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しおりを挟むローレンスが変わっている子だと義母が触れ回ったことで、ローレンスの扱いに疑問を抱く貴族が減ったのだと辺境伯様は言った。
「後からなら何とでも言えるが、オリオール侯爵家は乗っ取るには好都合の貴族だと言えるだろう。
君には頼れる大人がいなかった。気にしてくれる身内が誰もいなかったからだ。
誰か一人でも、君の様子を心配した大人が声をかけたか?親身になって実情を聞いてくれる大人がいたか?いなかったから、こうなったんだ。」
祖父は一人っ子、母も一人っ子、ローレンスもオリオールとしては一人っ子。
叔父や叔母、従兄弟、大叔父、大叔母、オリオールには誰もいない。
父方は伯爵家で、父が遠ざけていたせいか会ったこともない。
大人の全てが初めましての人で、ローレンスを心配して声をかけてくれることなんてなかった。
「だから私はね、君が逃げたことは正しかったと言いたい。君が悪いとは思わないからだ。
騙された周りの大人たち、見て見ぬふりした大人たち、他人事だと思ってはいけなかった。
つらい目に合っているときは視野が狭くなる。あと少し。そこに向かう気持ちでいっぱいだっただろう。
その途中で話を聞いてやる大人がいるべきだったんだ。教師でもよかった。だが、おそらく教師も侯爵家という高位の貴族と揉めることを恐れたのだろう。恥ずかしい大人ばかりだ。私も含めて。」
「そんなこと、ありません。こうして話す機会をいただけました。」
ローレンスは辺境伯の言葉に涙が込み上げてきていた。
必死で生きていたあの頃、こうして話を聞いてくれる大人がいれば何か変わっただろうか。
頑なに何も話さなかったかもしれないし、大丈夫だと言い張ったかもしれない。
それでも、気にかけてくれた人がいると嬉しく思ったことだろう。
「都合よくも親子判定、血縁判定ができるものが開発され、君の父親たちは捕まった。
君が生きているということは既に伝えられているから、王都には向かわなければならないだろう。
そこで、どうする?一度は捨てたがオリオールに、貴族に戻るか?今のまま過ごしたいか?」
「……自分で父たちの罪を暴く勇気もなくて逃げておいて、戻ることは受け入れられるでしょうか。」
ローレンスは自分が図太い神経を持っていないと自覚している。
「そこはまぁ、不安になるよな。だが、あの親子判定キットが開発されていなければ、君が父親たちの罪を暴くのは難しかっただろう。子供の父親が誰かなんて実際、男にはわからんからな。殺害も口にしただけでは罪とはならないだろうし。
だから、妻の子供が自分の子供ではないとわかっているのに、周りは責任逃れだの酔って忘れただけだのと君を責めることになっていたかもしれない。家族として暮らしてきた父たちを追い出した薄情者と言われることになっていたかもしれない。
生き延びるために逃げた。これを口にするだけで君を非難する貴族などいないだろう。そこに、記憶喪失も付け足せば完璧だ。」
へ………?記憶喪失じゃなかったのに?
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