逃げた先で見つけた幸せはずっと一緒に。

しゃーりん

文字の大きさ
37 / 50

37.

しおりを挟む
 
 
辺境伯様は難しい顔をしてローレンスに言った。


「そもそも、君の祖父、前オリオール侯爵がおかしいんだ。まだ年若い娘に爵位を渡し、領地に引っ込んだ。まぁ、そこはいい。領地で執務をしながら娘を助けていたはずだから。
だが、娘が亡くなった時、君の父親を侯爵代理としたことがおかしい。前侯爵はまだ40歳半ばだったんだから君が継げる歳になるまで再び侯爵になるべきだったのだ。」


言われてみればそうだ。
血の繋がった祖父母がローレンスを育て、父はオリオールから出て行ってもよかったのだ。
 
それに、再婚した父はオリオール侯爵代理として過ごしていたが、再婚に伴い、実は実家の姓に戻っているのにオリオールを名乗っていた。義母もレナウンもだ。

正式書類では偽れないが、通称オリオールと名乗っていたため、父を代理だと知らなかったり忘れていたりする者もいただろう。
 
……レナウンはまさかオリオール姓で卒業したんじゃないか?偽称だから卒業取消じゃないか?今更どうでもいいけど。


「祖父は祖母のために空気の綺麗な領地で暮らすことを選んだと聞いています。」


孫よりも妻の方が大事だったのだ。

孫には実の父親がいるのだから、何とかなるだろう。
まだ若い婿が後妻を望むことは仕方がないだろう。 
年近い義弟がいれば楽しいだろう。
 
10数年経てば、ローレンスが侯爵になるのだから。

祖父母は気楽に考えていたのだ。

ひょっとすると、ローレンスがつらい目にあっていることにも気づいていたかもしれない。
だけど、煩わしいことに巻き込まれたくないと思った。

どうせ10数年経てば、ローレンスが侯爵になるのだから。

邪魔だったらその時に、ローレンス自ら父親たちを追い出せばいいのだ。

祖父母たちは、そう気楽に思っていたのではないか。

その結果が、まさかの乗っ取りだとは思いもせずに。
 
ローレンスがふとそう思ったことを口にすると、辺境伯様たちは頭を抱えた。


「あり得そうだ。前侯爵夫妻は君の失踪時でも王都に行かなかったと聞いたよ。『ローレンスの妻の腹に子がいるならその子がオリオール家の跡継ぎだ』と言ってね。」


オリオール家の子ではなかったけどな。
 

「君の母親が亡くなった時は私はまだ辺境伯になっていなかったし、同年代も爵位を継いでいなかった。明らかに異質になったオリオール侯爵家に対し、何も言えなかったんだ。
君の父親に問題があるとは言えなかったし、再婚した妻も社交的で変だとは感じなかった。おかしいとわかったのは君が成人してからだ。夜会に2度だけ出たことがあるらしいね。私は一度見ただけだが。」

「はい。ですが、父は誰も紹介してくれず、壁を背にじっとしていろと言われました。」

「うん。それで、疑問に思い始めた大人はいた。だが、何度も会わなければ忘れてしまう。しかも翌年、連れ子のはずの息子を仲良く紹介して歩き回っていた。扱いの差に疑問を感じた者はいたはずだ。」

 
まぁ、そうだろう。ローレンスはレナウンが父の息子だと知っていたから何とも思わなかったが、他の貴族から見ればレナウンと父は血の繋がりのない親子なのだ。
実の息子は放ったらかしなのに?と不思議に思われても当然だろう。


「だが、義母が君が変わった子なのだと夫人たちに触れ回っていたらしい。」
 

なるほど。義理の息子に手を焼いていると演技をしていたのだな。



 
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

勝手にしなさいよ

恋愛
どうせ将来、婚約破棄されると分かりきってる相手と婚約するなんて真っ平ごめんです!でも、相手は王族なので公爵家から破棄は出来ないのです。なら、徹底的に避けるのみ。と思っていた悪役令嬢予定のヴァイオレットだが……

〖完結〗旦那様には本命がいるようですので、復讐してからお別れします。

藍川みいな
恋愛
憧れのセイバン・スコフィールド侯爵に嫁いだ伯爵令嬢のレイチェルは、良い妻になろうと努力していた。 だがセイバンには結婚前から付き合っていた女性がいて、レイチェルとの結婚はお金の為だった。 レイチェルには指一本触れることもなく、愛人の家に入り浸るセイバンと離縁を決意したレイチェルだったが、愛人からお金が必要だから離縁はしないでと言われる。 レイチェルは身勝手な愛人とセイバンに、反撃を開始するのだった。 設定はゆるゆるです。 本編10話で完結になります。

