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しおりを挟む社交シーズンになり、ローレンスはオリオール侯爵として初めて夜会に出た。
もちろん、メロディーナと共にだ。
どうせ注目されるのは最初だけだ。
『ああ、あれが乗っ取りの被害者』で終わることだろう。
メロディーナも注目を浴びることになったが、意外と彼女は平気そうだった。
一通り挨拶を済ませ、ダンスを踊り、少し飲み物を飲んでいるとジェイドに声をかけられた。
メロディーナも別の夫人に呼ばれ、少し別行動になった。
こんな時、何か問題が起こりそうな予感がしたが、メロディーナは『大丈夫』と言った。
本当に大丈夫だろうかと不安になった。
なぜなら、メロディーナは淑女教育をまだ終えていない。
そして、人物名を覚えることを『無理!』と途中で放棄した。
本人曰く、文字で覚えようとしても頭に入らないのだとか。
挨拶を交わしたらそのうちに覚えると言っていたが、不安でしかない。
しかし、メロディーナに声をかけたのはおそらく同年代の夫人であることから、学園時代の友人かもしれないと思いなおした。
そう言えば、友人の話を聞いたことがなく、屋敷に招いたこともない。
茶会などを開きたければ、自由にしていいと言っておくべきだったと気づいた。
「オリオール侯爵殿、夫人が気になっているようですが?」
ジェイドとその友人たちはローレンスにとって気安い友人となっていたが、夜会となるとまだ爵位を継いでいない彼らとローレンスでは立場が違うため、言葉遣いが変わっていた。
「いや、妻の交友関係を聞いたことがなかったと気づいたんだ。王都に来てから誰も招いていないし手紙のやり取りをしている様子もなかったから、あの夫人方はどういう関係なのかと思ってね。」
「……覗きに行きます?」
「は……?」
「興味ないですか?夫人の友人なのか、夫人に媚びるつもりなのか、夫人を貶すつもりなのか。」
なるほど。
「しかし、妻を貶すとなると、自分の立場を弁えていないと見做されてしまうのにそれはないだろう?」
「そうでもないですよ。学生時代の親の爵位の上下を結婚後も引きずる場合もあるので。」
「そうか。妻は学生時代、子爵令嬢だったから。」
ザッと見た限り、メロディーナを連れ出した夫人たちは、先ほど挨拶を交わした公爵家・侯爵家の中にはいなかった。
ということは、次期当主夫人でもないため、メロディーナよりも格下ばかりになる。
それなのに貶されることがあっては、オリオール侯爵家が舐められることと同じだ。
ローレンスもまだ侯爵になったばかりだ。
侮られることはあるだろうが、それを面と向かって言えるのは同格以上の貴族だけ。
メロディーナも今後、似たような状況になることが何度もあるだろう。
ローレンスに頼らず、自分で乗り越えなければならないこともあるはずだ。
どう対応するのかが気になるのなら、覗きに行こうということか。
話の流れにもよるが、メロディーナが対処しきれなければ出ていく必要がある。
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