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≪婚約式前日≫
夢での出来事はすべて書き終えたし、王太子殿下に頼まれた教師の名前も別紙に書き出した。
今日は明日の婚約式の準備を確認するだけ。といっても大してすることもない。
6歳同士の婚約なので、披露パーティーもしない。書類に署名して祝福を受けて終わりだ。
もちろん、リリーベルの衣装は……夢で見たのと同じだ。
前から用意していたのだから仕方がない。別の衣装にしようかと悩んだけれど、始まりを変えるのは
よくないと思い、そのままにすることになった。…マリエルの衣装も…
昼を過ぎ、屋敷の中が慌ただしくなっていた。
マリエル付の侍女ララに何かあったのか確認に行ってもらうと、公爵夫妻のお戻りだそうだ。
現在の予定では、婚約式は親子だけの出席だったはず…
(…そういえば、夢での婚約式の場面の片隅にいたわ。国王夫妻もいたわ。あぁ。孫可愛さに出席ね。)
1ヵ月ぶりの公爵夫妻に挨拶をし、ジークの帰宅後、6人で楽しい時間を過ごした。
そして、やはり婚約式には6人で行くことになった。
≪婚約式当日≫
馬車2台に6人が乗り込み、王城へと向かう。
案内されたのは、敷地内にある大聖堂。応接室で署名する予定が大聖堂?
疑問に思ったが、大聖堂の応接室に通され、納得した。
(夢で見た応接室は大聖堂にあったのね。)
目の前には国王夫妻もおり、やはり夢と同じ状況になっている。
挨拶を交わし、早速、書類に双方が記入し終えた。
それを持って、みんなで大聖堂の祭壇前に向かう。
司祭様にアダム王子とリリーベルが婚約書類を提出すると、確認を終えた司祭様が魔力を流す。
書類が少し光り、これで二人の婚約は無事受理された。
司祭様が可愛い二人を祝福してくださった。
婚約と結婚の書類には、自分の署名に魔力が含まれている。
そこに聖職者特有の魔力を流すことにより、補完される。
簡単に解消できないようになっている。
たまに、聖職者の魔力が拒絶される場合がある。
別人の署名であったり、存在しない人物であった場合などである。
生まれて名前が決まると、魔力と一緒に登録される。
魔力がほとんどなくても魔石を持つことで登録可能な仕組みらしい。
なので、魔力と名前が一致しないと受理されないのである。
大聖堂から出ると、記録画を撮るので並ぶように言われた。
記録画とは最近隣国で発明されたもので、姿形が一瞬で記録できる絵画のようなものである。
12人全員で一枚、主役2人で一枚、あとでいただけるそうだ。
(今日のリリーは本当に可愛い!…アダム王子も可愛いわ…可愛いままでいてくれないかしら?)
15歳のアダムの姿の記憶があるのに、マリエルは可愛いまま成長することを願っていた。
かっこよく成長するはずのアダムは最低最悪王子なので、脳内拒否中である。
王城の庭園でお茶を飲むことになった。
アダム王子とリリーベル、リアナ王女、カイルの四人は一緒のテーブルに座り、仲良くお菓子を食べ始めた。
大人たちは、男女に分かれて話をすることになった。
男四人(国王、王太子、公爵、ジーク)は、爵位継承の時期や事業、隣国の発明品に子供たちの可愛さまで
幅広く話がとんでいた。
女四人(王妃、王太子妃、公爵夫人、マリエル)は、今日の可愛い二人の話題から、徐々に声が小さくなって
テーブルに身を乗り出しながら話をし始めた。
「マリー、王妃様にもね、大体の説明はしているの。王妃様と公爵夫人も昔の友人が夢を見たそうよ。
何故か、王族の周りや知人に夢を見る人が多いのよね。
それとも、知らないだけで他でもあるのかしら?」
「ルナ、そのことなんだけど、王妃様、書庫にある今までの伝記を読ませていただけませんか?
何か傾向がつかめるのではないかと思うのです。特に学園で出会う令嬢の…
ルナが見た夢の令嬢ってひょっとして、オクト男爵の庶子だったアスラさんじゃない?
問題を起こして学園からいなくなった…違う?」
「そうよ。よくわかったわね。ジーク様が彼女に夢中になっていたらと思うと恐ろしいわ~」
「我が公爵家の未来をルナリーゼ様とマリーさんが救ってくれたのよ。本当に良かったわ。
その夢のままだと確実にジークは廃籍して平民行きだったわね。」
「私とルナの夢の令嬢は、おそらく悪意があるタイプだと思うんです。
他の夢ではどんな令嬢か分析してみたいのですが、読ませていただけませんか?」
「もちろんいいわ。アダムとリリーちゃんのためですもの。いつ来てもいいようにしておくわ。」
「ありがとうございます。」
話が纏まって、ルナリーゼが侍女に合図を出した。
侍女が手にした紙を渡され、見るとそれはリリーベルのアダム王子の教育予定表だった。
「しばらくは二人が楽しく遊びながら出来るマナーやダンス、音楽を中心にするわ。
自国の歴史に近隣国との交流、大陸語などの通常の高位貴族で学ぶ内容の更に重要なところをこれから
王子・王子妃教育に組み込んでいくけど、座学は今のアダムには無理ね。
リリーちゃんには申し訳ないんだけど、アダムのレベルに合わせてもらうことになる。
あの子のレベルは壊滅的に低いわ……確認して眩暈がしたわ。
特に食事のマナー…まだ完璧でないと聞いていたから、お茶の時間だけ一緒だったの。
クッキーは手掴み、果物はフォーク、飲み物はグラスでマナーが気にならない状態だったの。
ひとまず、リアナの先生にお願いしたの。信用できるわ。
本格的に始める頃までに、適任者を探すわね。」
「わかったわ。じゃあ私はリリーが登城する時に一緒に来て、伝記を読ませてもらうわね。」
こうして、なんとか無事に婚約式を終えたことで、夢を現実にしないための奮闘が始まった。
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