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バディになる
二、
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風呂から上がるとロビンはソファで横になり、アイスを食べながらテレビをみていた
「シャンプーうまく使えたか?」
「たいへんでした。」
「そうだろう。俺もいまだにてこずるよ。おまえもアイス食べる?」
「はい、いただきます。」
「あっち」
ロビンの指さしたほうは部屋の一番端っこ。キッチンとは真逆の部屋の隅に小さい冷蔵庫がポツリとあった。
「いただきまーす。」
冷凍庫を開けた。想像を超える汚さだった。
「いったいどう使ったらこうなるっスか・・・?」
冷蔵庫の中のもろもろの汚い物に触らないように爪の先でアイスをとった。
「明日、冷蔵庫の掃除していイッスか?」
「いいけど、たぶんそんな余裕ないと思うよ。」
「ひょっとして肉体労動的な・・・?」
「う・・・まあ、最初は肉体的にも精神的にもくるかな・・・まあ、どんなことでも、はじめてはなにかしらダメージあるよ。」
ロビンはポンと肩を叩いて自分の部屋から箱を持ってきた。
「はいこれ。約束だからね。」
包みを開けると念願のかっこいい花柄のスーツが入っていた。
「アザーっス。」
そのスーツをパジャマの上から当てて鏡をのぞいた。念願の派手なスーツ!なかなか似合っていると自分でも思った。
「明日、7時起床ね。」
「早いっすね・・・あ、それで・・・なにやるんですか?」
「呪い、祟り、?まあ、そういう系かな」
「そういう系・・・?」
「明日ついてこればわかるよ。同じことの繰り返しだからそのうち覚えるって、ゆっくりやればいいさ。」
仕事の内容はよくわからなかった。でも、夕飯も食べられて、風呂にも入れてアイスまで食べて、その上今晩は布団で眠れる。枕もふかふかだ・・・それが、とても嬉しくて布団に丸くなって寝た。
屋根がある、ベッドが。
布団が・・それがどんなに素敵なことか身にしみて感じた。
「オイ、起きろ。7時起床って、言っただろ。」
「すいません。気持ちよくてつい・・・」
「早く歯磨きして、朝飯食っていくぞ。」
「ういーっス。」
歯ブラシは新しいのをもらった。柄の部分にクマさんがついていた。
「朝飯はメロンパンと牛乳。食べ終わったら行くから急げ。」
届いたファックスに目を通しながらうろうろと歩きながらパンを食べていた。
「やり方は少しずつ教えるけど、これから言うことを絶対守ること
一、泣かない。
二、弱音をはかない。
三、かわいそうは禁句。
仕事は淡々と、冷静におわらせる。毎日決まった事を決まっただけ。
ノルマをこなせば欲しいものはなんでももらえる。
失敗したら、ごはんも食べられない。イイね。じゃ、着替えたら出るよ。」
ロビンは手をパンパンとはたいて、パン屑を床に落とした。
ロビンが行くところはパン屑だらけで、どこをどう歩いたのかはっきりと分かった。
箒でパン屑をあつめて、ひとしきり掃除をしてから着替えをして、パンは半分しか食べられなかった。
スーツは白地にバラの模様。シャツはとてもきれいなブルー。念願の派手なスーツだったが、ネクタイはうまく結べなかった。それでもこのスーツは自分が思っていたよりもかなり似合って、テンションが上がった。
「あ、お揃いっスかー。」
ロビンは赤地に白のバラの模様でシャツは黄色だった。
「そっちもいいっすねー。イケてます。」
親指を立てて、ロビンに合図すると少し照れたような笑いを浮かべ、親指を立てて返した。
「ネクタイか、結んでやるよ。」
「ネクタイとかよくないですか、なくても。」
「仕事に行くんだきちんとして出ないと。それにその言葉。なおせ。
そんな っスとか、アザーっスって、言う奴に呪われていると思ったら、更に辛くなるだろう。」
「ウイー じゃなくて はい・・・」
「ホイできた・・・・アー 靴。」
「靴?」
「なんだそのこぎたねーボロボロのスニーカーは!!」
「コレしかないっス。」
「えーーちょっと・・・せっかくの新しいスーツがお前の靴で台無しジャン。やだよ・・・・」
ロビンはせっかく整えた髪をクシャクシャにかきむしりながら地団駄を踏んだ。
「じゃあロビンの貸してくださいよ。」
「やだよ。キズつけられたりしたらやだもん。」
「じゃ、コレで行きます。僕、あんま気にならないから大丈夫っス。」
「お前がよくても俺が嫌だ・・・」
ロビンは悩みに悩んだ末、ピンクの靴を貸してくれた。僕にぴったりのサイズだった。
「つま先とかよく気をつけろよ。カカトも、絶対、引きずって歩くなよ。砂利のところは、3センチくらい浮いて歩けよ。」
