10年もあなたに尽くしたのに婚約破棄ですか?

水空 葵

文字の大きさ
24 / 39
本編

24. 失敗続き ※セレスティアside

しおりを挟む
 2度目の計画実行は成功した。

 ケヴィンは簡単に魔法にかかり、ソフィアとの婚約を破棄した。
 ソフィアに浮気しているように見せることも成功した。

 この時点ではトラウマを植え付ける魔法は習得出来ていなかったため、幻覚を見せて「逆らえば心臓を止める」と脅しただけである。

 たったそれだけだが、婚約破棄させることには成功した。
 けれども、計画はまた失敗に終わった。

 ショックを受けて学院に来なくなるはずのソフィアが何食わぬ顔で毎日学院に来続けていたから。
 だから取り巻きとともに嫌がらせを始めた。

 冤罪を着せて、学院の居場所を無くそうともした。

 しかしそれさえも上手くいかず、セレスティアは歯がゆさを感じていた。
 魔法が効かないソフィアがレオンの近くに居れば、計画を邪魔されてしまう。

「レオン様の婚約者になるためには、ソフィアを排除するしかなさそうですわね……」

 独り言ちる彼女の声を聞いた者はいなかった。



 その日から、セレスティアは膨大な数の資料がある公爵家の書庫に籠った。
 ソフィアにどうにかして幻覚を見せるために。

 そして、2日かけてやっと、対策を見つけた。
 
 その方法は、強い恐怖心になる刺激を与え、同時にトラウマを植え付けるという方法だった。
 難易度は高かったが、公爵令嬢として闇属性に限って魔法の素質があったため、侍女に対して容易に使うことができた。

 けれど、自らソフィアに危害を加えるわけにはいかないと考えたセレスティアは身代わりを用意することにした。
 トラウマを植え付けるために邪魔になりそうなアリスにソフィア拒絶させることも思いついた。

 そして、思わぬ副産物……洗脳魔法に操作魔法、どれも禁書に記述されていたものも習得した。
 もう誰が相手でも成功する自信しかなかった。

「これなら、上手くいきますわね」
「お嬢様なら出来ます!」

 こうして、洗脳によって味方になった侍女の賛同を得たセレスティアは浮いた気分で計画を実行することになる。

 しかし、現実は甘くなかった。
 アリスにソフィアを拒絶させることに成功したものの、翌日にはどういうわけかアルトがソフィアに寄り添っていたからだ。

 だから醜聞を流した。

 けれども、それすら通用しなかった。
 そこで、今度はソフィアにアルトを拒絶させようとした。

「アルト様に暴力を振るってくれたら、さすがに修道院行きですわよね」

 手始めに、洗脳魔法でイレーネにソフィアを攻撃させた。
 当然といえば当然ではあったが、イレーネの攻撃は容易く防がれていた。

(ここまでは想定内。あとはイレーネが謝れば成功に近づきますわ)

 そして、セレスティアの思惑通り、イレーネはソフィアに謝罪していた。同時にソフィアは油断している素振りを見せていた。

「闇の聖霊よ……」

 陰から様子を見ていたセレスティアはこの機を逃すまいと小声で詠唱し、イレーネを自由に操れる状態に置いた。
 そして、上手くソフィアにトラウマを植え付けることも出来た。

(手ごたえはありましたわ。でも、まだ足りません……)

 トラウマを強いものにするため、さらに魔法を使うセレスティア。
 しかし、突然記憶を流す感覚が途絶えてしまった。

(防がれたましたわ……。まさか、防御魔法で対策されるだなんて。
 でも、アルトを拒絶してますわね)

 ソフィアがアルトを避けようとする様子に満足したセレスティアは、気配を殺してこの場を離れていった。
 イレーネにかけられた操作魔法をそのままに。


 操作魔法をかけられた状態で放置されると、自身の意思で行動しなくなるけれど……それはまた別のお話。
しおりを挟む
感想 25

あなたにおすすめの小説

婚約破棄された令嬢のささやかな幸福

香木陽灯
恋愛
 田舎の伯爵令嬢アリシア・ローデンには婚約者がいた。  しかし婚約者とアリシアの妹が不貞を働き、子を身ごもったのだという。 「結婚は家同士の繋がり。二人が結ばれるなら私は身を引きましょう。どうぞお幸せに」  婚約破棄されたアリシアは潔く身を引くことにした。  婚約破棄という烙印が押された以上、もう結婚は出来ない。  ならば一人で生きていくだけ。  アリシアは王都の外れにある小さな家を買い、そこで暮らし始める。 「あぁ、最高……ここなら一人で自由に暮らせるわ!」  初めての一人暮らしを満喫するアリシア。  趣味だった刺繍で生計が立てられるようになった頃……。 「アリシア、頼むから戻って来てくれ! 俺と結婚してくれ……!」  何故か元婚約者がやってきて頭を下げたのだ。  しかし丁重にお断りした翌日、 「お姉様、お願いだから戻ってきてください! あいつの相手はお姉様じゃなきゃ無理です……!」  妹までもがやってくる始末。  しかしアリシアは微笑んで首を横に振るばかり。 「私はもう結婚する気も家に戻る気もありませんの。どうぞお幸せに」  家族や婚約者は知らないことだったが、実はアリシアは幸せな生活を送っていたのだった。

