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しおりを挟むいくら聖女が尊ばれる存在であっても、ラヴェンナは大好きなラウルード様とずっと一緒にいたい。
聖女になれば、聖堂にある転移室から国中の領地へ向かって結界を修復したり簡単には治らない怪我人の治療をすることになる。
要は、ひたすら働かなければならない。
立派な役割だとは思うけれど、ラヴェンナはそんな暮らしを望んでいない。
ほとんどの人は気づいていないか、気づかないようにされているように思う。
聖女による精神的な操作。
ラヴェンナとジュリエッタが何となく気づいているのは、一度聖女に関係した貴族家からはもう聖女は選ばれないからではないかと思う。
これは希望的観測でしかないけれど。
「何をどうすれば聖女に選ばれるのか、基準すらないのに努力しろと言われても困ってしまいそうで。」
ジュリエッタ様は婚約者であるアレクサンドル王子殿下をここに呼ばない理由をそう言った。
「基準、ないの?」
ラウルード様が不思議そうにそう聞いてきた。
「朝の祈りの時間と昼からの奉仕活動。そう言われたけれど、長さの決まりはないし、読書しても構わないのですって。
それでね、奉仕活動としてお菓子を作ってあなたにも食べてもらいたいと思ったの。で、昨日、クッキーを作ろうとしたのだけど……」
「あぁ、ひょっとすると魔力で焦がしたのか?」
ラウルード様に言い当てられてしまった。
「……そうなの。早くできるんじゃないかと思ったから。でもちゃんとオーブンを使うべきだったわ。」
混ぜ混ぜ捏ね捏ねは上手くできたと思った。
形を作って後は焼くだけだったのだけど、ふと魔力で焼くと一瞬で終わるのではないかと思ってしまったの。
温度設定って、難しいのね。
「ラヴェンナ様がいきなり焼くから驚いてしまったわ。日常生活で魔力を使う人ってほとんどいないわよね。」
ジュリエッタ様にそう笑って言われた。
今の時代、昔と違って実際に魔力を使う人はほとんどいない。
オーブンのように、魔力を流すだけで狙った火の温度が保てる道具ができたから。
それによって、繊細な魔力の使い方も学ばなくなっている。
丸焦げ、じゃなくて、炭?になったクッキーは一枚も口に入ることはなかった。
「また次回、期待しているよ。」
ラウルード様はそう言ってくれた。
今度は絶対にオーブンを使うわ。
ラヴェンナがラウルードを招いたことで、他の聖女候補の令嬢も何人か呼び始めた。
聖人は呼んでもいいと言っていたし、実際に会っていても咎められなかった。
それなのに、ラヴェンナはある令嬢から言いがかりをつけられることになる。
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