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見習い、始まる
二、
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「次いくぞ」
「歩きですか?」
「たまには歩く。運動不足はよくない。」
運動しているとは思えないほどゆるゆると背中を丸めて、ポケットに手を入れてはお菓子を出して食べながら歩く。
「おまえもほしかったらポケットにあるぞ。」
僕もポケットに手を入れてみた。チョコレートがはいっていた。
「食いすぎるなよ。昼飯がまずくなる。」
「ウイ~っす。これ美味いですね。」
「うん だから、つい食べ過ぎて・・・あ、次のターゲットはあいつだ。」
街でビラを配っている若者だった。秋山久男 21歳 大学生
「バイト中か。大学生は、昼は勉強しないのか?」
「僕は大学行ってないんで解らないっす。でも、単位制とかで・・・」
「ここはエーゴがやれ。」
「え、俺っすカ」
ロビンから綱を渡されて、その若者に近づいた。額に汗してビラを配るが誰も受け取らない。
そんな彼の肩から両腕胸を、一周ニ周と慎重に巻いて行った。
「キレイにまけよ。縄がかさならないように。」
「こんな感じでいいっすか?」
縄の巻き方、結び方をロビンに倣いながらさっきのロビンの手順を思い出しながらやってみた。その間も秋山は一生懸命ビラを来る人来る人に渡そうとしていた。
「なんかこいつ、要領わるいな。お前みたいだ。」
「そうっすかね・・・」
縄を結び終わったあと、二人でベンチに腰掛け秋山のことを眺めた。
そしてロビンはハーモニカを吹き出した。僕はカスタネットを叩くのを忘れてその若者を見ていた。ついこないだまでの自分を見ているようだった。
渡しても、渡しても誰も受け取ってはもらえない。それでも次の人へ、次の人へアタックしていく。それが仕事だからだ。
「あのビラ、全部配り終わっても三千円くらいなんですよね・・・もらえるのは・・・」
「それでもあいつが決めてやっていることだ。」
「あれしかないんですよ。あんなことしか・・・」
「憐れむな。俺たちには何もできない。」
そう言いながらもロビンは右足でそのビラを蹴り上げた。ビラは天高く上がり、広い範囲に散らばった。
「おやさしいねー。元人間悪魔様は・・・」
後ろから声をかけられ振り向いた。
「げっ!!バルビンバブー」
「バブーはやめてよ!!」
ちいさい。小さくておっさんぽい。着ている服はB系でダボダボのトレーナーにダボダボの半ズボン。多分、半ズボンなのだろうが、ほぼ長ズボン。帽子もガブガブで、子供がお兄ちゃんのお下がりをサイズも合わずに着せられているような感じだ。だが、自信満々に少し顎を上げた感じで立っていた。
「無視しろ。」
ロビンは小声で言った。
「ぬるいねー。ぬるい、ぬるい。今時ハーモニカ。レトロ感、丸出し。なんでお前が悪魔ベスト5なのかマジわかんないよ。」
「いくぞ」
ロビンが僕の肩を組み、その場を後にしようとしたが、バブーがふたりの間に割って入った。肩を組みたかったのだろうが、その男は背が低くて、僕とロビンにぶら下がっているようになった。
「ちょっと、待ってよ。マーブル・マービー・ケルン。僕サー、最新のアイテム手に入れたんだ。見てよ。コレ。」
バブーは手のひらに乗った、真っ黒のロールケーキのようなものを見せた。
「ほら、あそこに見える、あいつが僕のターゲット。
吉田美代子 43歳。主婦パート勤務。いままさにパートへの出勤中。
やってみるよ、よく見ててよ。」
ロールケーキから赤いレーザービームが出て、吉田美代子をポイントした。そして、ロールケーキの後ろから、チョロンと出ている“クラッカーの紐”のようなものを引っ張った。ロールケーキは吉田美代子に向いて飛び出し、みるみる肩から足の先まですっぽりと巻いた。
「簡単だろ。どう??」
「興味ない。」
ロビンはまた、僕の肩を組んでその場から去ろうとした。
「まって、まって・・・ここからなんだよ。」
僕たちの前に立ちはだかって両手を広げて四角い箱のようなものを見せた。
「じゃーん。最新の音楽プレーヤーだよん。これで楽器が苦手な僕でもほら。」
バブーがスイッチを入れたととたん、音楽が流れ吉田美代子は胸を抑えてその場にうずくまり苦しみだした。
「めっちゃ苦しんでますよ、あの人。大丈夫っすか」
「あれでいんだ。効果覿面じゃん。即効性があっていいだろ?」
「興味ない。」
「そんなこと言わずに、君もこれ使えよ。早くて簡単で効き目もあって。時間短縮で余った時間はいっぱい遊べるよ。
だから僕は暇なんだ。遊ぼうよ。」
「断る。俺たちは忙しい。」
「だから君もこれを使ったら?ね遊ぼうよ。」
「興味ない。俺たちに話しかけるな。」
「じゃあ、明日。明日もここへ来るだろ。明日遊ぼうよ。」
「遊ばない。今日も明日も明後日も、お前に関わっている暇はない。」
ロビンは少し怒ったのか、僕の肩を掴んで飛び上がった。すごい速度で。
下からバブーが見上げていた。そのバブーが小さな点になるくらい高く飛んだかと思ったら左足を一気に踏み込みすごいスピードで進んだ。僕はジャケットが脱げてしまわないかとても心配で、胸元をぐっとつかみ、脱げたらどうなるのだろう・・・そんなことばかりを考えていて怖くて目を固く閉じた。
