13 / 78
12
しおりを挟む
テーブルのお茶で喉を潤すと、コンウォールは静かに語り始めた。
「もともと、マールバラ王国代々の王たちは、愛する人を求めて、お忍びで各国を周っていたそうです。それは、生涯恵まれるお子はおひとり。それも自分が愛するたったひとりの伴侶の間にしか子はできないからだったと聞いております。マールバラ王国の最後の王となられたあの方もそうでした。
あれは…暦の上では春だと言うのに、雪が…雪が降って…とても寒かった日でした。あの方が、ここノーフォークにお見えになったのです。
【銀の匙】のような庶民が集う店で、あの紫色の髪と瞳を見て、マールバラ王だと知る者はおりません。ですが、情報は一つの武器だと思っておりました私は、あの紫を纏う方がどなたなのがすぐにわかりました。」
そう言って、コンウォールは目を瞑り
「今なら恐れ多くて、王様の前に出ることすら体が硬直致しますのに、あの頃の私は怖いもの知らずでしたから、一国の王に気安く聞いてしまったのです。
魔法で髪や瞳の色を変えられたら、 もっと自由に奥方様をお探しできますでしょうにと …。
今でも思い出します。
あの方は寂しそうな顔で、私の問いに仰られた。
『紫色の髪と瞳は、王たる者の魔法が、体の中にあるという印だ。 子ができ……時期が来ればその力…《王華》を引き継いでもらう。その時、ようやくこの髪の色と瞳の色から、いや重責から開放される。でも思ってしまうのだ。
わが子にこんな運命を授けていいのだろうかと…。
私には《王華》は呪いのように思える。親としては辛い。だが国の為にやらねばならない。だから私をマールバラ王と知っても!マールバラ王家の過酷な運命を知っても!私の愛を受け入れてくれる人を探したいんだ。共にこの運命を乗り越えてくれる人を……だからこの姿で見つけたい。』
マールバラ王国代々の王は、ある程度年齢を重ねたら、子が生まれるまでは、死ぬことも老いることもないそうです。国のためとはいえ…ある意味悲しいことです。
王がようやく人に戻れるのは…。
生まれた子に《王華》を渡した時だそうですが、自身が呪いとまで思う《王華》を愛しているのに…国の為に我が子を…犠牲にする。それを運命だと簡単に割り切れることは出来ず…お辛そうでした。」
コンウォールは目を伏せると、小さく息を吐き、またアークフリードに顔を向けた。
「…当時、私の店には違う名前がついておりましたが、 私自身、気に入っておりませんでしたから、 店名を変えようかと考えているときでした。」
そう言って、コンウォールはアークフリードを見た。
アークフリードはコンウォールが何を言いたいのかわかり、項垂れるように頷けば、コンウォールも頷き
「お察しの通り 【銀の匙】は、マールバラ王がつけてくださったのです。
銀の匙を赤子に贈るとその子は幸せになれる…銀の匙には幸福を招く力があるいう話に、王としては国の未来の為には必要なことだとは言え、父親として申し訳ない気持ちと幸福を祈る思いから、この店の名をつけられたのだと…当時、私はそう思っておりました。でもそれだけではなかったのです。……それは兄として妹への想いがあったのです。」
コンウォールの言葉にライドが、そしてアークフリードが「妹…」と口にして、怪訝な顔でコンウォールを見た。
コンウォールはふたりを見て目を細め
「生涯恵まれるお子はおひとり。それも自分が愛するたったひとりの伴侶の間にしか子はできない。
それは初代マールバラ王が後継争いを避けるために施した魔法だったとか、マールバラ王への呪詛だとか…なにが真実なのかはわかりませんが、何百年も間…マールバラの王には御子はおひとりだったのは事実。ですが…。」
コンウォールの周りの空気が張り詰めた気がした。
彼はゆっくりとまたアークフリードとライドを見て、口を開いた。
「……最後の王となられたあの方は双子だったのです。」
「もともと、マールバラ王国代々の王たちは、愛する人を求めて、お忍びで各国を周っていたそうです。それは、生涯恵まれるお子はおひとり。それも自分が愛するたったひとりの伴侶の間にしか子はできないからだったと聞いております。マールバラ王国の最後の王となられたあの方もそうでした。
