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しおりを挟むローレンスが心の内でメロディーナの兄との覚悟の差に落ち込んでいるとメロディーナが驚くことを言った。
「兄も父に振り回され続けて疲れたのね。嫁いでくれる令嬢もいなかったし自由になれてスッキリしたと思うわ。
それでね、辺境伯様が、もしあなたがオリオールに戻る気になれば、私を養女にしてくれるって言ってくださっていたの。」
「え……養女に?でも、僕が貴族籍に戻れば妻がいたから君とは結婚できなかったと思うけど。」
今はジェイドのお陰で妻はいなくなったが。
「辺境伯様はあなたのことを調べたって言ったでしょ?オリオールの乗っ取りについては気づいていたわ。それでもあなたが戻る気がないなら問題にはしないつもりだって言ってた。本人にその気がないのに意味がないからって。
でも戻るなら、妻の座にいる女性の罪を晒して問題なく私と結婚できるようにしてくれるって。」
「辺境伯様がそんなことを……」
ここにも先々を読んで、ローレンスたちのことを考えてくれている人がいたのだ。
辺境伯様の養女になるのなら、メロディーナと子供たちの地位が脅かされる心配はなくなる。
申し分ない後ろ盾となってくれるのだから。
しかし、自分の力でオリオールを取り戻す気もなかった自分が貴族に戻ってもいいのだろうか。
今度はそう葛藤することになり、中途半端で覚悟が持てない自分が嫌になった。
「養女の話はあなたが貴族に戻るのならってことよ?まだ覚悟が決まらないならもう少し考えたらいいと思うわ。でも私も貴族になる方法があると知ったから、あなたの心も軽くなったんじゃない?
私は本当にどちらでもいいの。あなたと一緒なら、貴族でも平民でも。」
「僕が貴族として生きる覚悟が持てるかどうかってことか。」
もちろん、貴族に戻るならメロディーナも侯爵夫人として大変になるだろう。貧乏子爵令嬢だったと言うのだから礼儀作法も完璧とはいかないに違いない。
それでも、彼女は笑顔で努力してくれるに違いない。
「養女の話は別として、一度、辺境伯様のところにご挨拶に行かない?」
「そうだな。それは僕も思っていた。こんなにお世話になっていたとは知らなかったから。」
「ええ。それに、あなたは大人と話をしてみたらいいと思うの。」
「大人と?僕たちも大人だけど?」
「親世代っていうか、爵位を持っている人たちっていうか。
あなたの周りには話を聞いてくれる大人がいなかったのだと思うの。だから、抗うことが難しくていろんなことを受け入れてしまったのよ。
貴族に戻っても頼れる人に頼ることができなければ、苦しくなるんじゃないかしら。
あなたの不安や悩んでいることを相談してみるのもいいんじゃない?」
「相談、か。」
確かに、逃げた自分が戻ることを周りがどう思うのか聞いてみたい。
そういうことはメロディーナに相談しても解決はしない。それを彼女もわかっているから、辺境伯や他の貴族の声を聞いてみろと言っているのだとわかった。
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