お気に入りの悪魔

富井

文字の大きさ
8 / 46
見習い、始まる

三、

しおりを挟む
時期、スピードはゆっくりになり、下へ下へとゆっくり降り始めた。
そんな頃、やっと目を開けて景色を見ることができた。海が見えた。

「昼飯にしよう。今日は魚の気分なんだ。」
「だからここまで・・・」
「それだけじゃない。次に行くところがこの近くだからだよ。」

また路地を見つけて、ずーっとまっすぐ歩いて奥の、奥の、奥の方まで歩いて右に曲がったところの小さな食堂に入った。
「何にする?ここは魚料理しかないけど、なんでもうまいよ。」
僕にメニューを1冊手渡した。すべての料理の名前を見ていたら2日はかかりそうなほどの魚料理がびっちりと書いてあって、とても選べなかった。

「・・・と、すいませーん。僕はムニエル定食、サラダ多めでご飯少なめ。お味噌汁は貝で。」
「・・・じゃあ、僕も同じで。」
ロビンは僕からメニューを取って、きちんと角を揃えてメニュー立てに戻した。
「さっきの人・・・」
僕はバブーのことが聞きたかった。
「あのバブー・・・って:」
「あー、あいつ。」

ロビンは眉間に皺を寄せて言った。どうやらあまり好きな相手ではなさそうだ。
「あいつも悪魔さ。あいつは生まれた時から悪魔なんだ。君や俺とは違う。
知ってるか・・・悪魔は闇の卵から生まれるんだぜ。大体こんなくらいの大きさの・・・」

ロビンは手を肩幅より少し広めにおそらくそれは、50~60cmくらいを示しているのだと思う。

「ずーっと遠くの空にこんなくらいの大きさの卵が山ほど転がっている穴があるんだ。そこから1年に五十から六十個の卵がかえるんだ。6月の新月の朝方3時頃に。それでも全部が悪魔になれるわけじゃない。天使と魔女の悪魔狩りがあるんだ。かえったばかりのまだ目の見えない悪魔はその穴から命懸けで地上に降りてくるんだ、それを捕まえて魔女と天使はバリバリ食うんだ。頭から。」

「マジっすか・・・」

「マジっす。そうしないと悪魔の数が増えるだろ。仕方ない、どこの世界でも食物連鎖は存在する。
その中で生き残った貴重な1匹なんだよ。あいつは。兄弟も親もない友達もいない、何の思い出もない。生まれついての悪魔さ。さみしがり屋で付きまとわれて困るよ。
会っても無視しろよ。ずっと付きまとわれるぞ。しつこいからな。」
料理が運ばれてきた。料理が前に並んだ時の“うわっ”とするロビンの表情がとても好きだ。だが僕はちょっと食欲を失った。頭からバリバリ・・・のくだりのせいだ。想像するとちょっと“うっ”ときた。

「でも、バブーのあれ、簡単だったし、一回一回縄で結んでいるより一気にくるって感じで。」
「おまえ、高校卒業してから俺に会うまでの間。苦しくなかったか?」
「苦しかったっす。ひょっとしてあれも悪魔のせいっすか。」
「全部がそうとは限らないが、多分、最後の方はそうだと思う。そうだったとしたら・・・あんな風に簡単に巻かれてそれにあんな苦しまされるって悔しくないか?」
「・・・・」
「だから精一杯丁寧に巻いて、綺麗な音楽を奏でるんだぞ・・・って言われてきたんだ。俺はそう教わって来た。」
「誰にですか?」
「ある人にだ。教えない。とにかく俺は今のスタイルで行く。これからもずっとだ。
さっさと食え。」
ロビンは変な持ち方で箸を持つ。上手く食べられなくてイライラして怒る。店の人はそれを知っているのか箸の他に必ずフォークとスプーンを用意してくれていた。でもここでは意地になって箸で食べようとしていた。僕が普通に箸を使っているからだろうか。ボロボロこぼすロビンに“あっ”と店の人も僕も時々思ったが、なるべく見ないようにして食べることに集中した。

「そうだ、おまえの名前決まったぞ。エーゴ
俺漢字が苦手だから、エーゴにした。ABCのAに数字の5な。でも呼ぶときはカタカナ。」

海岸沿いをブラブラ散歩しながらそういった。
「僕はエイゴですよ。」
「それは人間の時に人間の親からもらった名前だろ。
悪魔になったんだから、悪魔の親からおまえにエーゴを授けるよ。
ほんとはもっと、とんでもない名前つけたかったけど、考えるのが面倒になったんだ。」
「とんでもない名前になるくらいならエーゴで十分っす。」
ロビンは散歩しながらも腕時計を見ながら指をおってなにか考えながら、手帳をとっていた。ちょっとのぞくと相変わらず漢字はひとつもなくて、記号や絵やカタカナでなにが書いてあるかわからない落書きのようなノートだった。
「俺のを見るなよ。
エーゴも今度から手帳に書いておかないと日報書けないぞ。」
「手帳なんかないっす。」
「今日帰りに事務所で申請しろよ。頑張った分だけご褒美がもらえる。」
「ご褒美っスか・・・それはなんでもいいんですか?」
「何でもいいけど、絶対ダメなものが1つだけある。何だと思う?」
「女っすか?」
「ヤッパ、お前、アホだな・」
「冗談っす。」

「お金だ。人間の欲望がついてまわるお金には悪魔と天使と魔女は触れない。
それ以外ならなんでももらえる。現物支給だ。頑張ればだけど。」

「考えときます。ツーか天使とか魔女もいるんスカ?」

「いるよ。いるけど、あいつらはタチ悪いからな気をつけろよ。街で肩でも当たったら身包み剥がされるからな。
出会ったらおもいっきり逃げる。闘おうとか考えるな、とにかく逃げろ。
あいつらより早く飛べるように練習しろよ。」

当然だが、僕の知ら無い事がいっぱいあってロビンの話はとても楽しかった。けど、笑っているかと思ったら急に機嫌が悪くなったり、子供っぽいところに少し戸惑った。

「いいか、これから先、何を見ても、どんなことが起きてもかわいそうとか、同情するようなことは言ってはダメだからないいな。約束だぞ。」

ロビンが小指を出した。

「了解っす。お供しまっす。」
その小指に小指をからめた。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

つまらない妃と呼ばれた日

柴田はつみ
恋愛
公爵令嬢リーシャは政略結婚で王妃に迎えられる。だが国王レオニスの隣には、幼馴染のセレスが“当然”のように立っていた。祝宴の夜、リーシャは国王が「つまらない妃だ」と語る声を聞いてしまい、心を閉ざす。 舞踏会で差し出された手を取らず、王弟アドリアンの助けで踊ったことで、噂は一気に燃え上がる――「王妃は王弟と」「国王の本命は幼馴染」と。 さらに宰相は儀礼と世論を操り、王妃を孤立させる策略を進める。監視の影、届かない贈り物、すり替えられた言葉、そして“白薔薇の香”が事件現場に残る冤罪の罠。 リーシャは微笑を鎧に「今日から、王の隣に立たない」と決めるが、距離を取るほど誤解は確定し、王宮は二人を引き裂いていく。 ――つまらない妃とは、いったい誰が作ったのか。真実が露わになった時、失われた“隣”は戻るのか。

妻からの手紙~18年の後悔を添えて~

Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。 妻が死んで18年目の今日。 息子の誕生日。 「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」 息子は…17年前に死んだ。 手紙はもう一通あった。 俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。 ------------------------------

三十年後に届いた白い手紙

RyuChoukan
ファンタジー
三十年前、帝国は一人の少年を裏切り者として処刑した。 彼は最後まで、何も語らなかった。 その罪の真相を知る者は、ただ一人の女性だけだった。 戴冠舞踏会の夜。 公爵令嬢は、一通の白い手紙を手に、皇帝の前に立つ。 それは復讐でも、告発でもない。 三十年間、辺境の郵便局で待ち続けられていた、 「渡されなかった約束」のための手紙だった。 沈黙のまま命を捨てた男と、 三十年、ただ待ち続けた女。 そして、すべてを知った上で扉を開く、次の世代。 これは、 遅れて届いた手紙が、 人生と運命を静かに書き換えていく物語。

さようなら婚約者

あんど もあ
ファンタジー
アンジュは、五年間虐げられた婚約者から婚約破棄を告げられる。翌日、カバン一つを持って五年住んだ婚約者の家を去るアンジュ。一方、婚約者は…。

お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます

菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。 嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。 「居なくていいなら、出ていこう」 この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし

冷遇王妃はときめかない

あんど もあ
ファンタジー
幼いころから婚約していた彼と結婚して王妃になった私。 だが、陛下は側妃だけを溺愛し、私は白い結婚のまま離宮へ追いやられる…って何てラッキー! 国の事は陛下と側妃様に任せて、私はこのまま離宮で何の責任も無い楽な生活を!…と思っていたのに…。

完結 辺境伯様に嫁いで半年、完全に忘れられているようです   

ヴァンドール
恋愛
実家でも忘れられた存在で 嫁いだ辺境伯様にも離れに追いやられ、それすら 忘れ去られて早、半年が過ぎました。

『辺境伯一家の領地繁栄記』序章:【動物スキル?】を持った辺境伯長男の場合

鈴白理人
ファンタジー
北の辺境で雨漏りと格闘中のアーサーは、貧乏領主の長男にして未来の次期辺境伯。 国民には【スキルツリー】という加護があるけれど、鑑定料は銀貨五枚。そんな贅沢、うちには無理。 でも最近──猫が雨漏りポイントを教えてくれたり、鳥やミミズとも会話が成立してる気がする。 これってもしかして【動物スキル?】 笑って働く貧乏大家族と一緒に、雨漏り屋敷から始まる、のんびりほのぼの領地改革物語!

処理中です...