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しおりを挟むジェイドは、ローレンスとメロディーナの出会いに思惑がなかったかを心配しているようだ。
「妻は確かに僕のことを知っていたよ。でもそれは、記憶が戻った時に打ち明けられた。
ジェイドに声をかけられるまで僕たちは平民として暮らして貴族と関わりを持つこともなかったし、妻は自分が貴族だったということも口にしなかったんだから。」
「そうか。君が侯爵になることについてはどうだった?」
「家族が一緒なら貴族でも平民でも構わないって。」
「……君がいずれオリオールに戻って侯爵になることを望んでいた感じではない?」
「ない。妻は僕の失踪が公表されたことを知っていたから、ジョスリンが妊娠していることも知っていたはずだ。だから、僕がオリオールに戻っても自分が妻にはなれないとわかっていただろうし、子供たちも跡を継げないとわかっていただろう。そんな場所に愛人として乗り込みたいと思うような女性じゃないよ。」
没落した元貴族令嬢が侯爵令嬢であったジョスリンと張り合おうだなんて無謀だろう。
もし乗っ取りが判明する前に、メロディーナたちを連れてオリオールに戻っていたとしても、ジョスリンは離婚を受け入れなかったはずだ。
自分の後釜が平民だなんてジョスリンのプライドが許さなかっただろう。
それならば、ローレンスはメロディーナを、ジョスリンはレナウンを愛人にして、夫婦のままでいたに違いない。
だが、実際はローレンスの記憶喪失は嘘だし、ジェイドに会わなければ、あのままオリオールに戻ることもなく失踪5年が経過して死亡扱いにされていただろう。
よって、メロディーナがローレンスを貴族に戻したら自分が侯爵夫人になれると思って近づいてきたというジェイドの憶測は成り立たないのだ。
「君は夫人を信じているんだな。それならいいんだ。中には夫人がこうなることを見越して記憶を失った君に近づいたと邪推する者もいるからな。」
なるほど。そういう考え方もできるのか。
実情を知らなければ、少ない情報で何通りもの噂話が出来上がりそうだな。
「万が一、メロディーナが侯爵夫人を狙って僕に近づいて来ていたのだとしても、構わないさ。僕は自分の意志で彼女に惚れて彼女の近くにいることを望んだ。放浪していた暮らしを止めて、彼女を生き甲斐にしたんだ。」
「え……重っ……まさか、想像と逆?」
ジェイドは、メロディーナがローレンスにアプローチをかけたと思っているのだろう。
確かにそれは間違いではないが、付き纏ったと言えるのはローレンスの方だろう。
「相思相愛、両想いと言ってくれ。だけど、僕の気持ちの方が遥かに重くて気持ち悪いと思うよ。」
ジェイドの顔は引きつっていた。
それはそうだろう。彼にとってローレンスは虐待されていた可哀想なイメージが強い。
恋愛話なんてしたことがない。
それなのに、妻に執着じみた愛情を抱いていると知ったのだから。
あぁ、愛に飢えていたからこそ、初めてローレンスを見てくれたメロディーナの近くにいたいと思ったんだな。
祖父が祖母しか見ていなかった気持ちがわかるよ。
でも祖父とは違う。ローレンスは子供たちにも愛情を持っているのだから。
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