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しおりを挟む第三王子の事件から、今の婚約を解消してまでシャルロッテを口説くのは非常に世間体が悪くなってしまうため、令息たちは踏み込めずにいた。
シャルロッテから好意を示してくれれば、仕方なかったと言い訳もできるのに…
もちろん、シャルロッテにそんな気はない。
令嬢たちは、第三王子がやらかしたお陰でシャルロッテに対する令息たちの気持ちが沈静化したと喜んでいた。
ちなみに、侯爵令嬢キンバリーも喜んでいた。
第三王子を好きではなかったキンバリーは、シャルロッテに感謝したい気持ちだった。
以前、白紙に戻した婚約者と再び婚約したという。
侯爵もキンバリーも、どうせ不貞でもするだろうからその時に婚約破棄するつもりでいたのだ。
第二王子とその婚約者である公爵令嬢ブリジットは、個人的にシャルロッテとキンバリーに謝罪をしてくれた。
ブリジットは特に関係はないが、義理の弟になるはずだったことで気に病んだ。
その縁で、3歳年上のブリジットと1歳年上のキンバリーとは仲良くなれた。
シャルロッテが15歳になるひと月前、ジェットが王都にやってきた。
婚約を白紙に戻すか継続するかの確認である。
公爵邸にやってきたジェットと約一年ぶりに会ったシャルロッテは、胸に飛び込んだ。
淑女らしく挨拶するつもりでいたが、会いたくて仕方がなかったのである。
「シャルは相変わらずだね。元気だった?」
「うん。ジェットも元気だった?おじ様とおば様は?」
「みんな元気だよ。シャルに会いたがってた。」
執事に促されて応接室に向かうとウォルトもやってきた。
「やあ。久しぶりだね。元気そうだ。」
「ウォルト様もお元気そうで。」
ソファに座り、お茶を飲みながら軽く雑談をした後にウォルトがシャルロッテに聞いた。
「さて、シャルロッテ。この一年王都で生活してどう思った?気持ちに変化はあったかな?」
「正直に言うと、私はどこでも順応できると思うわ。
だから、ジェットが領地から出ないなら領地暮らしにも何の不満もないの。
年に数日、家族や友人に会いに王都に来る。それで十分よ。」
「…だそうだよ、ジェット。シャルはブレないよ。
それに、第三王子の事件で高位貴族からの縁談話はピタッとなくなった。
結んでいる婚約を解消しにくくなったからね。
もうこれはジェットにシャルを貰ってもらうしかないね。」
「シャルとウォルト様が僕でいいのなら、問題ありません。」
「よかった!じゃあ、結婚式は一年後ね。楽しみだわ。」
「学園に通いながら結婚式の準備は大変じゃないか?半年遅らせても…」
「学園に一年だけ通う必要ある?爵位を継ぐなら三年でしょ?私は継がないし。」
「まぁ、主に友人と人脈作りみたいなものかな。
一年だけ通うっていうのは16歳で結婚する令嬢の自由時間みたいなものだ。
昔の政略結婚は歳が離れた結婚も多かったからね。
無理を強いる親から解放された自由だよ。」
「そういうことでしたか。
でも、学園で同学年の令息を知ってしまうと、反対につらい気が…」
「思い出とするか心残りとするかは令嬢次第だけどね。
君たち二人みたいなもんだ。歳の差婚なんだから。」
言われればそうだった。
「じゃあ、学園には半年だけ通おうかな。
ウエディングドレスは今から注文すれば十分でしょ?
あとは領地の屋敷よね。
ジェットと私の部屋の内装をおば様と考えたいわ。
半年間、行ったり来たりすれば、あっという間に16歳になるわね!」
僕とじゃなくて母と考えるのか。そういうものか?別にいいけどね。
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