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しおりを挟む翌日、公爵家の馬車で登園し、ドーソンたち男4人に教室まで送ってもらったホリーに嫌がらせをしてくる者はいなかった。
ゲルツにつくよりもドーソンにつく方がいいのではないか?
そんな考えがこの学年には漂っている気がする。なぜなら、まだ入学して3か月だから。
2年生はゲルツの学年、3年生はゲルツの公爵家に媚びたい者が言いなりになっていたようだし、たった一年間でもゲルツに支配された恐怖感がある。
いつもと違う感じで遠巻きにされていたホリーだったが、ある令嬢が聞いてきた。
「ねぇ、あなたの母親って実家の公爵家から見放されたんじゃないの?」
ホリーは母の話題を内心喜んだ。
「いいえ?ずっと仲がいいわよ。お祖父様も伯父の公爵様も私と弟を可愛がってくださるし。」
敢えて伯父たちにも触れた。
「で、でも、元婚約者の恋人に嫌がらせをして婚約破棄された後、男爵家を脅して結婚したって…」
ホリーは首を傾げてしまった。言ってることがおかしいと思わないの?
「全然違うわ。それに、婚約者がいるのに恋人がいる方がおかしくない?
婚約者が別の令嬢とイチャイチャするのを注意しただけで嫌がらせの犯人にされたの。
相手側は勘違いを認めてこちらが慰謝料を貰ったのよ?
母が男爵家に嫁いだのは、父が誠実な人でプロポーズしてくれたからよ?」
ようやく言いたかったことが言えた!
「だったら、母が教えてくれたことが間違いだって言うの?」
「婚約破棄の出来事は卒業パーティーでのことだったそうなの。
だから、その後の慰謝料のことや男爵家に嫁いだことが正確に伝わらなかったのかもしれないわね。
母の友人たちは経緯をご存知だから、王都に来たら今でもお茶会に呼ばれてるし。」
別のところから令息が聞いてきた。
「じゃあ、公爵令息のゲルツ様が嘘を言っていると言うのか!」
「嘘というのが何のことかはわからないけど。
ゲルツ様のご両親からは自分たちの勘違いだったと謝罪文も貰っているそうよ?」
別の令嬢が言った。
「聞いたことがあるんだけど、ゲルツ様ってご両親が卒業して半年後に生まれたって。
公爵家の跡継ぎを産んだ夫人が月齢を誤魔化すことなく発表したから卒業前の妊娠がバレたって。
明らかに不貞を隠すための婚約破棄だったんじゃないかって後で気づいた人もいるって。」
「「「………………」」」
その時、教師がやってきたので話はここまでだった。
なかなか母の印象を変えることができたのではないか?そう思った。
ゲルツが公爵令息であることに変わりはないが、母を理由に私に嫌がらせをするのは間違っている。
そもそも、私、ゲルツの顔を知らないんだけど、どうしたらいい?
授業を終え、ドーソンが来るのを待っていると一人の令息がこっそり声をかけてきた。
「面白いネタがあるんだけど、買ってくれない?」
……今度は男爵令嬢から金を巻き上げる魂胆?
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