貴族の爵位って面倒ね。

しゃーりん

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話かけてきた令息はクラスメイトのようだ。

正直、誰だったか覚えていないわ。とりあえず、答えよう。

「私に自由になるお金なんてないわ?」

「お金じゃなくて別のもので。」

「何?」

聞こうとした時、ドーソンたちがやってきた。

「ホリー、帰るよ。」

「はい。」

令息に向かって言った。

「ごめんなさい。もう帰るので、また明日でいいかしら?」

「彼らも一緒に聞いて貰った方がこっちとしてはいいんだけど。」

「そうなの?」

周りを見渡すと、ドーソンが現れたことでクラスメイトの姿が消えていた。
昨日の今日で、まだ媚びる勇気はないみたい。

「誰もいないからここでいい?」

「ああ。」

ドーソンたちに令息のことを話すと怪しんでいたが、向こうは一人だけなので聞くことにした。

「面白い話って何?」

「情報提供料として頼みがあるんですけど。」

「……それは聞いてみないとわからない。金じゃないのか?」

「ええ。将来の目的についての頼みですかね。まぁ、聞いてからでいいです。」

令息は声を潜めて話し出した。自然にみんなの顔も寄る。

「ゲルツ公爵令息は、おそらく公爵の子ではないと思います。」

「……は?」

いきなり何を言い出すの?

「僕の叔父は、同級生でした。そして、公爵夫人と関係があったそうです。
 ゲルツの顔は、叔父にそっくりです。」

「……何で君の叔父は、そのことを君に話した?」

「叔父は何年か前に、たまたま公爵夫妻とゲルツが一緒にいるところを見たそうです。
 ゲルツの顔を見て、自分の子にしか思えなかったようで。
 僕が学園で先輩から聞いたゲルツの傍若無人ぶりを叔父に愚痴ったら教えてくれました。」

「でもそれって、ゲルツが叔父さんの子だと認められたら引き取ることになるかもよ?
 公爵夫人付きで。叔父さん大丈夫?」

「叔父はうちからとっくに籍を抜かれた平民です。
 遊び歩いては怒られ、だけど、面白い物を持ってたまに遊びに来るんです。
 家がどこかも知らないし。
 叔父以外にも公爵夫人と関係があったと思われる令息も聞きました。」

「つまり、公爵夫人は複数人と関係があった。
 狙いは公爵だったけど、キープもいたってことかな。
 なるほどね。裏どりが必要だけど、公爵がゲルツを見捨てる可能性もあるわけか。
 他の令息の名前も教えて。
 それで、確認後にはなるけど、ひとまず聞いておくよ。君の望みは?」

「将来、隣国で働きたいので伝手が欲しいんです。」

「……ひょっとして魔道具師?」

「はい。親戚もいないし、身元保証人になってくれる人がいないので働けません。
 だけど、魔道具師になりたくて。」

他国籍の者はスパイを疑われるので身元保証人が必要になる。
隣国の公爵令息のケンドルが答えた。

「あー。なるほどね。学園3年間の成績も必要だから、勉強も頑張らないと無理だよ?
 口添え程度なら可能だけど…キミ、ホリー嬢に嫌がらせした?」

「い、いいえ。…でも、助けもしませんでした。」

「ま、それは難しいことでもあったと思うけど。
 そうだな、成績次第で身元保証人になってくれる者を探すと約束しよう。」

「ありがとうございます。頑張ります!」
 
 
この令息の言うことは確認を取る必要はあるけれど、私に嫌がらせをすることはないと安心できた。



 
 
 
 
 

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