「わかりました。気をつけますから。」
ロビンは不機嫌そうに眉間にしわを寄せた。僕は憧れの派手なスーツでちょっとご機嫌だった。
「じゃ、いくよ。」
出発は普通に玄関からだった。
「え、そんな普通な感じで出勤ですか?」
「だって、まだ跳べないでしょ。ココ13階だよ。」
「・・・なんか、悪魔って地味っスね。」
「・・・しょせんは人間が作り出したもんだからね。」
「へ?」
「ずーっと、ずーっと昔、人間がパンドラの箱を開け、欲望が溢れ出したとき、欲望の影に恐怖を感じたその小さな闇。それが悪魔の始まりだ。闇はいつも人間共にあった。人間がもっと金が欲しい。女が欲しい。アレもコレも山ほど、欲しい。人のものをとってでも、コロしてでも欲しい。そう思ったとき、闇の恐怖でその気持ちを抑えた。でも人間は、じきにその闇を見ないように、闇の存在そのものを消したんだ。欲望の完全勝利だ。
だから、俺たちの姿は人間には見えない。でもすぐ隣に住んでいる。
人間を見張っていないとなにをしでかすか分からないからな。
たまに呪いをかけて人間が人間であることを思い出させて、欲望をコントロールする。それが悪魔の仕事さ。地味だろ。」
古いエレベーターは時間をかけて、ゆっくりキイキイと耳に響くへんてこりんな音を立てて1階についた。エレベーターの中があまりにも暗かったから、太陽の光が眩しいのと人のざわめき、街の雑踏で一瞬くらっとした。
「大丈夫か。」
「あ、はい。」
「じゃ、飛び方から教えようか。まず、背筋を伸ばして俺の腕に捕まれ。」
ぼくはロビンに倣って背筋を伸ばし横に並んで左腕に手を絡ませた。
「足元をよく見ていろよ。右足のつま先を上に向ける。この時、少し地面を左足で蹴り上げるかんじで、太ももにちょっと力を入れるのがコツだ。左足は梶だ。右に曲がりたい時はつま先を右に左に行きたいときは左に向ける。
早く飛びたい時は踏み込む。あ、そっち側の手はポケットに入れておけ、そうしないとばたついてうまく跳べないぞ」
ロビンと共にふわっとあがって、だいたい地上3階くらいのところをカッコよく飛んだ。見晴らしがよくてうれしくなってきたが緊張のあまり力が入って足が攣った。
「すいません、足攣りました。」
バランスを崩して、ロビンの腕を力いっぱい掴んだ。
ロビンは背中を抱えてゆっくりと降りてくれたが、地面に足が届くことには僕をつき飛ばした。
「おまえ、以外に筋力ないな。今晩から風呂上がりにストレッチな。じゃあ、一件目いくぞ。」
「シャンプーうまく使えたか?」
「たいへんでした。」
「そうだろう。俺もいまだにてこずるよ。おまえもアイス食べる?」
「はい、いただきます。」
「あっち」
ロビンの指さしたほうは部屋の一番端っこ。キッチンとは真逆の部屋の隅に小さい冷蔵庫がポツリとあった。
「いただきまーす。」
冷凍庫を開けた。想像を超える汚さだった。
「いったいどう使ったらこうなるっスか・・・?」
冷蔵庫の中のもろもろの汚い物に触らないように爪の先でアイスをとった。
「明日、冷蔵庫の掃除していイッスか?」
「いいけど、たぶんそんな余裕ないと思うよ。」
「ひょっとして肉体労動的な・・・?」
「う・・・まあ、最初は肉体的にも精神的にもくるかな・・・まあ、どんなことでも、はじめてはなにかしらダメージあるよ。」
ロビンはポンと肩を叩いて自分の部屋から箱を持ってきた。
「はいこれ。約束だからね。」
包みを開けると念願のかっこいい花柄のスーツが入っていた。
「アザーっス。」
そのスーツをパジャマの上から当てて鏡をのぞいた。念願の派手なスーツ!なかなか似合っていると自分でも思った。
「明日、7時起床ね。」
「早いっすね・・・あ、それで・・・なにやるんですか?」
「呪い、祟り、?まあ、そういう系かな」
「そういう系・・・?」
「明日ついてこればわかるよ。同じことの繰り返しだからそのうち覚えるって、ゆっくりやればいいさ。」
仕事の内容はよくわからなかった。でも、夕飯も食べられて、風呂にも入れてアイスまで食べて、その上今晩は布団で眠れる。枕もふかふかだ・・・それが、とても嬉しくて布団に丸くなって寝た。
屋根がある、ベッドが。
布団が・・それがどんなに素敵なことか身にしみて感じた。
「オイ、起きろ。7時起床って、言っただろ。」
「すいません。気持ちよくてつい・・・」
「早く歯磨きして、朝飯食っていくぞ。」
「ういーっス。」
歯ブラシは新しいのをもらった。柄の部分にクマさんがついていた。
「朝飯はメロンパンと牛乳。食べ終わったら行くから急げ。」
届いたファックスに目を通しながらうろうろと歩きながらパンを食べていた。
「やり方は少しずつ教えるけど、これから言うことを絶対守ること
