誰にも口外できない方法で父の借金を返済した令嬢にも諦めた幸せは訪れる

しゃーりん

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父は子供の実母が誰かを知らず、セバスしか知らないとなればセバスが辞めたり死んだりすれば知ることができなくなる。
僕は知っておくべきではないか。子供ながらにそう思ったラインハルトはセバスに言った。


「僕、実母が誰か知りたいんだけど?」

「それは……ご勘弁ください。素性は知らせない契約なのです。」

「契約書は破棄したんでしょ?じゃあ意味ないじゃないか。
 それに、僕には知らない兄弟がいるんじゃないの?」

「……そうですが。」

「兄弟だと知らないと、将来困ることにならないかな。
 妹はいる?妹と知らずに好きになってしまっても大丈夫なのかな。」
 
「……わかりました。ですが、何もない限り、知らない振りをしてください。
 私はあの女性にとても申し訳ないことをしてしまいました。
 今の幸せを壊すようなことをしたくないのです。」

「うん。わかった。近づくとしても僕のことを知っている実母の夫になった人にする。
 それでいい?」

「はい。ひどいことを申し上げてしまいましたが、お許しください。」


実母に興味はある。

だけど、元々母親がいない生活なので、名前を知っておくだけでよかった。

ついでに、シフォーヌの実母も聞いておいた。
亡くなっていると言っていたが、念のため。

パモ公爵も、僕たちが亡き母カサンドラの子供ではないと知っているが、それを公表することはないという。
王命での結婚なのに、わざと公爵家の血筋ではないカサンドラを嫁がせたから。
それを聞いて、亡き母の実家と何も交流がない理由がわかった。



その2年後、セバスが亡くなったことで実母の情報は僕と実母の夫だけが知っている。
あれから数回に渡って、セバスには詳しく経緯を教えてもらった。
まだ子供だった自分にはわからなかったことも、今では理解している。


僕は、実母について全く調査をしなかった。

調べなければと思ったきっかけは、学園の3年生になる直前だった。



新たな入学生を迎える前、新入生の挨拶を学力試験1位の者に頼むはずだった。

1位の者の名前が『セドル・コールマン』
 
コールマンという名前にドキッとした。親戚だろうか。異父弟だろうか。
そう思ったことがきっかけだった。

2位の者が侯爵令息でわずかな点数差。
教師たちは、家名の大きさから2位の侯爵令息を1位ということにして挨拶を頼むことにした。
このくらいの忖度は仕方がない。

特に、この学年には公爵令息がいないから。
公爵令嬢はシフォーヌがいるが、あの妹は馬鹿ではないが賢くもなかった。



調べてわかったこと。
 
セドル・コールマンは、コールマン伯爵の甥で跡継ぎ。
母親は、ラインハルトの実母だった。
更に2歳下にルミアという名の妹もいるとわかった。
夫は元グレンジャー伯爵家の次男でコールマン家に婿入りしていた。

この夫カイトが、実母ジュゼットが僕を産んだことを知っている人物。
セバスの話では、実母が僕を出産するまでの護衛兼監視員として雇っていたらしい。
カイトにもこちらの素性がバレないようにしたはずが、勘づいてしまったと言っていた。

これくらい知っておけば、とりあえずは大丈夫だろうと思っていた。






 

 
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