3 / 100
3.
しおりを挟む一般にも開放されている聖堂の中には、聖女候補たちが祈りを捧げる特別な部屋があるという。
そこで聖女候補の十人には各々が満足するだけ毎日祈りを捧げてほしいとのことだった。
ラヴェンナは両手を組み、『聖女にはなりたくありません。聖女にはなりたくありません。聖女にはなりたくありませーん。』と心の中で十回くらい唱えて一番に祈りを終えた。
ラヴェンナに続くようにジュリエッタも終え、二人で向かったのは外の東屋だった。
「ラヴェンナ様、午後からは何をなさる?」
ジュリエッタにそう聞かれ、ラヴェンナは答えた。
「ハンカチに刺繍でもしようかしら。ジュリエッタ様は?」
「そうねぇ。今日は何も考えていなかったから持ってきていないの。貸してくださる?」
「ええ。もちろんです。私、クッキーとかお菓子作りも試してみたいと思っているの。普段、厨房になんて入れてもらえないでしょう?でもここでならできるのはないかと思って。」
それをラウルード様にも食べてもらいたい。
ここでのお茶菓子にちょうどいいと思ったの。
もちろん、材料は自分で持ってくるわ。
奉仕活動として、だもの。
刺繍したものもお菓子も、孤児院などに引き取ってもらうわ。
そこで使ったり食べたりしてくれてもいいし、売ってくれてもいいし。
ひと月の間に、売れるようなお菓子になればいいけれど。あ、パンもいいかも。
「それは楽しそうね。ご一緒させてくれる?」
「ええ。捏ねたり混ぜたりするので、エプロンがあった方がいいかもしれないわ。」
厨房に入れてはもらえないけれど何度か覗いたことはあるし、お菓子作りの本は読んだことがある。
あの本の通りに作れば、自分でもできると思うの。
「ここの厨房を借りるのに予約が必要かしら?少し見回ってみましょうか。」
ラヴェンナはジュリエッタと共に聖堂内を散歩しようと立ち上がると、一人の聖人が声をかけてきた。
「ご案内させていただきます。」
ラヴェンナとジュリエッタは顔を見合わせた。
この聖人に聞こえるような距離で話をしていたわけではなかったのに。
「驚かせてすいません。ここの聖人たちは耳の聴こえがいいのですよ。内緒にしてくださいね。」
実は、祈りを終えた聖女候補たちを聖人たちが聖堂内を案内することになっていたらしい。
ラヴェンナとジュリエッタはあまりにも早く祈りを終えてしまったことで、聖人が間に合わなかったのだと気づいた。
彼女はラヴェンナたちを案内するために話が終わるのを待っていたらしい。
「お二方は実家から通われるということでよろしいでしょうか?」
「「はい。」」
「でしたら、昼食を召し上がる場所と、使用できる厨房の場所にご案内させていただきますね。」
昼食も持参可能だし、ここでも出してもらえるらしい。
奉仕活動も必須ではなく、読書をしたりおしゃべりをしていても構わないらしく、要はこの敷地内にいるだけで問題ないのだそう。
不思議ね。
1,374
あなたにおすすめの小説
存在感のない聖女が姿を消した後 [完]
風龍佳乃
恋愛
聖女であるディアターナは
永く仕えた国を捨てた。
何故って?