あれは…暦の上では春だと言うのに、雪が…雪が降って…とても寒かった日でした。あの方が、ここノーフォークにお見えになったのです。
【銀の匙】のような庶民が集う店で、あの紫色の髪と瞳を見て、マールバラ王だと知る者はおりません。ですが、情報は一つの武器だと思っておりました私は、あの紫を纏う方がどなたなのがすぐにわかりました。」
そう言って、コンウォールは目を瞑り
「今なら恐れ多くて、王様の前に出ることすら体が硬直致しますのに、あの頃の私は怖いもの知らずでしたから、一国の王に気安く聞いてしまったのです。
魔法で髪や瞳の色を変えられたら、 もっと自由に奥方様をお探しできますでしょうにと …。
今でも思い出します。
あの方は寂しそうな顔で、私の問いに仰られた。
『紫色の髪と瞳は、王たる者の魔法が、体の中にあるという印だ。 子ができ……時期が来ればその力…《王華》を引き継いでもらう。その時、ようやくこの髪の色と瞳の色から、いや重責から開放される。でも思ってしまうのだ。
わが子にこんな運命を授けていいのだろうかと…。
私には《王華》は呪いのように思える。親としては辛い。だが国の為にやらねばならない。だから私をマールバラ王と知っても!マールバラ王家の過酷な運命を知っても!私の愛を受け入れてくれる人を探したいんだ。共にこの運命を乗り越えてくれる人を……だからこの姿で見つけたい。』
マールバラ王国代々の王は、ある程度年齢を重ねたら、子が生まれるまでは、死ぬことも老いることもないそうです。国のためとはいえ…ある意味悲しいことです。
王がようやく人に戻れるのは…。
生まれた子に《王華》を渡した時だそうですが、自身が呪いとまで思う《王華》を愛しているのに…国の為に我が子を…犠牲にする。それを運命だと簡単に割り切れることは出来ず…お辛そうでした。」
コンウォールは目を伏せると、小さく息を吐き、またアークフリードに顔を向けた。
「…当時、私の店には違う名前がついておりましたが、 私自身、気に入っておりませんでしたから、 店名を変えようかと考えているときでした。」
そう言って、コンウォールはアークフリードを見た。
アークフリードはコンウォールが何を言いたいのかわかり、項垂れるように頷けば、コンウォールも頷き
「お察しの通り 【銀の匙】は、マールバラ王がつけてくださったのです。
銀の匙を赤子に贈るとその子は幸せになれる…銀の匙には幸福を招く力があるいう話に、王としては国の未来の為には必要なことだとは言え、父親として申し訳ない気持ちと幸福を祈る思いから、この店の名をつけられたのだと…当時、私はそう思っておりました。でもそれだけではなかったのです。……それは兄として妹への想いがあったのです。」
コンウォールの言葉にライドが、そしてアークフリードが「妹…」と口にして、怪訝な顔でコンウォールを見た。
コンウォールはふたりを見て目を細め
「生涯恵まれるお子はおひとり。それも自分が愛するたったひとりの伴侶の間にしか子はできない。
それは初代マールバラ王が後継争いを避けるために施した魔法だったとか、マールバラ王への呪詛だとか…なにが真実なのかはわかりませんが、何百年も間…マールバラの王には御子はおひとりだったのは事実。ですが…。」
コンウォールの周りの空気が張り詰めた気がした。
彼はゆっくりとまたアークフリードとライドを見て、口を開いた。
「……最後の王となられたあの方は双子だったのです。」
0
あなたにおすすめの小説
【完結】番(つがい)でした ~美しき竜人の王様の元を去った番の私が、再び彼に囚われるまでのお話~
tea
恋愛
かつて私を妻として番として乞い願ってくれたのは、宝石の様に美しい青い目をし冒険者に扮した、美しき竜人の王様でした。
番に選ばれたものの、一度は辛くて彼の元を去ったレーアが、番であるエーヴェルトラーシュと再び結ばれるまでのお話です。
ヒーローは普段穏やかですが、スイッチ入るとややドS。
