紫の瞳の王女と緑の瞳の男爵令嬢

秋野 林檎 

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「妹君がお生まれになったのは…。あの方がお生まれになった数分後だったそうです。

子は生涯ひとりしか授からないといわれていたマールバラ王家に、双子の誕生は…当時の王や側近達には不吉な兆しに思えたのかも知れません。とくに父親の王は余程恐かったのでしょう。自分の視界に入ることさえ、拒まれたといいます。だから、その存在を自分の目の前から消したのです。 


目の届かない城の地下へと…。私には理解できません。ただ…そのことがマールバラ王国の滅亡と繋がっていったのです。」


コンウォールはそう言って目を閉じ、
「それから15年後、王は【王華】をあの方へとお渡しになられました。そしてあの方は知ったのです。妹君の事を。」と言った。

しばらく部屋に沈黙が流れたが、フゥ~と息を吐くと、コンウォールはアークフリードへと問いかけた。

「妹君の話の前に、アークフリード様にお尋ねしたいのですが。魂に刻み込まれた呪文を読み解き魔法が使える力を、なぜ《王華》と呼ぶのかご存じですか?」



「…《王華》を得た王はその容姿を華やかな紫に変え、体のどこかに美しく咲き乱れる花模様が現れるとエリザベス王女から聞きました。」

「そうですか…エリザベス王女殿下からですか…。」

「では、《王華》はどのようにして、子に渡すのかは知っておいでですか?」

「いいえ、そこまでは…。エリザベス王女は『おぞましい話だから』と言って話してくれませんでした。」


―エリザベスの思い出はいつも笑顔だ。泣いた後も、怒った後も最後にはいつも笑顔になっていた。だがこの話の時は眉間にシワを寄せて、笑顔は最後まであの綺麗な顔には浮かばなかった。

いや、それだけではない。コンウォール男爵には言わなかったが、本当は…まだ続きがあった。(おぞましい話)と言ったその後、エリザベスはこう続けた。『《王華》は呪い。その呪いを生まれながら持った私は化け物だわね。』

何事にも動じないエリザベスが、体を震わせそう言った姿に俺は思ったんだ。マールバラ王国の王女として生まれたエリザベスは幸せなのだろうかと…。



「ブランドン公爵様?」


「ぁ…すまない。ぼんやりしていた。」
エリザベスとの思い出からアークフリードが、戻ってきたことがコンウォールはわかったのだろう。


コンウォールは頷きながら
「確かにおぞましいでしょうな。なぜなら王の血を飲むのですから。シングルのショットグラスの三分の一、約10mlぐらいでしょうか…飲むのです。」


「…血…を…。」

そう言って、コンウォールを見たアークフリードは、額を押えていた。それはコンウォールの言葉に何か思い出しそうな気がしたからだった。、

コンウォールはアークフリードの姿を見つめながら

「あの日の出来事を…13年前のマールバラ王国の出来事を…いや王の部屋で起こったことを覚えておいでなんですね…。あれほどの傷を負いながらも意識はあったとは…。」

そう言いながら、胸を押えたコンウォールは逸る様に言った。

「13年前、私がブランドン公爵様を見つけるまでの時間に…妹君は…あの方の血を…飲まれたのですか?!!」

「……コンウォール男爵…あなたは……」

言葉が見つからず、戸惑うアークフリードの声に被さる様にライドが叫んだ。

「アークフリード!もう何も話すな!!」

ライドは右手を柄にかけ、コンウォールを見た。
「コンウォール男爵、いくらあなたが情報を手に入れることができるルートを持っていても、マールバラ王国の極秘事項の《王華》の情報を手に入れることはできるはずはない、いやそれだけではない。13年前のマールバラ王国での内乱の時…マールバラ王国にいたというあなたは…何者だ!」




コンウォールはライドの剣幕に微笑むと
「私は…あの方が愛していたものすべてを守りたいのです。」

「すべてを…?」

アークフリードの言葉にコンウォールは頷き

「その思いを13年前のあの日、あの方…マールバラ王に誓ったのです。必ず守ると…。」














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