22 / 23
22.
しおりを挟むテオルドはサリューシアを気にしながら続けた。
「それと、言わないでおこうかと思ったけど、やっぱり話すよ。
リズとリムを王都に連れてくる必要がないのに連れて来たのには理由がある。
2人の存在を知れば、君にティムへの好意があっても彼に幻滅するんじゃないかと思ったんだ。
卑怯だろう?サリューシアがティムに白い結婚を望むと言った時、喜んだよ。」
ただティムが伯爵の子供ではなかったので平民に戻ると告げるだけでは、婚約者として過ごしてきた1年間の好意のやり場に困るかもしれない。
好意の大きさによっては未練になることもあるから。
そんな状態のサリューシアと再び婚約しても、お互いに納得できるのかが不安だった。
だが、恋人と子供の存在を知れば、気持ちに一線を引くのではないか。そう考えたのだ。
それを、テオルドは卑怯な手段を使ったと感じている。
「ティムさんに恋人と子供がいたことは驚いたけれど、婚約前のことなので仕方がないと思いました。
政略結婚ですしね。問題はその後です。
私と婚約中にリズさんと関係を続けたことが許せませんでした。
それに、王都に来るときにキチンと別れていなかったことも。
だから白い結婚にしたかった。
そして10年以内にはティムさんと離婚して、ブルーエ家から逃げようとも考えていました。
だから、結婚したとしても領地で暮らすつもりでした。
テオルド様のそばで過ごして、必要な時だけ王都に行く。
そんなことを考えていた私も不誠実ですね。」
テオルドのそばで暮らすことを考えていたというサリューシアの気持ちが嬉しくて、テオルドは笑顔で聞いた。
「僕のそばで?寝込んでばかりかもしれないのに?死んでいたかもしれないのに?」
「ええ。たとえお墓参りになったとしても、テオルド様の近くにいようと思いました。」
テオルドはサリューシアの手を握って絡めた。
本当は抱きしめてキスをしたいところだが、ここはテラスで使用人もいる。
少し離れた部屋にはまだお互いの親が休憩しているはずだった。
以前のテオルドは病人だったので、部屋で2人きりになることも度々あった。
だから、抱きしめたりキスをしたりすることもできたが、今の状態ではできないことが悔しかった。
卑怯でも不誠実でも、お互いに心があるならばそれでいい。
幌馬車がやってきて、荷物が積み込まれていく。
ティムだけでなく、リズやリムが買ってもらった物も全部詰め込んだらしい。
置いて行かれても、孤児院などに寄付することになるので構わないが。
見送りは、テオルドとサリューシア、ビリーの3人だった。
「父の勘違いで連れてきてすまなかったな。
ティムの住まいの家賃は数か月先までミナさんに払ってる。滞納金もな。
産まれてくる子供と4人で、幸せに暮らせよ。」
「母が産み月をずらしたりするから、ややこしくなったんです。
まぁ、いろいろと勉強にもなったし、美味しい物も食べられたし。
でも平民の方が気が楽でいいです。
お世話になりました。
サリューシア様、幸せな夢をありがとうございました。」
サリューシアは少し意味がわからず首を傾けたが笑顔で言った。
「楽しいお話を聞かせてくれてありがとう。幸せにね。」
「はい。」
スッキリした顔のティムと、寝転がって帰るための準備をしているリズとそこに転がっているリムに別れを告げて、幌馬車は出発した。
笑顔で手を振り、ようやく問題が解決して誰もが肩の荷が下りた気がした。
225
あなたにおすすめの小説
『恋心を凍らせる薬を飲みました』 - 残りの学園生活、どうぞご自由にお遊びください、婚約者様
恋せよ恋
恋愛
愛されることを諦めた。だから、私は心を凍らせた。
不誠実な婚約者・ユリアンの冷遇に耐えかねたヤスミンは、
伝説の魔女の元を訪れ、恋心を消し去る「氷の薬」を飲む。
感情を捨て、完璧な「人形」となった彼女を前に、
ユリアンは初めて己の罪と執着に狂い始める。
「お願いだ、前のように僕を愛して泣いてくれ!」
足元に跪き、涙を流して乞う男に、ヤスミンは冷酷に微笑む。
「愛?……あいにく、そのような無駄な感情は捨てましたわ」
一度凍りついた心は、二度と溶けない。
後悔にのたうち回る男と、心を凍らせた冷徹な公爵夫人の、
終わりのない贖罪の記録。
🔶登場人物・設定は筆者の創作によるものです。
🔶不快に感じられる表現がありましたらお詫び申し上げます。
🔶誤字脱字・文の調整は、投稿後にも随時行います。
🔶今後もこの世界観で物語を続けてまいります。
🔶 『エール📣』『いいね❤️』励みになります!
白い結婚の末、離婚を選んだ公爵夫人は二度と戻らない』
鍛高譚
恋愛
白い結婚の末、「白い結婚」の末、私は冷遇され、夫は愛人を溺愛していた――ならば、もう要らないわ」
公爵令嬢 ジェニファー・ランカスター は、王弟 エドワード・クラレンス公爵 のもとへ政略結婚として嫁ぐ。
だが、その結婚生活は冷たく空虚なものだった。夫は愛人 ローザ・フィッツジェラルド に夢中になり、公爵夫人であるジェニファーは侮辱され、無視され続ける日々。
――それでも、貴族の娘は耐えなければならないの?
