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しおりを挟むクレアが2歳を過ぎた頃、シャーロットはふと思った。
「ねぇ、マックス。平民っていつ頃から勉強や礼儀作法を学ぶの?」
シャーロットは育児放棄されていたため、8歳を過ぎるまで何もしたことはなかったが、王宮で暮らすようになってから何もできないことに驚かれたことを覚えている。
ということは、貴族ならもっと小さな頃から学ぶものだということ。
でも平民は?
「俺も詳しくは知らないが、一般的な平民は最低限の勉強しかしないぞ。文字と計算くらいか。礼儀作法なんて、接客業でない限り特に必要ないしな。貴族を相手にする商人くらいなものじゃないか?」
「そうなのね。誰に教わるの?家庭教師や侍女はいないだろうから、親から?」
「そうだろうな。」
「ということは、クレアに教えるのは私なのね。何から教えればいいのかしら。」
「2歳はさすがにまだ早いぞ。」
「そうなのね。学園みたいにみんなで一緒に学べたらいいのに。クレアのお友達はどこで見つければいいのかしら。」
シャーロットに親しくしていた友人と呼べるほどの令嬢はいなかった。
学園には平民もいたけれど、思えば彼らは勉強についてこれたのだから、家庭教師がいたのだろう。
つまり、商人の子や裕福な平民の子、貴族から援助のある子ということになる。
クレアもその中に入ることになる。
「俺みたいな貴族の次男なんかが騎士には多くいるし、その妻も似たようなものだったりする。元から平民同士の夫婦の実情はあまり知らないが、親と一緒に働いている子もよく見るぞ。」
そういえばそうかも。
パン屋や八百屋でも見かけるし、地方から来る荷台に子供が乗っているのも見たことがある。
「共働きだと家に一人で置いておくわけにもいかないから、そうなるんだろうな。」
「子供を預けられる場所を作ればいいんじゃない?その間に先生が勉強を教えればいいのよ。小さい子は遊べばいいし。」
「それは国が主導するべきだろうな。そのためには話題になればいい。
貴族が孤児院や医療院に援助したり奉仕活動をしたりするだろう?平民の子供を預かり学べる施設もその一つに組み入れてもらえれば、国から支援金も出るし、貴族も援助しやすくなる。」
その施設で礼儀作法も学べば、貴族の屋敷のメイドとして雇ってもらいやすくなるかもしれない。
剣の指導を学べば、警備兵や騎士兵になれるかもしれない。
孤児院の子供も一緒に学べば、将来が明るくなるかもしれない。
自分に自信がつけば、蔑まれることも減るに違いない。
「先行投資は必要だ。場所だとか子供たちを見る人員の給金だとか。慰謝料を使ってやってみるか?」
「やってみたいわ。クレアのお友達のために。」
ようやく慰謝料の使い道ができるし。
一年かけてシャーロットがいろいろと動いていると、実績を作る前からどこからか話題になり、国からの支援金が下りた。
王妃様が動いてくれたのではないかとシャーロットは思った。
しかし、実は王妃の前にマッケンジー公爵が動いていた。
予定よりも大きな土地と建物の場所が安かったのは、公爵の指示だったからだ。
マックスは知っていたが、シャーロットは知らない。
マッケンジー公爵はシャーロットに感謝されたくてしているわけではない。
贖罪と自己満足といったところだから。
でも、そうやってシャーロットはいろんな人から守られて、助けられて、幸せな日々を送っている。
シャーロットが笑顔でいてくれるなら、それでいい。
「マックス、好きなことができるって楽しいわね。」
自由を手に入れてから、シャーロットは毎日が楽しい。
<終わり>
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