私が嫁ぐ予定の伯爵家はなんだか不穏です。

しゃーりん

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ブルーエ伯爵夫人は修道院に入ることになり、落ち着いた日常が戻って来たのはサリューシアが学園を卒業する3か月前になっていた。


ティムは1歳下だったので、結婚するまでにはまだ1年以上あったことで日程も決めていなかった。

テオルドと前に婚約していた時も、卒業後という漠然とした感じだった。

だけど、新たにテオルドの婚約者に戻ったサリューシアは、卒業すればすぐにでも結婚したかった。


「すぐにって……サリューシア、僕もそうしたいけれど覚えることがいっぱいあって。
 領地にいたときに少しは勉強していたけれど、まだまだなんだ。」

「いいじゃないですか。まだ伯爵を継ぐわけではないのですから。」

「だけど、卒業して2年も経っているのに、頼りない跡継ぎだと思われたら君にも迷惑がかかる。」


テオルドは自分の卒業後、サリューシアが卒業するまでのこの2年の間に伯爵家の仕事を覚えるつもりでいたが、ティムが伯爵家にやってきたことと病状悪化、そして婚約者ではなくなったことで父から学べなかったのだ。


「テオルド様は学園にもほとんど通われていなかったのでご存知ないのかもしれませんが。
 卒業すると婚約者と結婚する者は多くいます。
 ですが結婚する時に、親の手足になって行動できる跡継ぎなどほんの一握りです。
 本格的に領地のことを学ぶのは卒業後という貴族家は少なくありません。
 結婚時に一人前になっていなければならないということはないのですよ。」
 
「……そんなものなのか?」

「そうですよ?だって、結婚して子供を持ってから責任感が生まれる人もいるくらいです。
 親から少しずつ仕事を任されて、一人前になったら爵位を譲る。そんな親も多いです。
 あなたがずっと病弱だったのに18歳で病状が悪化するまでなぜ伯爵様が跡継ぎを変えなかったか。
 それは、仕事は無理でも子作りくらいはできるのではないかと思っていたからだと思います。
 貴族の結婚で大事なのは跡継ぎですからね。」


仕事を覚えることに必死になっているテオルドの気持ちを楽にしたくて、サリューシアは少し強引に視点を変えさせることにした。
せっかく婚約者に戻ったのに、あまりデートもできなくて寂しいという思いもあったが。


「……仕事より子作り?」

「そうです。仕事をしてくれる人はいっぱいいます。伯爵様も頼っておられるでしょう?
 ですが、血筋を守ることに重視する貴族の仕事は子作りです。
 というわけで、早く結婚しましょう!」

「……いいのかな。」

「いいのです。というより、私が早くテオルド様と暮らしたいだけなのですけど。」

「そうだな。いつ何が起こるかわからないし。僕もサリューシアと一緒にいたい。」


侍女たちの視線を気にせず抱きしめ合ってキスをした。このくらいは許容範囲のはず。
結婚間近の婚約者が相手なのだから、見て見ぬふりをしてくれるわよね。

 

 
結局、結婚式は卒業3か月後に決まった。

サリューシアは、将来の伯爵夫人としての仕事を自分の母から教わった。
同じ伯爵家で、女主人の仕事は似たようなものだ。
家令や執事が請け負っている場合もあるので、その辺は嫁いでからの調整となる。
ブルーエ伯爵夫人がいないため、サリューシアの役割となるのだ。



ブルーエ伯爵は、すっかりおとなしくなった。
自身の2度の浮気が、妻と息子を苦しめて混乱をもたらしたからだ。
仕事はするが、それ以外は萎びたおじさんになってしまった。


  
テオルドとサリューシアが結婚式を終え、サリューシアが屋敷にやってくると、ブルーエ家は明るさを取り戻していった。
やはり、仕える主人の中に女性がいるといないとでは大違いだと使用人たちは感じている。 

結婚の翌年に、サリューシアは男の子を出産。2年後にも女の子を出産し、伯爵家は賑やかになった。


テオルドは愛するサリューシアのために病気を克服したと思われており、夜会などではそれほど愛されていることが羨ましいと若い令嬢たちから憧れの夫婦と言われるようになった。

ちょっと事実とは違うけど愛し合っていることに違いはないので、テオルドとサリューシアは笑顔で過ごす。

こんな日常が訪れたことを幸せに思う2人だった。 
 

  

<終わり>


 
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