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しおりを挟む現在61歳になったセレンティナ。
65歳を過ぎれば長生きだと言われるが、その65歳の前に壁が立ちはだかるかのように60歳から65歳の間に亡くなる者が非常に多い。
セレンティナも死期を悟っていた。
治癒をしようと思えば少し寿命は延びるだろう。
しかし、そうするつもりはなかった。
「セレンティナ、逝ってしまうのか?」
「ええ。あなたより先でごめんね。幸せだったわ。」
「本当に?君には他にも愛した人がいたんだろう?」
セレンティナがリリスティーナであることを知っているクローヴィスは、今まで何も聞いてきたことはなかったが、リリスティーナが誰か想う男がいると気づいていたらしい。
「あの人はね、10歳くらい年上でリリスティーナの護衛だったの。そして最初の聖女の護衛でもあった。
想いを告げたことはないし、彼の気持ちも知らない。でも忘れられない初恋のようなものかしら?」
「初恋か。なら仕方ないか。」
「ふふ。あなたのこともこの先絶対に忘れないわ。初めて結婚した相手で、初めて愛した人よ。」
「……この先、どんな出会いがあっても私以上の男はいないだろう。」
「そうね。本当にそう思うわ。夫としても父親としても最高過ぎたもの。」
「冗談で言ったつもりだったんだけど、嬉しいよ。」
偽りなく、事実だわ。
「お願いがあるの。私が死んで落ち着いたら、テレサを『リリスティーナ聖堂』に連れて来て。』
テレサとは、次男エストルの末っ子で9歳の女の子である。
「テレサを?……まさかっ!」
「テレサを乗っ取るわ。」
セレンティナの言葉に、クローヴィスは驚いていた。
テレサは孫13人の中で聖力が一番強い子だった。
二年前、7歳の時に連れ去られそうになり、教わった結界を咄嗟に張ることができなかった。
抱えられて馬車に乗せられてから自分に結界を必要以上に強く張ったため、抱きかかえた男も御者の男も馬車も、みんな吹っ飛んだのだ。
そしてその衝撃の怖さのあまり、結界を解除することもできなくなってしまった。
結界で攻撃してしまうとは思いもしなかったから。
興奮状態にあるテレサをセレンティナがなんとか眠らせて、結界を解除した。
それからずっと、テレサは部屋に引きこもっている。
聖力が多いため、リリスティーナの精神干渉も跳ねのけてしまい、心を治癒してあげることができない。
「テレサとして生きるのか?」
「それはまだわからないわ。でも、あの子の中に入れば少しは癒してあげられると思うの。」
早く癒してあげた方がいい。そして、あの子が自分で生きる意志を持てればと願っている。
「エストルには言わないでね?」
娘の中に母が入ったなどと言われたら、複雑で仕方ないだろうから。
数日後の早朝、クローヴィスに看取られてセレンティナは61歳の生涯を終えた。
リリスティーナは44年近く、セレンティナとして生きた。
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