとエリーナが少し心配になったが、二人は目を輝かせて弾んだ声を上げた。
「お兄さま天才! そうしたら、お姉さまとずっといっしょにいられるわ!」
「リリーもそう思う!」
「やめてください!」
子どもと言うのは純粋がゆえに恐ろしい。この二人だけは腹黒さを受け継がずに、純粋に育ってほしい。必死に止めるエリーナを見て、ルドルフは声をあげて笑った。それにつられて双子も笑いだす。
「もう。バレンティア家は意地悪の塊ですか!」
少し膨れてそっぽを向けば、すぐに双子がしがみついて来て瞳を揺らし、上目遣いで攻めてくる。
「お姉さま~。ごめんね~」とローズ。
「お姉様さま~。許して~」とリリー。
これには陥落せざるをえない。
「分かればいいんです」
そう言って二人の頭を撫でれば、嬉しそうにひっつく。そしてしばらくすると、エリーナの膝を枕に寝息を立て始めたのだった。
「あら、寝ちゃったわ」
「あれだけはしゃげば、眠くもなる」
ざわっと風が吹き、木の葉を揺らす。ルドルフの紫色の瞳が細められ、口角が上がった。エリーナを守ってくれる可愛い天使は仲良くお休み中だ。
「エリーナ。ティアラをしていると、物語のお姫様みたいだな」
そう妖艶な笑みを浮かべたルドルフは体をすっと近づけてきた。彼の整った顔が近づき、逃げようにも双子がいるため動けない。
「俺は、物語の勇者になれるか?」
耳元で甘い声が聞こえたと思えば、頬に何かが触れた。やわらかくしっとりした感触。その正体に気づいたのは、ルドルフが離れた後だった。一気に顔が熱くなり、朱に染まる。
「ル、ルドルフ様!」
「ははは、可愛いエリーナが悪い。多少は強引な手も使わなければな」
「ルドルフ様の馬鹿!」
さらに赤くなったエリーナは、その後双子が起きるまで一切ルドルフと口を利かなかった。目を覚ました双子に顔が赤いと不思議がられたが、気のせいだと言い張った。
そして帰りの馬車でも双子に挟まれ、幸せな気分のままエリーナはピクニックデートを終えたのだった……。
「お姉さま~。ローズ、今日のことずっと楽しみにしてたのよ」
ピンクのドレスを着たローズはエリーナの右側に抱き着き甘える。
「リリーも、ワクワクしてたの」
水色のドレスを着たリリーは左側で頬を摺り寄せていた。ここは天国だ。
「わたくしも、楽しみでしたわ」
頬が緩みまくり、顔がとろける。先ほどからずっとこの調子で、着くまでに可愛さのあまり死にそうだ。三人の向かいに座っているルドルフは目を細め、嬉しそうに笑った。
「楽しみにしてくれて嬉しいよ。今日は存分に楽しんでほしい」
ルドルフの笑みを見ていると、双子に釣られたのではと悔しく思うが、可愛い双子に罪は無い。利用する兄ルドルフが悪い。
「俺としては、二人で自然のきれいな場所にでも行こうかと思ったんだが、二人がうるさくてな」
呆れ顔のルドルフに対し、双子は一斉に顔を向けプクリと頬を膨らませて抗議する。
「お姉さまを独り占めなんて許さないから!」とローズ。
「そうよ。お兄さまには負けないんだから!」とリリー。
「何を言っている。俺の気持ちが一番強いに決まっているだろ」
そんなやりとりを微笑を浮かべて流していると、目的の丘に着いた。従者が馬車の扉を開き、双子が飛び出す。
「わ~! お花がいっぱ~い!」
「きれ~い!」
丘は一面に小さな花が咲いており、丘の頂上には大きな木が立っていた。心の落ち着く風景に、馬車から降りたエリーナも目を奪われる。双子は従者に見守られる中、走り回っていた。
「エリーナ、行こうか」
さりげなく手を取られ、エスコートをされる。その優美で自然なふるまいはさすがルドルフ。侍女たちは手早く木陰にシートを敷き、サイドテーブルを立てて茶器の準備をする。双子はなかなかお転婆であり、丘を転がって遊んでいた。
シートに座ったエリーナは、心地よい風を感じながら双子たちを目で追う。二人は時々こちらに手を振っては、花摘みに夢中になっていた。なんだかんだ言っても、まだ六歳の女の子だ。
「エリーナ嬢。こうやって一緒にいると、心が安らぐ……不思議なものだな。このまま連れ帰ってしまいたくなる」
隣に座るルドルフは耳をくすぐる美声でそう呟き、エリーナに微笑みかけた。その大人っぽい魅力に、恋愛レベルの低いエリーナも頬を染める。破壊力に心臓が負けそうだ。
「ルドルフ様……からかわないでください」
