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しおりを挟むエスメラルダがザフィーロを妊娠した話から最近のことまで話し終えたとき、ザフィーロは腹を抱えて笑い出した。
「え、ちょっと待って。リルベルに似た人形?ドレス?着せ替えて愛でるのか?僕が?」
「あなたは笑うけどね、こっちは真剣に悩んだの。だって、本物の少女を連れて来るわけにはいかないじゃないの。
もちろん、そんなことで満足できるかは疑問だったけど、犯罪者にさせないためには人形で我慢してもらうしかないと思って。」
「思考がぶっ飛んでるね。まぁ、それだけ不安だったんだね。心配しないでも本当にそんな性癖はないよ。」
「本当の本当に?」
「ない。隔離部屋も必要ない。もちろん、人形も。嘘偽りなく本当に。」
エスメラルダはモヤモヤとしたものが晴れるのを感じた。
そして久しぶりに真っ直ぐと純粋な気持ちでザフィーロを見つめることができた。
「ごめんね。こっち来て。」
エスメラルダはベッドの端に座るようにザフィーロを呼んだ。
そして座ったザフィーロを抱きしめた。
「ふふ。抱きしめるのは久しぶりね。あなたを愛しているわ。産んだことに後悔もしていない。
あなたを失いたくなくて心配し過ぎたわ。あなたとあの人は別人。わかってるのに。
罪のない人を苦しませる犯罪はよくないわ。それぞれに家族がいる。みんな苦しむから。」
「わかってる。僕は大丈夫。不安に思う必要はもうないよ、……母様。」
「嬉しい。あなたから母様って呼ばれることはないと思っていたわ。ありがとう。
ザフィーロ、あなたがラース公爵家の跡継ぎよ。公表はまだ先だけど、自覚を持ってね。」
「えー……僕、伯爵か子爵でいいんだけど。その方がリルベルとのんびり過ごせそうだし。」
エスメラルダは抱きしめていたザフィーロを離して目を見て言った。
「ダメよ。産まれたばかりのあなたの妹、あの子を公爵になんてできないわ。守ってくれなきゃ。」
男の子ならまた違ったかもしれない。でもザフィーロがいるのにエスメラルダに続いて女の子を跡継ぎにするのは親族からも不満の声があがるに違いなかった。
それに、性癖に問題がないのであれば元からザフィーロが跡継ぎにするつもりだったのだから。
「あー……それもそうか。でもあと10年くらいは母様が公爵のままで頑張ってほしいな。」
「えっ……10年も?」
「10年後でも僕まだ26歳だよ。リルベルと結婚するのが23歳になるから、もっと後に継いでもいいと思うくらいだけど?」
そう言われればそうかもしれない。エスメラルダは20歳で公爵になったけど、それは父が亡くなったからであって、通常は30歳を過ぎてから公爵になる場合が多い。
まだまだ先は長いとため息をついた。
「ねぇ、僕の出生の秘密は誰が知ってるの?」
「父と医師は亡くなったから、私と侍女、母と侍女、そしてレイリーの5人ね。あなたで6人。」
「ふ~ん。さすがにリルベルには秘密にしなきゃだね。これ以上増やせない。」
「そうよ。秘密は墓場まで持っていくと誓ってもらっているから。あなたもね。」
侍女二人は未婚で実家に戻っても居場所もない。公爵家に忠誠を誓い、裏切ることはない。
「あなたにも知られる予定ではなかったけれど、気づいちゃうなんて。」
「まぁ、気づいたときは驚いたけどね。でも父上も母上も息子だと思って接してくれていたし、母様……姉上も可愛がってくれて嫌われてないのがわかっていたから、こうやって聞けるんだよ。妹も可愛がりたいし。」
今か、死に際にしか聞けないと言うザフィーロに、確かに姪より自分の妹だと思いながら接することができるのは、より親愛の情が増すだろうと思った。
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