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しおりを挟む社交デビューとなる日、クレージュは父にエスコートしてもらった。
もちろん、ファーストダンスも父と踊る。
国によっては、エスコートもファーストダンスも婚約者が行うところもあるけれど、この国では家族が蔑ろにしていない証明みたいなものになる。
それと、婚約者と別れた場合にデビューが悲しい思い出とならないためと言われている。
2曲目に婚約者のワンダー様と踊った。
安定感があり、とても踊りやすくて楽しかった。
飲み物を飲もうとワンダー様と移動しようとした時、やはり嬉しくない問題が起きた。
私に声をかけた問題を起こしそうな人物は、想像通りロメオ様………ではなくリリスだった。
「クレージュ、どういうこと?同じ飾りをつけた人と踊るなんて、その人が婚約者?
まさか、ロメオ様と同時進行に付き合ってロメオ様を婚約解消して捨てたってこと?」
耳の痛くなるような声で騒ぐリリスに頭が痛くなりそう。
こんな人の多い場所で勝手な妄想を口にしないでほしい。
「リリス、あなた勘違いしているわ。この方は私の正式な婚約者で間違いないわ。
だけど、ロメオ様と婚約していた事実なんてないわ。」
「嘘よ!だって、あの時婚約したって言ってたじゃない!」
「婚約しただなんて誰も言っていないわ。あなたの思い込みよ。
確かに、あの前日に顔合わせはしたわ。でもそれだけよ。
顔合わせが婚約したことになったら、婚約解消経験のある人ばかりになるわよ?」
周りで聞いている人たちも、『そうよね』とリリスを失笑している。
顔を真っ赤にしたリリスがそれでもまだ声をあげる。
「だけど、ロメオ様は婚約したと思っていたわ。
だから何とかして私と上手くいく方法を考えるって。だから諦めずに一緒に過ごしたの。
ロメオ様がせっかく思いついた方法をクレージュがダメにしたのよ!」
「……本人もサインしていないのだから婚約していないことはわかってるはずよ?
それに彼のお父様にも私と婚約していないことを念を押して言ってもらったわ。
1度目は効果なかったみたいだけど、2度目、最近は婚約していないと理解してくれたと思うけど?」
「確かに、婚約は勘違いだったって言ってたけど。
だけど、そのせいで私たちの計画が狂ってしまったんだから、クレージュが悪いのよ!」
「……どんな計画だったの?」
聞きたくないけど、聞いてみたい。おそらく周りもそう思ってる。
「クレージュとロメオ様が結婚するとロメオ様が伯爵になれるでしょ?
だから、結婚してからすぐにクレージュと離婚するの。
それから私と再婚すれば、ロメオ様は伯爵、私は伯爵夫人になれるはずだったの。」
私は唖然とした。もちろん、周りの人も。
ひと昔前にあった乗っ取りの手順だ。
「リリス、たとえロメオ様が私と結婚しても伯爵にはなれないわ。
父が爵位を譲るのは10何年も先の話だし、それに父の跡を継ぐのは私。夫になる人ではないの。
離婚すれば、出ていくのはロメオ様になるし、私に子供が出来なければ親戚が継ぐわ。
うちの血筋でないロメオ様が継ぐことはないの。」
「え……え?どうして?女性は爵位を継げないのよね?私が呼んだ小説ではそうよ?
だから、私たちに子供ができたら庶子にしないために私と再婚するってことだったのに。」
小説……って。この国の法律を読みなさいよ。
ひと昔前、娘婿に爵位を譲ると娘が離婚されるという乗っ取り事案が数件起こった。
そのため、婿に爵位が渡らないように女性でも爵位が継げるように法律が変わったのだ。
娘婿が妻に代わって仕事をするのは問題ないが、あくまでも爵位は妻にあるのだ。
離婚すれば他人。爵位の継承は血筋重視となった。
リリスがここまでおバカだったとは。
そう言えば、一緒にいなくなってから入学後の最初の試験で、下から3番目だったものね。驚いたわ。
学力だけが賢さの基準ではないけれど、うん。おバカだわ。
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