元婚約者様へ――あなたは泣き叫んでいるようですが、私はとても幸せです。

有賀冬馬
恋愛
侯爵令嬢の私は、婚約者である騎士アラン様との結婚を夢見ていた。 けれど彼は、「平凡な令嬢は団長の妻にふさわしくない」と、私を捨ててより高位の令嬢を選ぶ。 ​絶望に暮れた私が、旅の道中で出会ったのは、国中から恐れられる魔導王様だった。 「君は決して平凡なんかじゃない」 誰も知らない優しい笑顔で、私を大切に扱ってくれる彼。やがて私たちは夫婦になり、数年後。 ​政争で窮地に陥ったアラン様が、助けを求めて城にやってくる。 玉座の横で微笑む私を見て愕然とする彼に、魔導王様は冷たく一言。 「我が妃を泣かせた罪、覚悟はあるな」 ――ああ、アラン様。あなたに捨てられたおかげで、私はこんなに幸せになりました。心から、どうぞお幸せに。

最愛の人に裏切られ死んだ私ですが、人生をやり直します〜今度は【真実の愛】を探し、元婚約者の後悔を笑って見届ける〜

腐ったバナナ
恋愛
愛する婚約者アラン王子に裏切られ、非業の死を遂げた公爵令嬢エステル。 「二度と誰も愛さない」と誓った瞬間、【死に戻り】を果たし、愛の感情を失った冷徹な復讐者として覚醒する。 エステルの標的は、自分を裏切った元婚約者と仲間たち。彼女は未来の知識を武器に、王国の影の支配者ノア宰相と接触。「私の知性を利用し、絶対的な庇護を」と、大胆な契約結婚を持ちかける。

聖女に負けた侯爵令嬢 (よくある婚約解消もののおはなし)

蒼あかり
恋愛
ティアナは女王主催の茶会で、婚約者である王子クリストファーから婚約解消を告げられる。そして、彼の隣には聖女であるローズの姿が。 聖女として国民に、そしてクリストファーから愛されるローズ。クリストファーとともに並ぶ聖女ローズは美しく眩しいほどだ。そんな二人を見せつけられ、いつしかティアナの中に諦めにも似た思いが込み上げる。 愛する人のために王子妃として支える覚悟を持ってきたのに、それが叶わぬのならその立場を辞したいと願うのに、それが叶う事はない。 いつしか公爵家のアシュトンをも巻き込み、泥沼の様相に……。 ラストは賛否両論あると思います。納得できない方もいらっしゃると思います。 それでも最後まで読んでいただけるとありがたいです。 心より感謝いたします。愛を込めて、ありがとうございました。

【完結】傲慢にも程がある~淑女は愛と誇りを賭けて勘違い夫に復讐する~

Ao
恋愛
由緒ある伯爵家の令嬢エレノアは、愛する夫アルベールと結婚して三年。幸せな日々を送る彼女だったが、ある日、夫に長年の愛人セシルがいることを知ってしまう。 さらに、アルベールは自身が伯爵位を継いだことで傲慢になり、愛人を邸宅に迎え入れ、エレノアの部屋を与える暴挙に出る。 挙句の果てに、エレノアには「お飾り」として伯爵家の実務をこなさせ、愛人のセシルを実質の伯爵夫人として扱おうとする始末。 深い悲しみと激しい屈辱に震えるエレノアだが、淑女としての誇りが彼女を立ち上がらせる。 彼女は社交界での人脈と、持ち前の知略を駆使し、アルベールとセシルを追い詰める貴族らしい復讐を誓うのであった。

私は王子の婚約者にはなりたくありません。

黒蜜きな粉
恋愛
公爵令嬢との婚約を破棄し、異世界からやってきた聖女と結ばれた王子。 愛を誓い合い仲睦まじく過ごす二人。しかし、そのままハッピーエンドとはならなかった。 いつからか二人はすれ違い、愛はすっかり冷めてしまった。 そんな中、主人公のメリッサは留学先の学校の長期休暇で帰国。 父と共に招かれた夜会に顔を出すと、そこでなぜか王子に見染められてしまった。 しかも、公衆の面前で王子にキスをされ逃げられない状況になってしまう。 なんとしてもメリッサを新たな婚約者にしたい王子。 さっさと留学先に戻りたいメリッサ。 そこへ聖女があらわれて――   婚約破棄のその後に起きる物語

幸運を織る令嬢は、もうあなたを愛さない

法華
恋愛
 婚約者の侯爵子息に「灰色の人形」と蔑まれ、趣味の刺繍まで笑いものにされる伯爵令嬢エリアーナ。しかし、彼女が織りなす古代の紋様には、やがて社交界、ひいては王家さえも魅了するほどの価値が秘められていた。  ある日、自らの才能を見出してくれた支援者たちと共に、エリアーナは虐げられた過去に決別を告げる。 これは、一人の気弱な令嬢が自らの手で運命を切り開き、真実の愛と幸せを掴むまでの逆転の物語。彼女が「幸運を織る令嬢」として輝く時、彼女を見下した者たちは、自らの愚かさに打ちひしがれることになる。

《本編完結》あの人を綺麗さっぱり忘れる方法

本見りん
恋愛
メラニー アイスナー子爵令嬢はある日婚約者ディートマーから『婚約破棄』を言い渡される。  ショックで落ち込み、彼と婚約者として過ごした日々を思い出して涙していた───が。  ……あれ? 私ってずっと虐げられてない? 彼からはずっと嫌な目にあった思い出しかないんだけど!?  やっと自分が虐げられていたと気付き目が覚めたメラニー。  しかも両親も昔からディートマーに騙されている為、両親の説得から始めなければならない。  そしてこの王国ではかつて王子がやらかした『婚約破棄騒動』の為に、世間では『婚約破棄、ダメ、絶対』な風潮がある。    自分の思うようにする為に手段を選ばないだろう元婚約者ディートマーから、メラニーは無事自由を勝ち取る事が出来るのだろうか……。

処理中です...