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しおりを挟む辺境伯様は難しい顔をしてローレンスに言った。
「そもそも、君の祖父、前オリオール侯爵がおかしいんだ。まだ年若い娘に爵位を渡し、領地に引っ込んだ。まぁ、そこはいい。領地で執務をしながら娘を助けていたはずだから。
だが、娘が亡くなった時、君の父親を侯爵代理としたことがおかしい。前侯爵はまだ40歳半ばだったんだから君が継げる歳になるまで再び侯爵になるべきだったのだ。」
言われてみればそうだ。
血の繋がった祖父母がローレンスを育て、父はオリオールから出て行ってもよかったのだ。
それに、再婚した父はオリオール侯爵代理として過ごしていたが、再婚に伴い、実は実家の姓に戻っているのにオリオールを名乗っていた。義母もレナウンもだ。
正式書類では偽れないが、通称オリオールと名乗っていたため、父を代理だと知らなかったり忘れていたりする者もいただろう。
……レナウンはまさかオリオール姓で卒業したんじゃないか?偽称だから卒業取消じゃないか?今更どうでもいいけど。
「祖父は祖母のために空気の綺麗な領地で暮らすことを選んだと聞いています。」
孫よりも妻の方が大事だったのだ。
孫には実の父親がいるのだから、何とかなるだろう。
まだ若い婿が後妻を望むことは仕方がないだろう。
年近い義弟がいれば楽しいだろう。
10数年経てば、ローレンスが侯爵になるのだから。
祖父母は気楽に考えていたのだ。
ひょっとすると、ローレンスがつらい目にあっていることにも気づいていたかもしれない。
だけど、煩わしいことに巻き込まれたくないと思った。
どうせ10数年経てば、ローレンスが侯爵になるのだから。
邪魔だったらその時に、ローレンス自ら父親たちを追い出せばいいのだ。
祖父母たちは、そう気楽に思っていたのではないか。
その結果が、まさかの乗っ取りだとは思いもせずに。
ローレンスがふとそう思ったことを口にすると、辺境伯様たちは頭を抱えた。
「あり得そうだ。前侯爵夫妻は君の失踪時でも王都に行かなかったと聞いたよ。『ローレンスの妻の腹に子がいるならその子がオリオール家の跡継ぎだ』と言ってね。」
オリオール家の子ではなかったけどな。
「君の母親が亡くなった時は私はまだ辺境伯になっていなかったし、同年代も爵位を継いでいなかった。明らかに異質になったオリオール侯爵家に対し、何も言えなかったんだ。
君の父親に問題があるとは言えなかったし、再婚した妻も社交的で変だとは感じなかった。おかしいとわかったのは君が成人してからだ。夜会に2度だけ出たことがあるらしいね。私は一度見ただけだが。」
「はい。ですが、父は誰も紹介してくれず、壁を背にじっとしていろと言われました。」
「うん。それで、疑問に思い始めた大人はいた。だが、何度も会わなければ忘れてしまう。しかも翌年、連れ子のはずの息子を仲良く紹介して歩き回っていた。扱いの差に疑問を感じた者はいたはずだ。」
まぁ、そうだろう。ローレンスはレナウンが父の息子だと知っていたから何とも思わなかったが、他の貴族から見ればレナウンと父は血の繋がりのない親子なのだ。
実の息子は放ったらかしなのに?と不思議に思われても当然だろう。
「だが、義母が君が変わった子なのだと夫人たちに触れ回っていたらしい。」
なるほど。義理の息子に手を焼いていると演技をしていたのだな。
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