断罪するのは天才悪女である私です〜継母に全てを奪われたので、二度目の人生は悪逆令嬢として自由に生きます

紅城えりす☆VTuber

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援軍

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 むせ返るような熱気と罵倒に包まれた城壁に囲まれた町、王都では火の手が上がっていた。

「予言通りの光景だな……」

 暴動を鎮圧するため現場で指揮をとっていたフィンは、鼻で笑いながら王都の様子を眺めていた。

「皇太子殿下、西門が破壊されました。東の兵力も二割ほど……」

 一人の兵士が近寄り、跪く。

「できるだけ武力行使は必要最低限に収めたかったのだが、仕方あるまい。魔道石を使うしか……」

 フィンが奥歯を噛み締めながら空を眺めていると――スパッと空を鉄の塊が薙るおとが響く。
 音の正体は、兵士に支給された鉄剣であった。もちろん、振ったのは報告に来た剣士。
 フィンは即座に後方へ攻撃を回避。そのまま、剣を鞘から抜き鎧で覆われていない兵士の足を狙って一振り。

「神の冒涜者めぇ!」

 兵士はかなり深い傷を負ったにも関わらず、一直線にフィンへ剣先を向けた。

「まだ動けるかっ……!」

 フィンは再び攻撃を避け、今度は剣士の首筋を殴って義絶させた。

「こういった荒事はウィリアムの方が得意なのだが……いや、あいつに殺さぬよう手加減させるのは無理か」

 血を流しながら倒れる兵士を止血して道脇で寝かせるようフィンが部下に指示をする。
 再び戦場に向き合った時であった。

「声が聞こえる……」

 フィンを含めた全ての皇軍に女性の歌声が響く。優しく慈愛に溢れた。そんな声が。
 兵士だけではない一般市民まで全員の耳に歌声は響いていた。

 空を見上げたフィンは絶句した。

 空――だけではない。屋根や見張り塔、風車の上にまで、数え切れぬほどの妖精が立っていたのだ。

 男、女、虫の羽を生やした者から、蝶の羽を生やす者。頭には花飾りが乗っていたり、中には鹿の角が生えた者もいる。着ている衣装も花弁で作ったドレスや、人間の使っているものに近しい衣装まで様々である。

 かつてトリスメギストスが夜の女王に勝利してから、妖精は人間の前に姿を表すことはなくなった。
 初めて妖精の姿を見た民衆は息を飲み、言葉を失った。


『人間の皆様、ごきげんよう。どうか怖がらないでね、貴方たちを傷つけるつもりはないから。私たちは、ただを伝えるために集まったのです』


 突如脳内に響き始めた声に、困惑が隠せない民衆はざわめき始める。

「……真実?」

「妖精が俺たちになにを教えるって言うんだ!」

「というか、この頭に直接声が響くような感覚……神託のときと同じよね?」


『単刀直入に言いましょう。先ほど貴方たちに神託を授けたのはムリアという妖精です。女神の名を騙り貴方たちを利用しようとしたのです。今から、ムリアの真実についてお話します。どうか、耳を傾けて……』


 突如、謎の声から告られた真実に人々は錯乱し、悲鳴を上げ、落胆した。中には声に耳を傾けるなと言う者も居たが、声がムリアの過去を明かすに連れて段々と声は静まっていった。

 ムリアが偽装と洗脳を得意とする妖精であること。

 計画性のない快楽主義者で、基本的に承認欲求が満たされればどのような残虐な行為にも及ぶこと。

 今まで皇族、吟遊詩人、ダンサーまで数々の人間に成りすまし、その度に大きな被害をもたらしてきたこと。

「信じ難い話だけど、たしかにムリアが成りすましてきた人間の周りでは不審死が相次いでいる」

「……嘘だ。俺たちはこんな卑劣な妖精に騙されていたのか!」

「そのムリアとやらをさっさと捕まえちゃいましょうよ!」

 下ろしていた武器を取り、雄叫びを上げ始める民衆。


『待ちなさい、ムリアは人に成りすますことが得意な妖精です。このままでは、貴方たちはムリアと間違えて大切な人たちを傷つけてしまいます』


 謎の声により大きく状況が変わったことに、戸惑うフィン。

「……助かったのか?」

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