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しおりを挟むセレンティナが埋葬され、その足でクローヴィスはテレサを連れて『リリスティーナ聖堂』の中で待っていた。
……まさか、こんなに早く来るとはね。
祖父クローヴィスと二人で並んで座っているテレサに覇気はない。
祖母セレンティナの葬儀ということで部屋から出てきたが、なぜ帰らずにここにいるのかと思っているようだった。
『外は怖いから帰りたい。でもお祖母様がいなくなったお祖父様が可哀想だし一緒にいた方がいい?』
そんな声が伝わってくる。
テレサはとても優しい子なのだ。
もう、誰も傷つけたくないから部屋から出たくなくなった。
問題なのはクローヴィスである。
リリスティーナの次の乗っ取り先がテレサということを聞き、彼は内心喜んでいる。
クローヴィスにとって、セレンティナだろうがリリスティーナだろうが同じなのだ。
セレンティナの体は死んでも、精神は生きていると知っているから。
自分が死ぬ前に、リリスティーナが新たな相手と結婚する状況になるかもしれないと考えていたらしい。
だが、テレサの中に入るのであれば、自分が死ぬまで側にいてほしい。
クローヴィスがそんな風に考えているのが伝わってくる。
夫は思った以上に愛してくれていたらしい。
テレサを乗っ取ることを言わない方がよかったかと後悔したが、クローヴィスの望み通り、看取ってあげてもいい気がしてきた。
まぁ、テレサ次第だけれども。
そんなことを思いながら、リリスティーナはテレサに触れた。
(テレサ。)
(え、だあれ?)
(お祖母様よ。)
(セレンティナお祖母様?幽霊?)
(幽霊っていうか、精神体なの。まだちょっとテレサには意味がわからないかもしれないわね。)
体が死んでしまっても精神が生きている。
そう言われても、子供だからか、テレサはそういうものなのかと受け入れてくれた。
(ねぇ、テレサ。しばらくテレサの体を借りてもいいかしら?あなたに聖力が怖いものではないということをちゃんと教えてあげたいの。)
(でも……人を怪我させちゃった。)
(テレサは自分の身を守っただけよ。それに犯人たちが気絶してくれていたから捕まえることもできたし。他に攫われていた子供も助けることができたわ。あなたはいいことをしたのよ?)
(いいこと……)
(あの犯人たちの傷を治癒してあげることもできたけれど、誰もしなかったわ。あなたの伯父様伯母様、従兄弟たちみんな。私もね。テレサに怖い思いをさせたのだもの。それに、今はもっと厳しい場所で労働刑になっていて傷も絶えないでしょうね。悪いことをした罰よ。)
(悪いことをした罰……)
よそ見していた護衛たちは下っ端からやり直しだ。
たとえ周りで何が起ころうと、護衛たちが守らなければならないのはテレサだった。
犯人たちの仲間の陽動に護衛たちが気を取られて、テレサが攫われる目に合ってしまったのだ。
護衛がついているのは、貴族か裕福な家の子供である証拠で、狙われたのだ。
心の中でテレサと話をしていると、いつの間にかクローヴィスがテレサをジッと見つめていた。
「セレン?」
テレサの中に入っていると気づいたらしい。
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