それは新たに現れた聖女が
ヒロインだったから。
ディアターナは
いつの日からか新聖女と比べられ
人々の心が離れていった事を悟った。
もう私の役目は終わったわ…
神託を受けたディアターナは
手紙を残して消えた。
残された国は天災に見舞われ
てしまった。
しかし聖女は戻る事はなかった。
ディアターナは西帝国にて
初代聖女のコリーアンナに出会い
運命を切り開いて
自分自身の幸せをみつけるのだった。
【長編版】この戦いが終わったら一緒になろうと約束していた勇者は、私の目の前で皇女様との結婚を選んだ
・めぐめぐ・
恋愛
神官アウラは、勇者で幼馴染であるダグと将来を誓い合った仲だったが、彼は魔王討伐の褒美としてイリス皇女との結婚を打診され、それをアウラの目の前で快諾する。
アウラと交わした結婚の約束は、神聖魔法の使い手である彼女を魔王討伐パーティーに引き入れるためにダグがついた嘘だったのだ。
『お前みたいな、ヤれば魔法を使えなくなる女となんて、誰が結婚するんだよ。神聖魔法を使うことしか取り柄のない役立たずのくせに』
そう書かれた手紙によって捨てらたアウラ。
傷心する彼女に、同じパーティー仲間の盾役マーヴィが、自分の故郷にやってこないかと声をかける。
アウラは心の傷を癒すため、マーヴィとともに彼の故郷へと向かうのだった。
捨てられた主人公がパーティー仲間の盾役と幸せになる、ちょいざまぁありの恋愛ファンタジー長編版。
--注意--
こちらは、以前アップした同タイトル短編作品の長編版です。
一部設定が変更になっていますが、短編版の文章を流用してる部分が多分にあります。
二人の関わりを短編版よりも増しましたので(当社比)、ご興味あれば是非♪
※色々とガバガバです。頭空っぽにしてお読みください。
※力があれば平民が皇帝になれるような世界観です。
婚約者から悪役令嬢と呼ばれた公爵令嬢は、初恋相手を手に入れるために完璧な淑女を目指した。
石河 翠
恋愛
アンジェラは、公爵家のご令嬢であり、王太子の婚約者だ。ところがアンジェラと王太子の仲は非常に悪い。王太子には、運命の相手であるという聖女が隣にいるからだ。
その上、自分を敬うことができないのなら婚約破棄をすると言ってきた。ところがアンジェラは王太子の態度を気にした様子がない。むしろ王太子の言葉を喜んで受け入れた。なぜならアンジェラには心に秘めた初恋の相手がいるからだ。
実はアンジェラには未来に行った記憶があって……。
初恋の相手を射止めるために淑女もとい悪役令嬢として奮闘するヒロインと、いつの間にかヒロインの心を射止めてしまっていた巻き込まれヒーローの恋物語。
ハッピーエンドです。
この作品は他サイトにも投稿しております。
表紙絵は写真ACより、チョコラテさまの作品(写真のID:22451675)をお借りしています。
こちらは、『婚約者から悪役令嬢と呼ばれた自称天使に、いつの間にか外堀を埋められた。』(https://www.alphapolis.co.jp/novel/572212123/891918330)のヒロイン視点の物語です。
私が嫌いなら婚約破棄したらどうなんですか?
きららののん
恋愛
優しきおっとりでマイペースな令嬢は、太陽のように熱い王太子の側にいることを幸せに思っていた。
しかし、悪役令嬢に刃のような言葉を浴びせられ、自信の無くした令嬢は……
【完結】聖女を害した公爵令嬢の私は国外追放をされ宿屋で住み込み女中をしております。え、偽聖女だった? ごめんなさい知りません。
藍生蕗
恋愛
かれこれ五年ほど前、公爵令嬢だった私───オリランダは、王太子の婚約者と実家の娘の立場の両方を聖女であるメイルティン様に奪われた事を許せずに、彼女を害してしまいました。しかしそれが王太子と実家から不興を買い、私は国外追放をされてしまいます。
そうして私は自らの罪と向き合い、平民となり宿屋で住み込み女中として過ごしていたのですが……
偽聖女だった? 更にどうして偽聖女の償いを今更私がしなければならないのでしょうか? とりあえず今幸せなので帰って下さい。
※ 設定は甘めです
※ 他のサイトにも投稿しています
婚約者様は大変お素敵でございます
ましろ
恋愛
私シェリーが婚約したのは16の頃。相手はまだ13歳のベンジャミン様。当時の彼は、声変わりすらしていない天使の様に美しく可愛らしい少年だった。
あれから2年。天使様は素敵な男性へと成長した。彼が18歳になり学園を卒業したら結婚する。
それまで、侯爵家で花嫁修業としてお父上であるカーティス様から仕事を学びながら、嫁ぐ日を指折り数えて待っていた──
設定はゆるゆるご都合主義です。
【書籍化決定】愛など初めからありませんが。
ましろ
恋愛
お金で売られるように嫁がされた。
お相手はバツイチ子持ちの伯爵32歳。
「君は子供の面倒だけ見てくれればいい」
「要するに貴方様は幸せ家族の演技をしろと仰るのですよね?ですが、子供達にその様な演技力はありますでしょうか?」
「……何を言っている?」
仕事一筋の鈍感不器用夫に嫁いだミッシェルの未来はいかに?
✻基本ゆるふわ設定。箸休め程度に楽しんでいただけると幸いです。
冤罪で殺された聖女、生まれ変わって自由に生きる
みおな
恋愛
聖女。
女神から選ばれし、世界にたった一人の存在。
本来なら、誰からも尊ばれ大切に扱われる存在である聖女ルディアは、婚約者である王太子から冤罪をかけられ処刑されてしまう。
愛し子の死に、女神はルディアの時間を巻き戻す。
記憶を持ったまま聖女認定の前に戻ったルディアは、聖女にならず自由に生きる道を選択する。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる