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王城でアダム王子のもとへ向かうリリーベルと別れ、マリエルは書庫に案内してもらった。
「この一角にマリエル様がご覧になられる書物を準備してございます。
こちらのテーブルとソファ、紙とペンもご自由にお使いください。
何か御用がおありでしたら、こちらの魔石でお呼びください。」
案内してくれた侍女が魔石を渡して出て行った。
緑色の風の魔石は、呼応する魔石に声を運んでくれるため、離れた場所にいても会話が出来て便利だ。
…それにしても、意外と伝記がある…
ひとまず、最近のものから遡って読んでみることにした。
読みながら、まず夢の①婚約した男女の家の爵位・②入学前の二人の仲・③入学後の仲・④出会う異性の爵位・⑤異性との出会い方・⑥嫌がらせの内容・⑦嫌がらせ判明の経緯・⑧罪の有無・⑨処罰
を書き込み、夢の出来事を変えた場所とその後の変化を纏めていった。
毎回、1伝記分を目途に3ヵ月ほどの時間を要した。
…全部見る必要性はなかったが、マリエルは意地になってしまった。
結果、前に王太子から話に聞いた通り、婚約と異性の入学は必須であるとマリエルも思った。
学園で出会う異性は、平民か下位貴族の庶子ばかりであった。
出会う場面は、ぶつかる・つまずいたところに手を差し伸べる・場所がわからなくて困ってるの3点のみ。
嫌がらせについては、夢の中で誰も実際に見る場面はなかった。
状況的には自作自演か口先だけかと思われるが、憶測でしかない。
そして圧倒的に少なかったが処罰されるのが令息の場合、婚約者の令嬢と婚約解消にはなるが大した罪にならない。令嬢は学園で出会った平民(商会の跡取り息子)や男爵家の庶子(将来有望)に嫁ぎ、幸せな結果であった。
処罰されるのが令嬢の場合、爵位が高いほど罪が重い。リリーベルは公爵令嬢だったから……
ちなみにマリエルは元侯爵令嬢だったが、夢のままだと規律の厳しい修道院送りになるはずであった…
結果、夢のままでは………
・嫌がらせをしたとされる婚約していた令嬢には、何らかの処罰
・学園で出会う令嬢に靡いた令息は、家から廃籍される確率が高い
・学園で出会う令嬢はその後の調査で悪意がバレて、最終的に廃籍された令息と別れる
誰も得をしないとわかる。
となると、やはり必要になってくるのが変える出来事である。
・婚約者との仲が良くない場合の婚約解消の時期 → 遅くなりすぎると嫌がらせ罪が発生するから
・平民との恋愛に生じる自分の立場や将来性 → 親が納得できる相手じゃない限り自分が平民になるから
・学園内では一人で行動しない → 冤罪防止
やはり、王族・高位貴族の令息には学園入学前に念を押して教えるべきである。
・口元を隠さず大きな口を開けて笑うこと
・異性に簡単に触れること
・愛称で呼ぶこと
・婚約者に親しげな態度を見せつけること
・二人きりになろうとすること
・街へ連れ出し目立つ行動をとること(贈り物をしてもらい寵愛を演出)
平民がやりがちなことだが、これらの女性は貴族社会では受け入れられない。
そして、高位貴族に必要な知識、マナー、ダンス、大陸語などは簡単にマスターできるものではない。
『理解した上での適切なお付き合いを』と。
纏め上げた伝記の比較表?と王族・高位貴族令息に必要と思われる貴族令嬢と平民女性との比較表?をルナリーゼに見てもらった。
「やっぱり元になる夢にはある程度のパターンがあったのね。
このままアダムがリリーちゃんに夢中になってくれているままだと一番安心よね。
あとは平民女性の怖さを植え付けて…
ねぇ、出会うのは男爵の庶子だったわよね。出会いを潰して、彼女を影から監視してもらいましょう。
アダムが出会わなければ、誰か他にターゲットを見つけるはずだわ。
毒をいつ使うかわからなくなってしまうし、監視は必要よね?
学園で違反事項や処罰対象なことを見つけ次第、学園から追い出してしまえばいいのよ。
そうしたら安全だわ。
本当は罪をでっち上げたいところだけど、冤罪はさすがに良くないわね。
マリーとジーク様の時みたいに知らない間に相手が勝手に退場してくれているって理想よね。」
何やら所々に黒い発言が聞こえた気がするが…まぁ良い。
「この3ヵ月でとても仲が良くなったわね。子供たち。夢でも初めは仲良かったけど、それ以上に見えるわ。」
「元々、何度か会った後にアダムが『リリーちゃん、かわいいねぇ』って言ったのよ。
『結婚する?』って聞いたら、『うん』って言うから微笑ましいなぁって思ってただけだったの。
でも、アダムがリリーちゃんとの結婚がいつなのか楽しみにして聞いてくるから…
公爵家に婚約の打診をしちゃえってなったのよ。」
「そうだったのね。
ジークに、リリーはアダム王子と婚約が決まったよって言われたから、王太子殿下と決めたのかと思ってた。
ところで、ルナ?あなたの手の場所が気になるのだけど…」
「気付いた?昨日わかったばかりなの。妊娠したわ!」
「まぁ。おめでとう!王太子殿下がルナの一人占めをまた手放すことがあるなんて。
そうね。次期国王としてはあらゆる事態を想定してるのでしょうね。」
「昨年、リアナの婚約が決まった時にも考えたことはあるの。国内にいる後継者がアダムだけでいいのかって。
どうするかはレオ様に任せようって思ってたの。
ブランクがあったけど、意外とすぐ出来てびっくり。よかったわ。」
「王家で子供三人って珍しいわよね?伴侶に執着しがちの王家にとっては…ってアダム王子はどうなの?
夢ではそう見えなかったわ。」
「婚約に至った経緯は同じだろうから、好意はあったと思うの。
おそらくあの乳母があと数年そばに居たんじゃないかしら。
言葉巧みにリリーちゃんへの愛情を貶すように仕向けていたのかも。
多分、愛情の執着はもう片鱗を見せ始めている気がするわ。
このまま行けば、学園の令嬢には見向きもしないから安心ね。」
安心と執着への不安で複雑な気持ちになったマリエル。
『大丈夫よ!リリーベルは逃げないわ!』…心の中で祈っていた。…いや、逃げられないの間違いでは…
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