聖女になりたいのでしたら、どうぞどうぞ

しゃーりん

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聖女様とお会いした後も、誰もそれまでの習慣を変えることはなかった。

ラヴェンナとジュリエッタ様は相変わらず祈りの時間は短く、お茶を楽しむ。
アメリ様もそこに時々加わる。

ラヴェンナは婚約者ラウルードとの時間も楽しみ、彼が来てくれた日は一緒の馬車に乗って帰る。 

イボンヌ様は誰よりも長く祈り、聖堂に泊まり、聖堂から出ることなく過ごしている。
アレクサンドル殿下が訪れると、彼がジュリエッタ様の元へ向かう前に話しかけ、ジュリエッタ様がどう過ごしているかを告げ口するため、ジュリエッタ様の元に来るアレクサンドル殿下はいつも機嫌が悪くなる。 

聖女様がおっしゃったことで、祈りの長さなど選定基準に関係ないとわかっているけれど、だから祈りの時間を短くしたのだと周りから思われたくないという心理的な問題で、みんな、変えられなかったのだと思う。


祈りを捧げる姿勢が、実は意外とキツイ。
膝をつくので床は冷たいし、膝から首までは一直線で頭は少し前に垂れる。 
組んだ両手は顔の真下に。

この姿勢で長時間過ごすのは、首と肩と腰と膝に負担がかかるから。


毎回、『聖女にはなりたくありません』と十回心の中で唱えて祈りを終えるラヴェンナは全く辛くないし、同じくジュリエッタ様もそう。

二時間も祈りを捧げているイボンヌ様と、彼女に付き合っている二人の令嬢(ちなみにどちらも子爵令嬢)は今更止めたくても止めるわけにもいかないと思っているようで、続けて頑張っている。

無駄な努力とは言わない。
自主的にやっているのだから。

彼女たちが聖女になりたいと思う気持ちは、聖女様にも届いていると思うから。


 


そしてついに、新たな聖女が選ばれる日になった。

この場にいるのは、聖女様と聖人たち、そして十人の聖女候補だけ。

アレクサンドル殿下は、自分にも誰が選ばれるかを見届けさせてほしいとしつこく頼んでいたらしいけど、聖女の選定には王族が関わってはいけないことになっているそうで、アレクサンドル殿下が口を挟まないと言っても受け入れられることはなかったらしい。

特に今回は、アレクサンドル殿下の婚約者であるジュリエッタ様が候補の中にいるため、聖女の選定に疑わしく思われる行動は慎むべきであるから。

いよいよその時がやってきた。


「次の聖女には、一番意欲を見せたイボンヌになってもらうことにしたわ。」


聖女様がそう告げると、イボンヌ様は驚きと喜びの余り立ち上がり、聖女様の足下に膝をついて感謝の言葉を繰り返していた。

ラヴェンナは、選ばれなくてホッとしていた。

 


 
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