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しおりを挟むローレンスは生き延びるためにオリオール侯爵家から逃げた。
これは事故による殺害計画を耳にしたから逃げたのだ。証拠はないが事実である。
でも、記憶喪失というのはメロディーナに気持ち悪く思われないためについた咄嗟の嘘だった。
辺境伯様たちにも嘘だったと先ほど伝えたばかりなのに。
「いいじゃないか。失踪していた間に頭を打って記憶を失っていたが、オリオールの乗っ取りのことを耳にして記憶が戻ったということにすれば。問題が解決したから戻ってきましたっていうよりも、その方が悪くない印象だと思うぞ?実際、街で再会した同級生には記憶喪失だって言ってるんだろう?話が合うじゃないか。」
生き延びるために逃げた先で出会った女性に惚れた。
その彼女と同じ街で暮らしていた。
彼女が危険な目にあいそうになり助けようとした際に頭を打って記憶を失った。
記憶はないが恋人だという彼女と結婚して幸せに暮らしていた。
だが昔の自分のことを知っている男に出会った。
貴族だと言われてもわからない。
ある貴族家が乗っ取られようとしていたと耳にしたことで記憶が戻った。
あっ!自分の家のことだ。とオリオール家に戻ってきた。
と、まぁ、こんな感じでいいんじゃないか?とのことだった。
いいのか?
「いいんだよ。じゃないと、どうしてその同級生と一緒に罪を暴こうとしなかったんだってなるぞ?」
確かに。
記憶喪失設定だったから、一緒に、なんて思わなかった。
親子だと判定できるものがなければ、ジョスリンの子供がローレンスの子だ、となると思ったから。
それがたまらなく嫌だった。
ジェイドは親子が判定できるものが新たに開発されたなどとローレンスに伝えることなく父たちの断罪に踏み切ったから。
国王陛下にまで話が上がってしまったことで、先に片をつけることになったのだろう。
つまり、ローレンスが記憶喪失だということも国王陛下に伝わっているということだ。
今更、嘘でした、とは確かに言えない。
ジェイドと一緒に父親の罪を暴こうとしていなかった時点で、貴族に戻る気ないだろう?って思われて当然なのだから。
記憶喪失設定。うん。貴族に戻るためにはこの設定は必要であると理解した。
「わかりました。僕は最近記憶が戻りました。そういうことでお願いします。」
ローレンスが真面目な顔でそう言うと、辺境の男3人は喉の奥で笑って頷いていた。
「ではメロディーナを私の養女にしようと思う。彼女なら侯爵夫人になってもなんとかなるだろう。
意外と意思は強い。あの子の父親とは大違いだな。あぁ平民になった兄もしっかりしていた。」
メロディーナの兄は隣国に向かう前に挨拶に来たらしい。
「隣国で海と関わりのある仕事がしたいって目を輝かせていたよ。」
なるほど。身軽になったメロディーナの兄は憧れの場所へと旅立ったようだ。
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