聖女になりたいのでしたら、どうぞどうぞ

しゃーりん

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一般にも開放されている聖堂の中には、聖女候補たちが祈りを捧げる特別な部屋があるという。
 
そこで聖女候補の十人には各々が満足するだけ毎日祈りを捧げてほしいとのことだった。

ラヴェンナは両手を組み、『聖女にはなりたくありません。聖女にはなりたくありません。聖女にはなりたくありませーん。』と心の中で十回くらい唱えて一番に祈りを終えた。

ラヴェンナに続くようにジュリエッタも終え、二人で向かったのは外の東屋だった。


「ラヴェンナ様、午後からは何をなさる?」


ジュリエッタにそう聞かれ、ラヴェンナは答えた。


「ハンカチに刺繍でもしようかしら。ジュリエッタ様は?」
 
「そうねぇ。今日は何も考えていなかったから持ってきていないの。貸してくださる?」

「ええ。もちろんです。私、クッキーとかお菓子作りも試してみたいと思っているの。普段、厨房になんて入れてもらえないでしょう?でもここでならできるのはないかと思って。」


それをラウルード様にも食べてもらいたい。
ここでのお茶菓子にちょうどいいと思ったの。

もちろん、材料は自分で持ってくるわ。

奉仕活動として、だもの。

刺繍したものもお菓子も、孤児院などに引き取ってもらうわ。
そこで使ったり食べたりしてくれてもいいし、売ってくれてもいいし。

ひと月の間に、売れるようなお菓子になればいいけれど。あ、パンもいいかも。


「それは楽しそうね。ご一緒させてくれる?」

「ええ。捏ねたり混ぜたりするので、エプロンがあった方がいいかもしれないわ。」


厨房に入れてはもらえないけれど何度か覗いたことはあるし、お菓子作りの本は読んだことがある。
あの本の通りに作れば、自分でもできると思うの。


「ここの厨房を借りるのに予約が必要かしら?少し見回ってみましょうか。」 


ラヴェンナはジュリエッタと共に聖堂内を散歩しようと立ち上がると、一人の聖人が声をかけてきた。


「ご案内させていただきます。」


ラヴェンナとジュリエッタは顔を見合わせた。
この聖人に聞こえるような距離で話をしていたわけではなかったのに。


「驚かせてすいません。ここの聖人たちは耳の聴こえがいいのですよ。内緒にしてくださいね。」 


実は、祈りを終えた聖女候補たちを聖人たちが聖堂内を案内することになっていたらしい。
ラヴェンナとジュリエッタはあまりにも早く祈りを終えてしまったことで、聖人が間に合わなかったのだと気づいた。
彼女はラヴェンナたちを案内するために話が終わるのを待っていたらしい。


「お二方は実家から通われるということでよろしいでしょうか?」

「「はい。」」

「でしたら、昼食を召し上がる場所と、使用できる厨房の場所にご案内させていただきますね。」
 

昼食も持参可能だし、ここでも出してもらえるらしい。

奉仕活動も必須ではなく、読書をしたりおしゃべりをしていても構わないらしく、要はこの敷地内にいるだけで問題ないのだそう。

不思議ね。
 

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