愛しい番に愛されたいオメガなボクの奮闘記

天田れおぽん

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第6話 楽しいお昼ご飯

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 新しく芽吹いた緑は若々しくて柔らかそう。
 春の庭は色とりどりの花が咲いていて賑やかだ。

 ガゼボに集ったボクたちは、美味しいご飯を囲んでワキャワキャと話しながら食事をしていた。
 昼食だからサンドイッチがメインだ。
 サラダやサーモンマリネなどもあるけど、昼食は気取って食べるよりも、腹持ちのいいものを早くお腹に入れることのほうが正義だと、ボクは思う。

「アイリス。落ち着いて食べないとダメだよ。食べ物が喉に詰まってしまう」
「大げさだなぁ、お父さまは。ボクだって、そこまでマヌケじゃないですぅ~」
 
 お父さまに窘められて、ボクは口を尖らせて反論する。
 
「王立学園は貴族のいく学園だぞ? そんな風にガツガツ食べていたら、友達に軽蔑されちゃうからな」
「わかってますよ、お兄さま。学園では猫をかぶりますから大丈夫です」

 お兄さまにも窘められてしまった。
 確かに学園は貴族ばっかりだから上品に食事しないと引かれちゃうね。
 ボクは学園では絶対に猫をかぶろうと心に決めた。

「まぁまぁ、そうアイリスに厳しく言わないで。俺は平民出身だから、マナーのことを言われてると俺にも刺さる」
「あっ、ミッチは別だよ? 君の食べ方は豪快だけど不快感を与えるものじゃない」
「そうだよ、お母さまは別だよ。立派なお仕事もされているし」
「ふふ。ありがとう。ドレイク。ブレイズも」

 お母さまは楽しそうにウフフと笑った。
 動き回っていないときのお母さまは、整った顔立ちが際立つ。
 
 ボクはお母さまに聞いた。

「お母さまのお土産は、どれ?」
「今でてるのは、このフルーツとナッツだね」

 真っ赤な小さな実と、大振りの黄色の実を指さして、お母さまが説明する。
 ナッツは大小さまざまなものがあって、乾燥していて茶色だ。

「そのままコレを食べてもいいし、料理に使ってもらっても美味しいよ。このフルーツとナッツを使ったお菓子も買ってきたから、食後のデザートに食べようね」
「はーい。ボク、その赤い実を食べてみようかな」

 ボクはテーブルに載っていたフルーツをメイドにお願いして小皿へ取り分けてもらった。
 小さいけれどボクの親指くらいあって、細長くてゴロンとした実だ。
 持った感じはパンとしているけど、中は熟していそうでちょっと柔らかい。
 
「手で食べていい?」
「いいよ。中に種が入っているから、食べちゃわないようにね。種はペッとしちゃって」
「うん」

 ボクは赤い実を口元に運んだ。
 カプッとかぶりつく。

 あ、汁がちょっと飛んじゃった。
 お父さまとお兄さまが凄い顔してこっちを見ている。

「んっ、甘いけどすっごい酸っぱい! でも美味しいよ」
「それはよかった。でも口の周りが真っ赤だね」

 ただただ引いているお父さまとお兄さまとは違って、お母さまは笑いながらボクの口の周りを拭ってくれた。

 だからお母さまのこと、大好きなんだ。

 お父さまとお兄さまはねぇ……なんか微妙。

 ボクは楽しく食事を続けた。
 服も口の周りも汚れるけど、食事が終わった後、メイドに浄化魔法かけてもらえば大丈夫。
 魔法が使えるようになったら、自分で浄化魔法も使うんだ。

 我が家では魔法頼りにならないように、自分のことが自分で出来るようになるまでは魔法使ったらダメってことになっている。
 でも貴族服なんて複雑なもの、一生自分で着られるようになるとは思えないけどね!

 食事が終わってデザートと紅茶が出てきた。
 お母さまのお土産のフルーツケーキ、美味しいなぁ。
 さっき食べた赤い実が入っている。
 ナッツも入っていて、口の中が楽しい。

「にゃ~」

 そりゃ鳴き声も出ようというものだ。
 甘くてとっても美味しい。
 ……ん? にゃ~?

「あれ、この子はどこから入ってきたのかな?」

 お母さまが戸惑った表情で庭の一角を見ている。
 そこには真っ白な子猫のような生き物がいた。
 こちらを見ながら「みゃ~ん」と甘えるように鳴いていて、とても可愛い。

「ミッチが砂漠地帯から連れてきたわけではないのか?」

 お父さまが指さして聞いた。
 お母さまは顔を左右に振った。

「違うよ、ドレイク。生き物は扱わないって知ってるだろ? あぁ、迷い込んで荷馬車に乗ってきちゃったのかな?」
「どうするのだ? まだ子どもみたいだけど」
「弱ったなぁ、どうしよう?」

 お母さまは秀麗だが太いを情けなくさげて困ったように言った。
 小さな生き物は、ボクのところへ向かってトコトコと歩いてきた。
 
 可愛い。撫でたい。触りたい。

 ボクはワクワクしながら小さな生き物が近づいてくるのを待った。

「スナネコかなぁ?」

 お父さまが首を傾げている。

「猫かなぁ? フェネックキツネっぽくもある」

 お母さまも首をひねっている。
 小さな生き物はボクの足元まできた。

 ボクを見上げて「みゃ~」と鳴く、小さな毛玉を撫でたいな。

 ボクは許可を得ようとお母さまのほうを見た。

 お母さまとお父さまは、まだ小さな生き物の正体について悩んでいるようだ。

「ねぇ、お母さま。撫でていい?」
「ん、大丈夫みたいだね。いいよ」

 お母さまは『鑑定』ができる。

「動物の種類を鑑定するのは無理だけど、病気を持ってるかどうかは分かるからね。その子は病気とかないから、撫でても安全だよ」
「やったー」

 ボクは小さな体を抱き上げて膝に乗せると、白い毛皮を撫でた。
 ふわふわで、やわやわで、温かくて、控えめに言ってサイコー。

 自然と頬が緩んで笑顔になっちゃうね。

 ボクはニコニコと笑顔になりながら、小さな毛玉を撫でまわした。

「ねぇ、お母さま。この子、飼っていい?」
「飼うというか……保護だな?」

 お母さまは首を傾げながらも、飼うことを許してくれた。
 お父さまとお兄さまは睨んでいるけど、この子は今日からうちの子だ!

「ふふ。今日から一緒に暮らそう。名前つけなきゃね。んー……白い毛だから、シロでいい?」
「にゃぁ~ん」
「ふふ。いいの? じゃ、今日から君はシロだ」

 シロはちっちゃなピンク色の舌でボクの手を舐めた。
 くすぐったい。
 けど、思ったよりも舌がザラザラしている。
 やっぱり猫なんじゃないかなー?
 猫でも、フェネックキツネでも、なんでもいいや。

 今日からよろしくね、シロ。
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