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しおりを挟むあと五日でひと月が経つという頃、現聖女様が聖女候補十人に会いたいとおっしゃったらしい。
聖堂でお見掛けしたことはあったけれど、常に微笑んで去って行かれるので聖女候補の誰もお話をする機会はなかったのではないかと思う。
そんな聖女様が私たちの何を見たいか、どこを見るのか、ラヴェンナは少し興味があった。
「ごめんなさいね、時間が取れなくて。あと少しで役目を終えることでしておかなければならないことがあったのよ。」
現聖女、クレシア様は確か42歳だったはず。
そして、未婚。
今後、どこでどう暮らしていくのかわからないけれど、役目を終えても大切にされなければならない存在であるはずだわ。
「何か私に聞きたいことはあるかしら?」
聖女様の問いに、真っ先に口を開いたのはやはりイボンヌ様だった。
「聖女様、私、イボンヌと申します。次の聖女は聖女様がお選びになると伺っておりますが、もうお決めになられておられるのでしょうか?」
「ふふ。まだよ。今回はどうやって選ぼうかしら、ね?」
聖女様が言った『今回は』という言葉を、ラヴェンナは正確に意味を理解した。
おそらくジュリエッタ様も。
他の聖女候補は別の意味に取っているはず。
『聖女様ご自身が選ばれた理由とは違う理由で選ぼうとなさっている』と。
「聖女様はどうやって前聖女様からご指名されたのでしょうか?」
「境遇に同情されて、かしら?」
祈りの時間とも奉仕活動とも全く関係のない理由での指名に聖女候補たちは驚きを隠せなかった。
「私は愛人の子だったの。父の正妻からの嫌がらせで35歳年上の男の妻になるはずだったわ。」
18歳で学園を卒業後してから、53歳の夫に嫁ぐはずだったらしい。
しかも相手は六度目の結婚と聞けば問題だらけの老人男のように思える。
「聖女の役目に感謝したわ。ふふ。願いも叶えてもらえたし。」
『願い』を叶えてもらった。
その言葉にラヴェンナはゾクッとした。
聖女、クレシア様が望んだ願いは何だったのかわからないけれど、何となく仄暗い願いだったのではないかと思ってしまった。
いけない。
ラヴェンナは慌てて思考を切り替えようとしたけれど、その前に聖女様と目が合ってしまった。
そして確かにラヴェンナに向けて口角を上げた。
ラヴェンナは、もう無になっていようと決めた。
それからも聖女候補が質問をし、聖女様がそれに答えるということが何度か繰り返されていたけれど、ラヴェンナはひとまずそれらの会話を全て耳から耳へと素通りさせていた。
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