何の愛もなく、ただ飾り物として扱われる結婚に見切りをつけたジェニファーは 「離婚」 を決意する。
しかし、王弟であるエドワードとの離婚は容易ではない。実家のランカスター家は猛反対し、王宮の重臣たちも彼女の決断を 「公爵家の恥」 と揶揄する。
それでも、ジェニファーは負けない。弁護士と協力し、着々と準備を進めていく。
そんな折、彼女は北方の大国 ヴォルフ公国の大公、アレクサンダー・ヴォルフ と出会う。
温かく誠実な彼との交流を通じて、ジェニファーは 「本当に大切にされること」 を知る。
そして、彼女の決断は、王都の社交界に大きな波紋を呼ぶこととなる――。
「公爵夫人を手放したことを、いつか後悔しても遅いわ」
「私はもう、あなたたちの飾り人形じゃない」
離婚を巡る策略、愛人の凋落、元夫の後悔――。
そして、新たな地で手にした 「愛される結婚」。
口は禍の元・・・後悔する王様は王妃様を口説く
ひとみん
恋愛
王命で王太子アルヴィンとの結婚が決まってしまった美しいフィオナ。
逃走すら許さない周囲の鉄壁の護りに諦めた彼女は、偶然王太子の会話を聞いてしまう。
「跡継ぎができれば離縁してもかまわないだろう」「互いの不貞でも理由にすればいい」
誰がこんな奴とやってけるかっ!と怒り炸裂のフィオナ。子供が出来たら即離婚を胸に王太子に言い放った。
「必要最低限の夫婦生活で済ませたいと思います」
だが一目見てフィオナに惚れてしまったアルヴィン。
妻が初恋で絶対に別れたくない夫と、こんなクズ夫とすぐに別れたい妻とのすれ違いラブストーリー。
ご都合主義満載です!
〖完結〗死にかけて前世の記憶が戻りました。側妃? 贅沢出来るなんて最高! と思っていたら、陛下が甘やかしてくるのですが?
藍川みいな
恋愛
私は死んだはずだった。
目を覚ましたら、そこは見知らぬ世界。しかも、国王陛下の側妃になっていた。
前世の記憶が戻る前は、冷遇されていたらしい。そして池に身を投げた。死にかけたことで、私は前世の記憶を思い出した。
前世では借金取りに捕まり、お金を返す為にキャバ嬢をしていた。給料は全部持っていかれ、食べ物にも困り、ガリガリに痩せ細った私は路地裏に捨てられて死んだ。そんな私が、側妃? 冷遇なんて構わない! こんな贅沢が出来るなんて幸せ過ぎるじゃない!
そう思っていたのに、いつの間にか陛下が甘やかして来るのですが?
設定ゆるゆるの、架空の世界のお話です。
婚約破棄されたので、もうあなたを想うのはやめます
藤原遊
恋愛
王城の舞踏会で、公爵令息から一方的に婚約破棄を告げられた令嬢。
彼の仕事を支えるため領地運営を担ってきたが、婚約者でなくなった以上、その役目を続ける理由はない。
去った先で彼女の能力を正当に評価したのは、軍事を握る王弟辺境伯だった。
想うことをやめた先で、彼女は“対等に必要とされる場所”を手に入れる。
傷付いた騎士なんて要らないと妹は言った~残念ながら、変わってしまった関係は元には戻りません~
キョウキョウ
恋愛
ディアヌ・モリエールの妹であるエレーヌ・モリエールは、とてもワガママな性格だった。
両親もエレーヌの意見や行動を第一に優先して、姉であるディアヌのことは雑に扱った。
ある日、エレーヌの婚約者だったジョセフ・ラングロワという騎士が仕事中に大怪我を負った。
全身を包帯で巻き、1人では歩けないほどの重症だという。
エレーヌは婚約者であるジョセフのことを少しも心配せず、要らなくなったと姉のディアヌに看病を押し付けた。
ついでに、婚約関係まで押し付けようと両親に頼み込む。
こうして、出会うことになったディアヌとジョセフの物語。
【完結済】侯爵令息様のお飾り妻
鳴宮野々花@書籍4作品発売中
恋愛
没落の一途をたどるアップルヤード伯爵家の娘メリナは、とある理由から美しい侯爵令息のザイール・コネリーに“お飾りの妻になって欲しい”と持ちかけられる。期間限定のその白い結婚は互いの都合のための秘密の契約結婚だったが、メリナは過去に優しくしてくれたことのあるザイールに、ひそかにずっと想いを寄せていて─────
遡ったのは君だけじゃない。離縁状を置いて出ていった妻ーー始まりは、そこからだった。
沼野 花
恋愛
私は、夫にも子供にも選ばれなかった。
その事実だけを抱え、離縁を突きつけ、家を出た。
そこで待っていたのは、最悪の出来事――
けれど同時に、人生の扉がひらく瞬間でもあった。
夫は愛人と共に好きに生きればいい。
今さら「本当に愛していたのは君だ」と言われても、裏切ったあなたを許すことはできない。
でも、子供たちの心だけは、必ず取り戻す。
妻にも母にもなれなかった伯爵夫人イネス。
過去を悔いながらも、愛を手に入れることを決めた彼女が辿り着いた先には――
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる