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テーブルのお茶で喉を潤すと、コンウォールは静かに語り始めた。
「もともと、マールバラ王国代々の王たちは、愛する人を求めて、お忍びで各国を周っていたそうです。それは、生涯恵まれるお子はおひとり。それも自分が愛するたったひとりの伴侶の間にしか子はできないからだったと聞いております。マールバラ王国の最後の王となられたあの方もそうでした。
あれは…暦の上では春だと言うのに、雪が…雪が降って…とても寒かった日でした。あの方が、ここノーフォークにお見えになったのです。
【銀の匙】のような庶民が集う店で、あの紫色の髪と瞳を見て、マールバラ王だと知る者はおりません。ですが、情報は一つの武器だと思っておりました私は、あの紫を纏う方がどなたなのがすぐにわかりました。」
そう言って、コンウォールは目を瞑り
「今なら恐れ多くて、王様の前に出ることすら体が硬直致しますのに、あの頃の私は怖いもの知らずでしたから、一国の王に気安く聞いてしまったのです。
魔法で髪や瞳の色を変えられたら、 もっと自由に奥方様をお探しできますでしょうにと …。
今でも思い出します。
あの方は寂しそうな顔で、私の問いに仰られた。
『紫色の髪と瞳は、王たる者の魔法が、体の中にあるという印だ。 子ができ……時期が来ればその力…《王華》を引き継いでもらう。その時、ようやくこの髪の色と瞳の色から、いや重責から開放される。でも思ってしまうのだ。
わが子にこんな運命を授けていいのだろうかと…。
私には《王華》は呪いのように思える。親としては辛い。だが国の為にやらねばならない。だから私をマールバラ王と知っても!マールバラ王家の過酷な運命を知っても!私の愛を受け入れてくれる人を探したいんだ。共にこの運命を乗り越えてくれる人を……だからこの姿で見つけたい。』
マールバラ王国代々の王は、ある程度年齢を重ねたら、子が生まれるまでは、死ぬことも老いることもないそうです。国のためとはいえ…ある意味悲しいことです。
王がようやく人に戻れるのは…。
生まれた子に《王華》を渡した時だそうですが、自身が呪いとまで思う《王華》を愛しているのに…国の為に我が子を…犠牲にする。それを運命だと簡単に割り切れることは出来ず…お辛そうでした。」
コンウォールは目を伏せると、小さく息を吐き、またアークフリードに顔を向けた。
「…当時、私の店には違う名前がついておりましたが、 私自身、気に入っておりませんでしたから、 店名を変えようかと考えているときでした。」
そう言って、コンウォールはアークフリードを見た。
アークフリードはコンウォールが何を言いたいのかわかり、項垂れるように頷けば、コンウォールも頷き
「お察しの通り 【銀の匙】は、マールバラ王がつけてくださったのです。
銀の匙を赤子に贈るとその子は幸せになれる…銀の匙には幸福を招く力があるいう話に、王としては国の未来の為には必要なことだとは言え、父親として申し訳ない気持ちと幸福を祈る思いから、この店の名をつけられたのだと…当時、私はそう思っておりました。でもそれだけではなかったのです。……それは兄として妹への想いがあったのです。」
コンウォールの言葉にライドが、そしてアークフリードが「妹…」と口にして、怪訝な顔でコンウォールを見た。
コンウォールはふたりを見て目を細め
「生涯恵まれるお子はおひとり。それも自分が愛するたったひとりの伴侶の間にしか子はできない。
それは初代マールバラ王が後継争いを避けるために施した魔法だったとか、マールバラ王への呪詛だとか…なにが真実なのかはわかりませんが、何百年も間…マールバラの王には御子はおひとりだったのは事実。ですが…。」
コンウォールの周りの空気が張り詰めた気がした。
彼はゆっくりとまたアークフリードとライドを見て、口を開いた。
「……最後の王となられたあの方は双子だったのです。」
「もともと、マールバラ王国代々の王たちは、愛する人を求めて、お忍びで各国を周っていたそうです。それは、生涯恵まれるお子はおひとり。それも自分が愛するたったひとりの伴侶の間にしか子はできないからだったと聞いております。マールバラ王国の最後の王となられたあの方もそうでした。
あれは…暦の上では春だと言うのに、雪が…雪が降って…とても寒かった日でした。あの方が、ここノーフォークにお見えになったのです。
【銀の匙】のような庶民が集う店で、あの紫色の髪と瞳を見て、マールバラ王だと知る者はおりません。ですが、情報は一つの武器だと思っておりました私は、あの紫を纏う方がどなたなのがすぐにわかりました。」
そう言って、コンウォールは目を瞑り
「今なら恐れ多くて、王様の前に出ることすら体が硬直致しますのに、あの頃の私は怖いもの知らずでしたから、一国の王に気安く聞いてしまったのです。
魔法で髪や瞳の色を変えられたら、 もっと自由に奥方様をお探しできますでしょうにと …。
今でも思い出します。
あの方は寂しそうな顔で、私の問いに仰られた。
『紫色の髪と瞳は、王たる者の魔法が、体の中にあるという印だ。 子ができ……時期が来ればその力…《王華》を引き継いでもらう。その時、ようやくこの髪の色と瞳の色から、いや重責から開放される。でも思ってしまうのだ。
わが子にこんな運命を授けていいのだろうかと…。
私には《王華》は呪いのように思える。親としては辛い。だが国の為にやらねばならない。だから私をマールバラ王と知っても!マールバラ王家の過酷な運命を知っても!私の愛を受け入れてくれる人を探したいんだ。共にこの運命を乗り越えてくれる人を……だからこの姿で見つけたい。』
マールバラ王国代々の王は、ある程度年齢を重ねたら、子が生まれるまでは、死ぬことも老いることもないそうです。国のためとはいえ…ある意味悲しいことです。
王がようやく人に戻れるのは…。
生まれた子に《王華》を渡した時だそうですが、自身が呪いとまで思う《王華》を愛しているのに…国の為に我が子を…犠牲にする。それを運命だと簡単に割り切れることは出来ず…お辛そうでした。」
コンウォールは目を伏せると、小さく息を吐き、またアークフリードに顔を向けた。
「…当時、私の店には違う名前がついておりましたが、 私自身、気に入っておりませんでしたから、 店名を変えようかと考えているときでした。」
そう言って、コンウォールはアークフリードを見た。
アークフリードはコンウォールが何を言いたいのかわかり、項垂れるように頷けば、コンウォールも頷き
「お察しの通り 【銀の匙】は、マールバラ王がつけてくださったのです。
銀の匙を赤子に贈るとその子は幸せになれる…銀の匙には幸福を招く力があるいう話に、王としては国の未来の為には必要なことだとは言え、父親として申し訳ない気持ちと幸福を祈る思いから、この店の名をつけられたのだと…当時、私はそう思っておりました。でもそれだけではなかったのです。……それは兄として妹への想いがあったのです。」
コンウォールの言葉にライドが、そしてアークフリードが「妹…」と口にして、怪訝な顔でコンウォールを見た。
コンウォールはふたりを見て目を細め
「生涯恵まれるお子はおひとり。それも自分が愛するたったひとりの伴侶の間にしか子はできない。
それは初代マールバラ王が後継争いを避けるために施した魔法だったとか、マールバラ王への呪詛だとか…なにが真実なのかはわかりませんが、何百年も間…マールバラの王には御子はおひとりだったのは事実。ですが…。」
コンウォールの周りの空気が張り詰めた気がした。
彼はゆっくりとまたアークフリードとライドを見て、口を開いた。
「……最後の王となられたあの方は双子だったのです。」
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