「からかってなどいない。エリーナ嬢が手に入るなら、魔王にだって魂を売るさ」
そういたずらっぽく笑うルドルフのほうが、腹黒い魔王に見える。いや、魔王の参謀か。
「魔王ってなんですか」
「流行りの小説によく出てくるだろう。ああいう騎士物語や勇者物語は子どものころよく読んでいたよ」
意外とルドルフは娯楽小説もよく読んでおり、いくつか挙げられた本の題名はエリーナも知っているものだった。
そしてお茶を飲みながら他愛のない話をしていると、ふとルドルフがエリーナを見つめて言葉を漏らす。
「もうすぐ卒業だと思うと、名残惜しいな」
三年生であるルドルフは今年で卒業だ。そして卒業式は冬であり、春までの期間は学術院試験への勉強や仕官、領地経営などの準備期間などに当てられる。
「あっと言う間でしたね。ルドルフ様は、卒業後は学術院に進まれるのですよね」
「あぁ。宰相を目指しているからな」
眼鏡を光らせて不敵に笑っており、余裕で宰相になれそうだ。ジークも心強いだろう。
「ルドルフ様ならなれますよ」
「あぁ。学術院に移っても、学園に顔を見に行く。どうせ、ジーク様の世話もあるからな」
学術院と学園は隣接しているため、行き来は自由だ。そしてこれから試験だというのに、合格することが前提となっている。
「あら、殿下は嫌がりそうですわ」
うっとうしがるジークを想い浮かべ、二人は顔を見合わせてクスクスと笑った。
そしてそこに、双子が突撃してくる。
「お姉さま~! ティアラ作ったの!」
「リリーも!」
二人は顔を輝かせて、その手にあるものをエリーナに見せる。ローズの手には黄色い花が集められた花輪が、リリーの手にはピンクの花が集められた花輪があった。器用に作られている。
「まぁ、とてもきれいね」
エリーナはパッと喜びに表情を明るくし、乗せたそうにしていたので頭を差し出した。二人がそっとエリーナの頭の上に花輪を置く。
「かわいい~」
「天使みたい」
二人は満足そうに笑い、シートの上に座った。侍女に果実水をもらって、休憩している。頭の上に二つの花輪を載せたエリーナを見て、ルドルフは表情を蕩けさせた。その甘い笑顔に、エリーナは気恥ずかしくなる。
「エリーナ。よく似合っているよ。このまま閉じ込めてしまいたくなる」
その言葉に双子が同時に顔を上げ、瞬いて兄を見つめている。引いたのかなとエリーナが少し心配になったが、二人は目を輝かせて弾んだ声を上げた。
「お兄さま天才! そうしたら、お姉さまとずっといっしょにいられるわ!」
「リリーもそう思う!」
「やめてください!」
子どもと言うのは純粋がゆえに恐ろしい。この二人だけは腹黒さを受け継がずに、純粋に育ってほしい。必死に止めるエリーナを見て、ルドルフは声をあげて笑った。それにつられて双子も笑いだす。
「もう。バレンティア家は意地悪の塊ですか!」
少し膨れてそっぽを向けば、すぐに双子がしがみついて来て瞳を揺らし、上目遣いで攻めてくる。
「お姉さま~。ごめんね~」とローズ。
「お姉様さま~。許して~」とリリー。
これには陥落せざるをえない。
「分かればいいんです」
そう言って二人の頭を撫でれば、嬉しそうにひっつく。そしてしばらくすると、エリーナの膝を枕に寝息を立て始めたのだった。
「あら、寝ちゃったわ」
「あれだけはしゃげば、眠くもなる」
ざわっと風が吹き、木の葉を揺らす。ルドルフの紫色の瞳が細められ、口角が上がった。エリーナを守ってくれる可愛い天使は仲良くお休み中だ。
「エリーナ。ティアラをしていると、物語のお姫様みたいだな」
そう妖艶な笑みを浮かべたルドルフは体をすっと近づけてきた。彼の整った顔が近づき、逃げようにも双子がいるため動けない。
「俺は、物語の勇者になれるか?」
耳元で甘い声が聞こえたと思えば、頬に何かが触れた。やわらかくしっとりした感触。その正体に気づいたのは、ルドルフが離れた後だった。一気に顔が熱くなり、朱に染まる。
「ル、ルドルフ様!」
「ははは、可愛いエリーナが悪い。多少は強引な手も使わなければな」
「ルドルフ様の馬鹿!」
さらに赤くなったエリーナは、その後双子が起きるまで一切ルドルフと口を利かなかった。目を覚ました双子に顔が赤いと不思議がられたが、気のせいだと言い張った。
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