一、泣かない。
二、弱音をはかない。
三、かわいそうは禁句。
仕事は淡々と、冷静におわらせる。毎日決まった事を決まっただけ。
ノルマをこなせば欲しいものはなんでももらえる。
失敗したら、ごはんも食べられない。イイね。じゃ、着替えたら出るよ。」
ロビンは手をパンパンとはたいて、パン屑を床に落とした。
ロビンが行くところはパン屑だらけで、どこをどう歩いたのかはっきりと分かった。
箒でパン屑をあつめて、ひとしきり掃除をしてから着替えをして、パンは半分しか食べられなかった。
スーツは白地にバラの模様。シャツはとてもきれいなブルー。念願の派手なスーツだったが、ネクタイはうまく結べなかった。それでもこのスーツは自分が思っていたよりもかなり似合って、テンションが上がった。
「あ、お揃いっスかー。」
ロビンは赤地に白のバラの模様でシャツは黄色だった。
「そっちもいいっすねー。イケてます。」
親指を立てて、ロビンに合図すると少し照れたような笑いを浮かべ、親指を立てて返した。
「ネクタイか、結んでやるよ。」
「ネクタイとかよくないですか、なくても。」
「仕事に行くんだきちんとして出ないと。それにその言葉。なおせ。
そんな っスとか、アザーっスって、言う奴に呪われていると思ったら、更に辛くなるだろう。」
「ウイー じゃなくて はい・・・」
「ホイできた・・・・アー 靴。」
「靴?」
「なんだそのこぎたねーボロボロのスニーカーは!!」
「コレしかないっス。」
「えーーちょっと・・・せっかくの新しいスーツがお前の靴で台無しジャン。やだよ・・・・」
ロビンはせっかく整えた髪をクシャクシャにかきむしりながら地団駄を踏んだ。
「じゃあロビンの貸してくださいよ。」
「やだよ。キズつけられたりしたらやだもん。」
「じゃ、コレで行きます。僕、あんま気にならないから大丈夫っス。」
「お前がよくても俺が嫌だ・・・」
ロビンは悩みに悩んだ末、ピンクの靴を貸してくれた。僕にぴったりのサイズだった。
「つま先とかよく気をつけろよ。カカトも、絶対、引きずって歩くなよ。砂利のところは、3センチくらい浮いて歩けよ。」
「わかりました。気をつけますから。」
ロビンは不機嫌そうに眉間にしわを寄せた。僕は憧れの派手なスーツでちょっとご機嫌だった。
「じゃ、いくよ。」
出発は普通に玄関からだった。
「え、そんな普通な感じで出勤ですか?」
「だって、まだ跳べないでしょ。ココ13階だよ。」
「・・・なんか、悪魔って地味っスね。」
「・・・しょせんは人間が作り出したもんだからね。」
「へ?」
「ずーっと、ずーっと昔、人間がパンドラの箱を開け、欲望が溢れ出したとき、欲望の影に恐怖を感じたその小さな闇。それが悪魔の始まりだ。闇はいつも人間共にあった。人間がもっと金が欲しい。女が欲しい。アレもコレも山ほど、欲しい。人のものをとってでも、コロしてでも欲しい。そう思ったとき、闇の恐怖でその気持ちを抑えた。でも人間は、じきにその闇を見ないように、闇の存在そのものを消したんだ。欲望の完全勝利だ。
だから、俺たちの姿は人間には見えない。でもすぐ隣に住んでいる。
人間を見張っていないとなにをしでかすか分からないからな。
たまに呪いをかけて人間が人間であることを思い出させて、欲望をコントロールする。それが悪魔の仕事さ。地味だろ。」
古いエレベーターは時間をかけて、ゆっくりキイキイと耳に響くへんてこりんな音を立てて1階についた。エレベーターの中があまりにも暗かったから、太陽の光が眩しいのと人のざわめき、街の雑踏で一瞬くらっとした。
「大丈夫か。」
「あ、はい。」
「じゃ、飛び方から教えようか。まず、背筋を伸ばして俺の腕に捕まれ。」
ぼくはロビンに倣って背筋を伸ばし横に並んで左腕に手を絡ませた。
「足元をよく見ていろよ。右足のつま先を上に向ける。この時、少し地面を左足で蹴り上げるかんじで、太ももにちょっと力を入れるのがコツだ。左足は梶だ。右に曲がりたい時はつま先を右に左に行きたいときは左に向ける。
早く飛びたい時は踏み込む。あ、そっち側の手はポケットに入れておけ、そうしないとばたついてうまく跳べないぞ」
ロビンと共にふわっとあがって、だいたい地上3階くらいのところをカッコよく飛んだ。見晴らしがよくてうれしくなってきたが緊張のあまり力が入って足が攣った。
「すいません、足攣りました。」
バランスを崩して、ロビンの腕を力いっぱい掴んだ。
ロビンは背中を抱えてゆっくりと降りてくれたが、地面に足が届くことには僕をつき飛ばした。
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