聖女になりたいのでしたら、どうぞどうぞ

しゃーりん

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十人揃ったことで、聖堂の管理者、聖人と呼ばれる方々が姿を見せた。 

 
「次期聖女候補の皆様、お集まりいただき感謝申し上げます。
これからひと月後、皆様の中からお一人が新たな『聖女』となられます。
選定期間中、ここにお泊まりいただいても、ご実家から通われても構いません。
但し、侍女はお連れできませんので聖人が対応致しますが、最低限のことになります。
午前中は祈りを捧げ、午後は奉仕活動など、各々のご意思で好きにお過ごしいただければと思います。」


一人の伯爵令嬢が口を挟んだ。


「明確な選定基準はございませんの?」

「はい。次期聖女を選ばれるのは聖女様です。
皆様がここで聖女様にお会いする機会もあるかと思いますが、お声をかけられるかどうかも皆様のご判断にお任せすることになります。ただ、急いでいる場合はお断りされるかもしれないということをご容赦ください。」

「聖女様に好意的に思われた方が有利になるということではないの?」

「いえ、決してそういうことはございません。
選ばれる基準は定かではございませんし、なぜ選ばれたのかという記録や伝聞もございません。全て、お選びになる聖女様の御心のうちに秘められております。」


聖女に媚びを売った方が有利とは言えない。
むしろ、その行為が聖女に相応しくないと判断されてしまう可能性もある。

どうすることが正解か、選ばれる基準がないため聖女候補各々の自らの意思で行動すればいいらしい。 


「皆様にはひと月間、一日のうちのおよそ五時間程度をここで過ごしていただくだけでございます。」 


簡単に言ってくれるけれども、通う往復の時間や昼食の時間などを含めると、拘束される時間はもっと長くなるため、結局は聖堂に通う以外はどこにも行けないひと月間になる。


「あぁ、婚約者がおられる方は、お招きして構わないことになっております。聖堂敷地内での逢瀬は少し味気ないかもしれませんが、清貧な心で向き合ってお話するのもいい機会なのではと思われます。ただし、節度ある態度での対応をお願いしますね。」


えっ?!ここでデートしていいの?

ラヴェンナは思わず緩んだ顔を慌てて引き締めた。

敷地内はデートには味気ないといっても、綺麗な花は植えられているし広い敷地のあちこちに東屋もある。
お茶やお菓子などを持ち込んで、ラウルード様と話をできるだけでラヴェンナは幸せになれる。 

ピクニック気分で昼食を一緒に食べるのもいいかも、なんてデートのことばかり考えていたので、引き締めた顔が再び緩んでいたことをジュリエッタ様から後で笑われた。




 
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