そして安定のヤンデレさん☆
ちょっぴり切ない、でもちょっとした剣と魔法の冒険ありの(私とヒロイン的には)ハッピーエンド(執着心むき出しのヒーローに囚われてしまったので、見ようによってはメリバ?)のお話です。
別サイトに公開済の小説を編集し直して掲載しています。
王子を身籠りました
青の雀
恋愛
婚約者である王太子から、毒を盛って殺そうとした冤罪をかけられ収監されるが、その時すでに王太子の子供を身籠っていたセレンティー。
王太子に黙って、出産するも子供の容姿が王家特有の金髪金眼だった。
再び、王太子が毒を盛られ、死にかけた時、我が子と対面するが…というお話。
届かぬ温もり
HARUKA
恋愛
夫には忘れられない人がいた。それを知りながら、私は彼のそばにいたかった。愛することで自分を捨て、夫の隣にいることを選んだ私。だけど、その恋に答えはなかった。すべてを失いかけた私が選んだのは、彼から離れ、自分自身の人生を取り戻す道だった·····
◆◇◆◇◆◇◆
読んでくださり感謝いたします。
すべてフィクションです。不快に思われた方は読むのを止めて下さい。
ゆっくり更新していきます。
誤字脱字も見つけ次第直していきます。
よろしくお願いします。
【完結済】ラーレの初恋
こゆき
恋愛
元気なアラサーだった私は、大好きな中世ヨーロッパ風乙女ゲームの世界に転生していた!
死因のせいで顔に大きな火傷跡のような痣があるけど、推しが愛してくれるから問題なし!
けれど、待ちに待った誕生日のその日、なんだかみんなの様子がおかしくて──?
転生した少女、ラーレの初恋をめぐるストーリー。
他サイトにも掲載しております。
行き場を失った恋の終わらせ方
当麻月菜
恋愛
「君との婚約を白紙に戻してほしい」
自分の全てだったアイザックから別れを切り出されたエステルは、どうしてもこの恋を終わらすことができなかった。
避け続ける彼を求めて、復縁を願って、あの日聞けなかった答えを得るために、エステルは王城の夜会に出席する。
しかしやっと再会できた、そこには見たくない現実が待っていて……
恋の終わりを見届ける貴族青年と、行き場を失った恋の中をさ迷う令嬢の終わりと始まりの物語。
※他のサイトにも重複投稿しています。
【書籍化】番の身代わり婚約者を辞めることにしたら、冷酷な龍神王太子の様子がおかしくなりました
降魔 鬼灯
恋愛
コミカライズ化決定しました。
ユリアンナは王太子ルードヴィッヒの婚約者。
幼い頃は仲良しの2人だったのに、最近では全く会話がない。
月一度の砂時計で時間を計られた義務の様なお茶会もルードヴィッヒはこちらを睨みつけるだけで、なんの会話もない。
お茶会が終わったあとに義務的に届く手紙や花束。義務的に届くドレスやアクセサリー。
しまいには「ずっと番と一緒にいたい」なんて言葉も聞いてしまって。
よし分かった、もう無理、婚約破棄しよう!
誤解から婚約破棄を申し出て自制していた番を怒らせ、執着溺愛のブーメランを食らうユリアンナの運命は?
全十話。一日2回更新 完結済
コミカライズ化に伴いタイトルを『憂鬱なお茶会〜殿下、お茶会を止めて番探しをされては?え?義務?彼女は自分が殿下の番であることを知らない。溺愛まであと半年〜』から『番の身代わり婚約者を辞めることにしたら、冷酷な龍神王太子の様子がおかしくなりました』に変更しています。
悪役令嬢は死んで生き返ってついでに中身も入れ替えました
蒼黒せい
恋愛
侯爵令嬢ミリアはその性格の悪さと家の権威散らし、散財から学園内では大層嫌われていた。しかし、突如不治の病にかかった彼女は5年という長い年月苦しみ続け、そして治療の甲斐もなく亡くなってしまう。しかし、直後に彼女は息を吹き返す。病を克服して。
だが、その中身は全くの別人であった。かつて『日本人』として生きていた女性は、異世界という新たな世界で二度目の生を謳歌する… ※同名アカウントでなろう・カクヨムにも投稿しています
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる