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しおりを挟む家族との別れを済ませ、王宮からの迎えの馬車に乗った。
もう侯爵邸に来ることはないだろう。
寂しい思いを振り払い、王宮での新しい生活が明るい未来に繋がるようにと笑顔をつくっていた。
王宮の居住区に着き、サナと名乗った侍女に自分が過ごす部屋へと案内された。
内装は、派手でも地味でもなくシンプルかつ上品に纏められており、一目で気に入った。
寝室や風呂、洗面、クローゼット、テラス、侍女の待機部屋など一通り説明を受け、最後に説明されたドアを開けると…
「こちらは国王陛下とお使いになられる際の寝室です。
向こう側にあるドアは国王陛下の私室に繋がっております。」
「えっ?ではここは本来王妃様がお使いになられるお部屋なのでは?」
「いえ、王妃様の私室は国王陛下の私室の向こう側にあり、こちらと同じような造りになっております。」
思わず顔が引きつりそうになった。まさか王妃様と同じ階で過ごすことになるとは。
「不思議な部屋の配置だと思われますよね?
実は、昔の国王に性欲が強い方がおられたそうで…
廊下に出ずに王妃の部屋から側妃の部屋まで中を通って裸のまま移動できる部屋造りにしたそうです。
あ、現国王陛下はそういう使い方をされることはないはずですよ?
王妃様もフェリシア様がこのお部屋を使われることは了承されておられます。」
……王妃や側妃という存在は国王の子を産むってことが重要で常識に目を瞑る必要がありそうね……
「国王陛下はもうまもなく、こちらに来られる予定となっております。
お茶をご用意いたしますので、どうぞお座りください。」
そう言われソファに座ったところ、ドアがノックされ国王陛下、宰相、侍従、護衛と思われる方々が入ってきた。
立ち上がってカーテシーをすると、
「座ってくれ。話をしよう。」
と、気軽に声が掛けられ、再び座った。
「話をしたこともないのに側妃にと言われて戸惑ったことだろう。
改めて、国王のウィリアムだ。よろしく。」
「フェリシアと申します。こちらこそよろしくお願い致します。」
「さて、今日からここで過ごしてもらうが、正式に側妃とするのは一週間後とする。
側妃とは通常の結婚式は出来ないが、書面にサインする必要はある。
侯爵夫妻と君の兄夫婦とも顔を合わせたいので、その日に身内だけで昼食会を予定している。
まぁ、結婚式と披露宴の代わりみたいなものだ。
それまでの一週間、非常に短い婚約期間みたいなものだが、毎日時間をとって話をしよう。
全く知らないより少し知ってからの方が夫婦として過ごしやすいと思うんだ。いいかな?」
「お心遣い、ありがとうございます。楽しみにしております。」
「じゃあ、また後で。夕食後か寝る前になるかもしれないが声をかけるよ。
この後、王妃が来るはずだ。問題はないと思うが…適当に付き合ってやってくれ。」
そう言って部屋を出て行った。いや、一人残ってる…
「「……」」
残った護衛と見られる人物と目が合った。が、どうしてここにいるのか首を傾げると、
「…お忙しい陛下は私を紹介するのを忘れたまま去ってしまいましたが…
フェリシア様の護衛となりましたルイスと申します。あと4人担当護衛がおり順にお側につきます。
よろしくお願いいたします。」
そして後ろからも声がかかった。
「改めまして、私はフェリシア様の筆頭侍女サナと申します。
こちらもあと4名担当侍女がおります。
フェリシア様が快適にお過ごし頂けるよう、誠心誠意お仕えいたします。よろしくお願いいたします。」
「まぁ。私の侍女の方だったのね。ごめんなさい、気がつかなくて。
フェリシアです。
王宮内のこともしきたりのことも、よくわからないから頼りにします。よろしくね。」
2人と挨拶を交わし、気になっていたことを聞いた。
「先程、陛下は王妃様がこちらまで来られるとおっしゃいましたが、私がお伺いすべきでは?」
「王妃様が言い出されたようですので、お気になさらなくて大丈夫です。」
その時、ドアがノックされた。王妃様が来られたようだ。
フェリシアは国王陛下に会うよりも緊張が高まった。
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