聖女になりたいのでしたら、どうぞどうぞ

しゃーりん

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聖堂に通い始めて二日後のことだった。


「ラヴェンナっ!」


名を呼んだのは婚約者であるラウルードだった。


「ラウルード様っ!」
 

今日の午後、来てくれることになっていた。
わずか三日前に会ったばかりなのに、すごく久しぶりの再会だと思われそうなくらいラヴェンナは喜んでしまい、『節度』を忘れてラウルードの胸に飛び込んだ。

案の定、聖人の咳払いが聞こえてラヴェンナはラウルードと苦笑した。


「家じゃないから節度と慎みが必要だったわ。」


そう呟いたラヴェンナに、ラウルードはククッと笑いながら座っていた東屋までエスコートしてくれた。
 
ジュリエッタとラウルードは同い年の公爵令嬢と侯爵令息なので、もちろん顔見知りである。


「あなた方、本当に仲がいいわね。」


ジュリエッタ様から感心したようにそう言われた。

ラヴェンナとラウルードは学園の行き帰りも一緒に過ごしている。
学年が違うため、昼休憩時は別々で、それぞれ友人との時間としている。

確かに仲はいいけれど、みっともないほどベタベタしているつもりはない。……多分。


「ジュリエッタ様は王子殿下をここにお呼びしないのですか?」 

「そうねぇ……呼んでも来ないのではないかしら。」

「あ、卒業されて公務でお忙しいのでしょうね。」

 
ジュリエッタ様の婚約者であるアレクサンドル第二王子殿下は先日学園を卒業された。
ラウルードとジュリエッタの一つ上、ラヴェンナの二つ上になる。


「……ごめんなさい、ラヴェンナ様。呼びたくない、が正しいかも。」

「え?」

「あの方、真面目過ぎるの。こうしておしゃべりする時間があるなら、聖女になる努力をしろっておっしゃるに違いないわ。」


ジュリエッタ様はそう言ってため息をついていた。 

な、なるほど?

ジュリエッタ様は聖女になりたくない。
でも、アレクサンドル王子殿下はジュリエッタが聖女になればいいと思っているらしい。


「でもジュリエッタ様が聖女になられたら……」


その後の言葉は言えない。言ってはいけない。憶測だから。


「今まで、王族で聖女になられた方はいないし、婚約者も聖女に選ばれていないはずよ。」


つまり、王家は聖女に選ばれた令嬢のプライベートまでは知らないということ。

ラヴェンナのクレスト侯爵家もジュリエッタのボッティ公爵家も過去に聖女と関わりがある。
そのため、憶測できるのだ。
 
聖女は任務を終えるまで、おそらく『乙女』のままであるということを。 

たとえ、婚約者と結婚しても、体の関係を持ってはいけないのではないか。


ラヴェンナが聖女になりたくない理由は、そこにあった。

 
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