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しおりを挟む三年制学園の一年次の終業式を終えた日、聖女の代替わりがあることを知った。
ラヴェンナが次期聖女候補の一人に選ばれたという通知書が届いたからだった。
ラヴェンナはクレスト侯爵家の娘で16歳。
聖女は16歳~18歳の魔力の多い貴族令嬢から選ばれる。
ちょうど、学年が変わる前のひと月の休暇の間に聖堂に通い、候補者十人の中から一人だけ聖女になる。
聖女の代替わり時期は、年齢で決まっているとも言い難く、およそ35歳~50歳の間に役目を終えて次の聖女に託すと曖昧であるため、まさか、自分が候補に選ばれるとラヴェンナは思ってもいなかった。
もう一年早くか、もう三年遅ければ候補に選ばれなかったのに。
休暇の間の予定が全て取り止めになってしまうことをラヴェンナは悔しく思った。
婚約者である大好きなラウルード様とのデートはしばらくお預けとなってしまう。
友人たちとのお茶会の約束も。
つい、イラっとして、ラヴェンナに届けられた聖女候補の通知書を魔力で跡形もなく燃やしてしまった。
燃やしたところでなかったことにはならないのだけれど……
この国の聖女は、尊く憧れの存在として敬われている。
聖女は、国中の結界の修復と怪我人の治癒ができる唯一の存在。
聖女から次の聖女へ、聖力と呼ばれる魔力が渡されることにより、代替わりとなるのだ。
どうやって聖力が譲渡されているかは本人たち以外にはわからないとされている。
ひと月後には、新しい聖女が誕生することだけは確かである。
翌日、ラヴェンナは指定された時間に聖堂へと向かった。
「あら、ラヴェンナ様も?やっぱりね。」
そう言って声をかけてきたのは、一歳年上のジュリエッタ・ボッティ公爵令嬢。
彼女は第二王子殿下の婚約者である。
「ジュリエッタ様、ご一緒で嬉しいですわ。楽しく過ごしませんこと?」
「ええ。もちろんよ。」
ラヴェンナとジュリエッタは自分たちが同じ意思であることがわかっていた。
『聖女になる気はない』ということを。
その後も続々と聖女候補者が到着し、十人全員が揃った。
公爵令嬢一人、侯爵令嬢一人、辺境伯令嬢一人、伯爵令嬢五人、子爵令嬢二人。
16歳~18歳の中で魔力が多い令嬢十人。
学園に入学する際、魔力の多さを測っているのは聖女の代替わりに備えてのこと。
常にそうしていると、簡単に聖女候補十人が割り出せるから。
魔力が多いことなど、侯爵令嬢の身では特に役に立つことはないのに。
あぁ、なんて不運。
聖堂の中にいるのに、ラヴェンナは心の中で密かにそう嘆いていた。
自分以外の聖女候補をライバルだと見做しているような気合の入っている令嬢もいる。
『大丈夫ですよ。私は聖女になりたいとは思っていません。聖女になりたいのでしたら、どうぞどうぞ。』
ラヴェンナは心の中でそう呟いていた。
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