17 / 20
17.
しおりを挟むザフィーロは姉上として慕ってきた実母エスメラルダに少し嘘をついた。
実父ラルゴという男は少女を愛でる性癖があったという。
生きている少女を人形のように無表情に躾け、着せ替えて愛でる性癖だったとか。
少女たちの純潔は、その実父に奪われたわけではなく父が興味を失った後に回された貴族が奪っていた。
実父が襲ったのは実母エスメラルダだけだったらしい。
しかし、そのことは公爵家の僅かな人数しか知らず、王家も知らないので、実父は本来であれば処刑されるほどの罪ではなかったという。
だが、王族として相応しくないと自ら毒杯を希望したらしい。
死んで詫びても意味はないのだが、王族が関わっていた犯罪として幕引きに相応しい。
ザフィーロは実父と同じ性癖は確かにない。
だが、これも一種の性癖ではないかと思うことはある。全くないと言ったのは少し嘘になるのだ。
ザフィーロは、7歳のリルベルの泣き顔に一目惚れした。
他の子の泣き顔にいい感情を持ったことはない。
リルベルだけなのだ。
もちろん、笑顔も可愛いと思っている。泣き顔はキッカケだったのだろう。
でも、16歳になった今、違う欲情を抱いている。
リルベルを性的に攻めて泣かせたいと思っている。
きっと、本能的に察知したのだろう。
将来、この子が苦痛や悲しみではなく、悦びの感情で見せる泣き顔が一番美しくなる、と。
まだ幼いリルベルを襲う趣味はない。そこは実父と全く違う。
だが、結婚まで何もせずに待っていられるかと言えば、さすがに無理だろう。
最後まで交わらなくとも、リルベルを泣かす方法などいくらでもある。
15,16歳になれば少しはいいだろう?
口づけなら14歳くらいからでもいいか?
ならあと三年は優しい王子様のような婚約者でリルベルがもっと僕に夢中になるように仕向けるさ。
演じるのは得意だから。
誰だって、好きな相手にはいいところを見せるだろう?
誰だって、好きになるキッカケは人それぞれだろう?
それが一人の人にだけ向いていれば、婚約者を一途に愛する男となるじゃないか。
それを、誰も性癖とは言わないだろう?
だから、これは実母エスメラルダが恐れた性癖とは違うと思うんだ。
だけど、確かに7歳のリルベルに抱いたにしては後ろめたい思いもあって、少し嘘をついたんだ。
安心してほしくて。
リルベルと結婚したいと言った時、姉上は驚くほど血の気の引いた顔をした。
その時にはもうクリスタと15歳で婚約解消する方向で姉上とは話を済ませていたので、次の婚約者の希望を言っても問題ないと思っていた。
『内々に打診しておいて、クリスタとの婚約解消が済んだ頃合いを見て新たに婚約を結びましょう』
そう言ってくれると思っていた。だが違った。
『リルベルって……まだ6歳か7歳の幼女じゃないの!嘘でしょ?!少女どころか幼女趣味?』
ザフィーロに向かって首を横に振った姉は、フラフラっと部屋から出て行き、翌日にはレイリーとの結婚を決めていた。
姉とレイリーが何年も付き合っていることには気づいていたが、結婚する気はないようだったのに。
つまり、この時までザフィーロを跡継ぎにするつもりだったのだと気づいた。
だが、リルベルとの結婚を望んだことで、姉上は僕の何かを恐れていた。
偶然知ったのが、姉の元婚約者、元王子殿下の性癖のこと。
姉の歳を考えるとまさかと思ったが、あの拒絶具合を考えると自分が姉の子だと思うとしっくりきた。
あぁ、失敗したなぁ。言うのが早すぎた。せめて、クリスタとの婚約を解消してから言えばよかった。
実父のことを知っていたら、僕なりにリルベルを望む理由を尤もらしく説明したのに。
それからは、僕的には姉に子供ができてくれれば、面倒な公爵にならずに済むかなって思うからしばらく様子見したんだ。
だけど、やっぱり僕が跡継ぎかぁ。
可愛い妹には苦労させたくないから、仕方ないね。
1,264
あなたにおすすめの小説