「歩きですか?」
「たまには歩く。運動不足はよくない。」
運動しているとは思えないほどゆるゆると背中を丸めて、ポケットに手を入れてはお菓子を出して食べながら歩く。
「おまえもほしかったらポケットにあるぞ。」
僕もポケットに手を入れてみた。チョコレートがはいっていた。
「食いすぎるなよ。昼飯がまずくなる。」
「ウイ~っす。これ美味いですね。」
「うん だから、つい食べ過ぎて・・・あ、次のターゲットはあいつだ。」
街でビラを配っている若者だった。秋山久男 21歳 大学生
「バイト中か。大学生は、昼は勉強しないのか?」
「僕は大学行ってないんで解らないっす。でも、単位制とかで・・・」
「ここはエーゴがやれ。」
「え、俺っすカ」
ロビンから綱を渡されて、その若者に近づいた。額に汗してビラを配るが誰も受け取らない。
そんな彼の肩から両腕胸を、一周ニ周と慎重に巻いて行った。
「キレイにまけよ。縄がかさならないように。」
「こんな感じでいいっすか?」
縄の巻き方、結び方をロビンに倣いながらさっきのロビンの手順を思い出しながらやってみた。その間も秋山は一生懸命ビラを来る人来る人に渡そうとしていた。
「なんかこいつ、要領わるいな。お前みたいだ。」
「そうっすかね・・・」
縄を結び終わったあと、二人でベンチに腰掛け秋山のことを眺めた。
そしてロビンはハーモニカを吹き出した。僕はカスタネットを叩くのを忘れてその若者を見ていた。ついこないだまでの自分を見ているようだった。
渡しても、渡しても誰も受け取ってはもらえない。それでも次の人へ、次の人へアタックしていく。それが仕事だからだ。
「あのビラ、全部配り終わっても三千円くらいなんですよね・・・もらえるのは・・・」
「それでもあいつが決めてやっていることだ。」
「あれしかないんですよ。あんなことしか・・・」
「憐れむな。俺たちには何もできない。」
そう言いながらもロビンは右足でそのビラを蹴り上げた。ビラは天高く上がり、広い範囲に散らばった。
「おやさしいねー。元人間悪魔様は・・・」
後ろから声をかけられ振り向いた。
「げっ!!バルビンバブー」
「バブーはやめてよ!!」
ちいさい。小さくておっさんぽい。着ている服はB系でダボダボのトレーナーにダボダボの半ズボン。多分、半ズボンなのだろうが、ほぼ長ズボン。帽子もガブガブで、子供がお兄ちゃんのお下がりをサイズも合わずに着せられているような感じだ。だが、自信満々に少し顎を上げた感じで立っていた。
「無視しろ。」
ロビンは小声で言った。
「ぬるいねー。ぬるい、ぬるい。今時ハーモニカ。レトロ感、丸出し。なんでお前が悪魔ベスト5なのかマジわかんないよ。」
「いくぞ」
ロビンが僕の肩を組み、その場を後にしようとしたが、バブーがふたりの間に割って入った。肩を組みたかったのだろうが、その男は背が低くて、僕とロビンにぶら下がっているようになった。
「ちょっと、待ってよ。マーブル・マービー・ケルン。僕サー、最新のアイテム手に入れたんだ。見てよ。コレ。」
バブーは手のひらに乗った、真っ黒のロールケーキのようなものを見せた。
「ほら、あそこに見える、あいつが僕のターゲット。
吉田美代子 43歳。主婦パート勤務。いままさにパートへの出勤中。
やってみるよ、よく見ててよ。」
ロールケーキから赤いレーザービームが出て、吉田美代子をポイントした。そして、ロールケーキの後ろから、チョロンと出ている“クラッカーの紐”のようなものを引っ張った。ロールケーキは吉田美代子に向いて飛び出し、みるみる肩から足の先まですっぽりと巻いた。
「簡単だろ。どう??」
「興味ない。」
ロビンはまた、僕の肩を組んでその場から去ろうとした。
「まって、まって・・・ここからなんだよ。」
僕たちの前に立ちはだかって両手を広げて四角い箱のようなものを見せた。
「じゃーん。最新の音楽プレーヤーだよん。これで楽器が苦手な僕でもほら。」
バブーがスイッチを入れたととたん、音楽が流れ吉田美代子は胸を抑えてその場にうずくまり苦しみだした。
「めっちゃ苦しんでますよ、あの人。大丈夫っすか」
「あれでいんだ。効果覿面じゃん。即効性があっていいだろ?」
「興味ない。」
「そんなこと言わずに、君もこれ使えよ。早くて簡単で効き目もあって。時間短縮で余った時間はいっぱい遊べるよ。
だから僕は暇なんだ。遊ぼうよ。」
「断る。俺たちは忙しい。」
「だから君もこれを使ったら?ね遊ぼうよ。」
「興味ない。俺たちに話しかけるな。」
「じゃあ、明日。明日もここへ来るだろ。明日遊ぼうよ。」
「遊ばない。今日も明日も明後日も、お前に関わっている暇はない。」
ロビンは少し怒ったのか、僕の肩を掴んで飛び上がった。すごい速度で。
下からバブーが見上げていた。そのバブーが小さな点になるくらい高く飛んだかと思ったら左足を一気に踏み込みすごいスピードで進んだ。僕はジャケットが脱げてしまわないかとても心配で、胸元をぐっとつかみ、脱げたらどうなるのだろう・・・そんなことばかりを考えていて怖くて目を固く閉じた。
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