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しおりを挟むダニエルの婚約者だったケイトリンは、自分に非がないように婚約解消することを狙い、ダニエルとダイアナのためを思って自分は身を引きたいのに、父親が許さないと言いふらしていた。
それは、ダニエルという婚約者がいるのにケイトリンには恋人がおり、そのことに目を瞑ってくれていたストーンズ侯爵家を怒らせる結果になってしまったのだ。
「ポッシュ伯爵は、こちらが婚約解消で譲歩しているというのに頑なに認めないと言ってね、それにも困った。しかも、強引に解消しようとするなら破棄にして慰謝料を渡せと言い出したんだ。だから、こちらはケイトリン嬢の浮気の証拠をいくつも出した。」
「……ポッシュ伯爵は、慰謝料を貰おうとして、払う羽目になってしまったのですね。」
解消の時点で受け入れていればよかったと後悔したことだろう。
「まったく、実に愚かだよ。ケイトリン嬢も、慰謝料を貰えると思っていたみたいだし。継ぐ爵位のない男と一緒になることの意味が本当にわかっているのかどうか。」
ケイトリンは慰謝料を手にして、結婚生活の資金にするつもりだったのかもしれない。
しかし、今のような貴族の生活水準を保とうとすれば、あっという間にお金はなくなる。
物欲のあるケイトリンに耐えられるのかどうか。
あるいは実家で結婚生活を送れると思っている可能性もあるが、ストーンズ侯爵家との縁を駄目にしておいて実家に置いてもらえるとでも思っているのだろうか。
ケイトリンとその恋人は一つ下なので、結婚するとしてもまだ一年以上ある。
その間に二人の愛が冷める可能性は高い気がする。
そうなったとしても、もうダニエルの婚約者には戻れない。
「恋に溺れてしまって、現実が見えなくなるということは本当にあるのですね。恋をするなら婚約者にするべきですわ。その方が建設的ですもの。」
「ということは、婚約者になればあなたに恋してもらえるということか?」
「あら。そういうことになってしまいますわね。といっても、以前のわたくしはジルベール殿下に恋をしていなかったようですが。」
どうやら、恋愛の考え方は以前のダイアナとは違うのかもしれない。
「ならば、今のあなたのうちに求婚しておかないとな。
僕は女性が喜びそうな話術もない男だが、幅広い知識を持つあなたと話すことが楽しいと思えた。あなたとなら、どんなことも二人で一緒に前を向いて進めるんじゃないかと思っている。
日に日に美しくなっていくあなたの隣に立つ権利を、愛することが許される立場を得たい。
僕と結婚してくれませんか?」
ダニエルらしい、真っ直ぐな求婚だった。
「二人で一緒に。そう言ってくださるお気持ちがとても嬉しいですわ。求婚をお受けいたします。」
以前のダイアナは、一人で頑張っていた。
そのことの記憶がないダイアナは、話を聞いていて、とても寂しく感じた。
一緒に歩んでくれる人がいれば、今のダイアナも以前のダイアナも笑顔でいられる気がした。
求婚を承諾すると、ダニエルはその美しい顔に綺麗な笑顔を浮かべてダイアナを見つめた。
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