強い祝福が原因だった

恋愛
大魔法使いと呼ばれる父と前公爵夫人である母の不貞により生まれた令嬢エイレーネー。 父を憎む義父や義父に同調する使用人達から冷遇されながらも、エイレーネーにしか姿が見えないうさぎのイヴのお陰で孤独にはならずに済んでいた。 大魔法使いを王国に留めておきたい王家の思惑により、王弟を父に持つソレイユ公爵家の公子ラウルと婚約関係にある。しかし、彼が愛情に満ち、優しく笑い合うのは義父の娘ガブリエルで。 愛される未来がないのなら、全てを捨てて実父の許へ行くと決意した。 ※「殿下が好きなのは私だった」と同じ世界観となりますが此方の話を読まなくても大丈夫です。 ※なろうさんにも公開しています。

〖完結〗冤罪で断罪された侯爵令嬢は、やり直しを希望します。

藍川みいな
恋愛
「これより、サンドラ・バークの刑を執行する!」 妹を殺そうとした罪で有罪となった私は、死刑を言い渡されました。ですが、私は何もしていない。 全ては、妹のカレンが仕組んだことでした。 刑が執行され、死んだはずの私は、何故か自分の部屋のベッドの上で目を覚ましたのです。 どうやら時が、一年前に戻ったようです。 もう一度やり直す機会をもらった私は、二度と断罪されないように前とは違う選択をする。 設定ゆるゆるの、架空の世界のお話です。 全14話で完結になります。

〖完結〗旦那様が愛していたのは、私ではありませんでした……

藍川みいな
恋愛
「アナベル、俺と結婚して欲しい。」 大好きだったエルビン様に結婚を申し込まれ、私達は結婚しました。優しくて大好きなエルビン様と、幸せな日々を過ごしていたのですが…… ある日、お姉様とエルビン様が密会しているのを見てしまいました。 「アナベルと結婚したら、こうして君に会うことが出来ると思ったんだ。俺達は家族だから、怪しまれる心配なくこの邸に出入り出来るだろ?」 エルビン様はお姉様にそう言った後、愛してると囁いた。私は1度も、エルビン様に愛してると言われたことがありませんでした。 エルビン様は私ではなくお姉様を愛していたと知っても、私はエルビン様のことを愛していたのですが、ある事件がきっかけで、私の心はエルビン様から離れていく。 設定ゆるゆるの、架空の世界のお話です。 かなり気分が悪い展開のお話が2話あるのですが、読まなくても本編の内容に影響ありません。(36話37話) 全44話で完結になります。

報われなかった姫君に、弔いの白い薔薇の花束を

さくたろう
恋愛
 その国の王妃を決める舞踏会に招かれたロザリー・ベルトレードは、自分が当時の王子、そうして現王アルフォンスの婚約者であり、不遇の死を遂げた姫オフィーリアであったという前世を思い出す。  少しずつ蘇るオフィーリアの記憶に翻弄されながらも、17年前から今世まで続く因縁に、ロザリーは絡め取られていく。一方でアルフォンスもロザリーの存在から目が離せなくなり、やがて二人は再び惹かれ合うようになるが――。 20話です。小説家になろう様でも公開中です。

やり直し令嬢は本当にやり直す

お好み焼き
恋愛
やり直しにも色々あるものです。婚約者に若い令嬢に乗り換えられ婚約解消されてしまったので、本来なら婚約する前に時を巻き戻すことが出来ればそれが一番よかったのですけれど、そんな事は神ではないわたくしには不可能です。けれどわたくしの場合は、寿命は変えられないけど見た目年齢は変えられる不老のエルフの血を引いていたお陰で、本当にやり直すことができました。一方わたくしから若いご令嬢に乗り換えた元婚約者は……。

殿下が好きなのは私だった

恋愛
魔王の補佐官を父に持つリシェルは、長年の婚約者であり片思いの相手ノアールから婚約破棄を告げられた。 理由は、彼の恋人の方が次期魔王たる自分の妻に相応しい魔力の持ち主だからだそう。 最初は仲が良かったのに、次第に彼に嫌われていったせいでリシェルは疲れていた。無様な姿を晒すくらいなら、晴れ晴れとした姿で婚約破棄を受け入れた。 のだが……婚約破棄をしたノアールは何故かリシェルに執着をし出して……。 更に、人間界には父の友人らしい天使?もいた……。 ※カクヨムさん・なろうさんにも公開しております。

処理中です...