冷徹公に嫁いだ可哀想なお姫様
さくたろう
恋愛
役立たずだと家族から虐げられている半身不随の姫アンジェリカ。味方になってくれるのは従兄弟のノースだけだった。
ある日、姉のジュリエッタの代わりに大陸の覇者、冷徹公の異名を持つ王マイロ・カースに嫁ぐことになる。
恐ろしくて震えるアンジェリカだが、マイロは想像よりもはるかに優しい人だった。アンジェリカはマイロに心を開いていき、マイロもまた、心が美しいアンジェリカに癒されていく。
※小説家になろう様にも掲載しています
いつか設定を少し変えて、長編にしたいなぁと思っているお話ですが、ひとまず短編のまま投稿しました。
だってわたくし、悪女ですもの
さくたろう
恋愛
妹に毒を盛ったとして王子との婚約を破棄された令嬢メイベルは、あっさりとその罪を認め、罰として城を追放、おまけにこれ以上罪を犯さないように叔父の使用人である平民ウィリアムと結婚させられてしまった。
しかしメイベルは少しも落ち込んでいなかった。敵対視してくる妹も、婚約破棄後の傷心に言い寄ってくる男も華麗に躱しながら、のびやかに幸せを掴み取っていく。
小説家になろう様にも投稿しています。
報われなかった姫君に、弔いの白い薔薇の花束を
さくたろう
恋愛
その国の王妃を決める舞踏会に招かれたロザリー・ベルトレードは、自分が当時の王子、そうして現王アルフォンスの婚約者であり、不遇の死を遂げた姫オフィーリアであったという前世を思い出す。
少しずつ蘇るオフィーリアの記憶に翻弄されながらも、17年前から今世まで続く因縁に、ロザリーは絡め取られていく。一方でアルフォンスもロザリーの存在から目が離せなくなり、やがて二人は再び惹かれ合うようになるが――。
20話です。小説家になろう様でも公開中です。
記憶を無くした、悪役令嬢マリーの奇跡の愛
三色団子
恋愛
豪奢な天蓋付きベッドの中だった。薬品の匂いと、微かに薔薇の香りが混ざり合う、慣れない空間。
「……ここは?」
か細く漏れた声は、まるで他人のもののようだった。喉が渇いてたまらない。
顔を上げようとすると、ずきりとした痛みが後頭部を襲い、思わず呻く。その拍子に、自分の指先に視線が落ちた。驚くほどきめ細やかで、手入れの行き届いた指。まるで象牙細工のように完璧だが、酷く見覚えがない。
私は一体、誰なのだろう?
お飾り妻は天井裏から覗いています。
七辻ゆゆ
恋愛
サヘルはお飾りの妻で、夫とは式で顔を合わせたきり。
何もさせてもらえず、退屈な彼女の趣味は、天井裏から夫と愛人の様子を覗くこと。そのうち、彼らの小説を書いてみようと思い立って……?
婚約者が他の令嬢に微笑む時、私は惚れ薬を使った
葵 すみれ
恋愛
ポリーヌはある日、婚約者が見知らぬ令嬢と二人きりでいるところを見てしまう。
しかも、彼は見たことがないような微笑みを令嬢に向けていた。
いつも自分には冷たい彼の柔らかい態度に、ポリーヌは愕然とする。
そして、親が決めた婚約ではあったが、いつの間にか彼に恋心を抱いていたことに気づく。
落ち込むポリーヌに、妹がこれを使えと惚れ薬を渡してきた。
迷ったあげく、婚約者に惚れ薬を使うと、彼の態度は一転して溺愛してくるように。
偽りの愛とは知りながらも、ポリーヌは幸福に酔う。
しかし幸せの狭間で、惚れ薬で彼の心を縛っているのだと罪悪感を抱くポリーヌ。
悩んだ末に、惚れ薬の効果を打ち消す薬をもらうことを決意するが……。
※小説家になろうにも掲載しています
だって悪女ですもの。
とうこ
恋愛
初恋を諦め、十六歳の若さで侯爵の後妻となったルイーズ。
幼馴染にはきつい言葉を投げつけられ、かれを好きな少女たちからは悪女と噂される。
だが四年後、ルイーズの里帰りと共に訪れる大きな転機。
彼女の選択は。
小説家になろう様にも掲載予定です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる