夢を現実にしないための正しいマニュアル

しゃーりん

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婚約式後の生活は、公爵家には思ったほどの変化はない。

ジークとカイルについては、同じ生活。
マリエルとリリーベルについては、週2日3時間だけ王城へ行くだけで、今までの予定をちょこちょこと変更した程度の変化である。


だが、王族側では周囲の変化も慌ただしかった。

…婚約式前までにアダム王子付きの侍従・侍女・乳母を調査・監視したところ、問題点の続出であった。

侍従と侍女に関しては、甘やかして自分たちを頼るように仕向けて、購入品の一部に自分の物も購入できるようにおねだりしたりして、甘い汁を吸う気であったと判明した。
既に何点か少額の購入品があったが、二人への依存度はまだ低かった。

乳母に関しては、元々お役御免の時期は過ぎていた。
が、挨拶や食事のマナーを担当すると申し出があり、延長していた。
そのはずが、王子がかわいくて甘やかしたくて自らの手で食べさせたり…マナー教育は?となっていた。
当然、母より身近にいるため、誰よりも王子が甘えた人物だ。


そして婚約を機に、人員整理が行われたのである。


王太子が子供の頃に世話をしてくれた侍従と侍女を現在いた部署から呼び戻し、アダム王子を頼んだ。
それぞれの下に二人が信頼できる人材を配置し、徐々に仕事を教えていくようにした。

とにかく急遽必要となったため、王太子が確実に信頼できる者を頼った結果ではあるが、『ひとまず出足好調?』とアダム王子の人格形成の向上に向けて歩みだした。…間に合うかな?


急なことで王子は戸惑ったが、意外とあっさりうまく丸め込まれ新しい生活が始まった。



教師については、まだ時間があるため細かく調査をすることにした。

各担当の中から数人ずつ選出してもらい、教える姿勢、王子との相性、後ろ暗い裏がないか、時間を要する。

リアナ王女の過去の教師と現在の教師、ここにも調査を入れることにした。
王女は隣国に嫁ぐ予定で本人も喜んでいる縁談なのだが、王太子は『リアナ女王』案が頭にチラつき、王女に変な入れ知恵をする人物がいないか不安に感じていた。

おそらくそれは、バカ王子を見て国を心配した一派による案なので、王子が問題なくなれば未来に話題にもならないはずである。


リアナ王女が隣国に嫁ぐのは18歳、その時アダム王子は15歳である。…そう夢の終わりの時期…

王子に問題が起こった場合、王女は嫁げるのか…

王太子は、アダム王子の未来は変わると信じているが、次期国王として『もう一人子供が必要』という思いもあった。万が一の場合、直系が途絶えるのだ。
この国の中でリアナとアダム以外に自分の次に王太子になれるのが、現国王の姉の娘の子しかいない。


王太子はルナリーゼに相談することにした。


「ルナ、もう一人子供を産む気はある?」


その言葉だけで、ルナリーゼは王太子が言いたいことを把握した。


「そうね、その考えは次期国王として必要よね。わかってるわ。私も考えたもの。
 先に確認したいの。
 私が断った場合、側室制度を復活させて子供を産ませる?」


「まさか。誰に何を言われようと、それはないね。私にはルナだけだ。
 
 アダムが王太子になれなかった場合は、嫁いだリアナの子でもいいんじゃないか?
 隣国とは元々一つの国だったんだ。
 別に乗っ取られるわけでもない。
 <魔の森>の結界の恩恵を受け続けても恩着せがましいことなど言わない国だ。
 
 貴族もそのままだろう。自分たちに影響がなければ文句もないだろう。」


「よかった。今28歳だから、産めるか心配だったの。
 もちろん、アダムも最後まで見捨てない。
 もし子供が授かれたら、国のためじゃなくて私たち家族が望んで生まれて来てくれたって思いたいもの。」


「そうだな。じゃあ昔みたいに子供が出来やすい日前後の予定は軽めに調整すること。
 疲れて最中に寝てしまわないようにね。
 まぁ、寝てしまっても気絶してしまっても今までみたいに最後まで楽しませてもらうけど。
 寝てたのにいつの間にか子供が出来ましたってなるよ?」


王太子は普段は穏やかで優しいが、閨では少しだけ鬼畜だ……。




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